420 / 476
第410話:救国の副産物。
しおりを挟むラムは魔物と化した人間を魔力の鎖で縛り付けながら体内に渦巻く魔力と逆の波数を流し込むというとても器用な事をしている。
とてもじゃないが真似できる気がしない。
ネコもネコで、アルマとの同調率が以前より格段に上がっているようで、狂った状態の人体を元の正常な状態まで戻していく。
勿論これは二人の力が合わさった事で初めて実現可能な荒業だが、俺は奇跡を見ているような気分だった。
みるみるうちに魔物は一人の男の姿に変わる。
どこかで見覚えがあると思ったら、どうやら兵士の一人だったらしい。
「二人とも、成功だ!」
「えへへ~私頑張りましたよぅ♪」
「じゃがこれを一人ずつという訳にもいかんじゃろ?」
ネコとラムは真逆の表情でこらを見る。
「それは……リリィ、お前の出番だ」
「へっ? わらわに何させようって言うんですーっ?」
「お前の力で新しい魔法を作ってほしい。この二人の力を世界中に拡散させる魔法だ」
ネコは首を傾げ頭にはてなマークを浮かべている。よく分かっていないらしい。
それとは違いラムは失笑。
「何を馬鹿な事を言っとるんじゃ。儂とユイシスの力を世界に拡散させる魔法を作るじゃと……? さすがにそんな荒唐無稽な……」
「ムカーッ!! やってやりますよー! このお子様はわらわの事を侮ってるって思い知らせてやりますーっ!」
ラムの否定的な意見を聞いて勝手にヒートアップしてくれた。
こいつがムキになる時は大抵しっかり結果を出してくれる。
「ラムちゃん、その荒唐無稽ってやつがリリィに出来るのかどうか見てやろうぜ。さすがに厳しいとは思うけどな」
わざと挑発的な言葉を投げかけ、鼻で笑う。
「ムッキーッ! ミナトまでそんな事いうんですか!? いいですよやりますよやってやりますよわらわの活躍見て七転八倒転げまわるといいですーっ!」
その言葉それで使い方あってるのか?
「リクマハリクマハジャンバラヤンヤンテクテクテクテクマヤコンコーン!」
「じゃんばら……やんやん?」
「なんじゃぁ……? まやこんこん?」
二人はリリィの謎詠唱に目を丸くしている。
それもそうだろう。俺だってこれについては理解出来ん。
多分リリィ的にそれっぽい言葉を発しないと気分が乗らないとかそういう下らない理由に違いない。
とにかく、詠唱を終えたリリィが両手で何か大きな球体を持つような仕草をして、俺に何か視線で訴えてきた。
「あー、ラムちゃん、ネコ、さっきと同じやつをこいつにかけてやってくれ」
「リリィちゃんを治すんです?」
「さっきと同じ波数の魔力でいいんじゃな?」
訝しみながらも二人はリリィが広げた手の中へと力を注ぎ込む。
「いっきまっすよーっ!? そーれジャランラーッ!」
その場でリリィが二人の力をなんだかぐにぐにとこねだし、一気に空へと放った。
「はじけろーっ!」
もうそこから先は完全に理解の範疇を越えていた。
俺もネコもラムも、何が起きたのかさっぱり分からない。
ただ空が真っ白に輝き、それがどんどん広がっていったかと思うとまるでオーロラのようにいろいろな色に輝きながらパラパラと光の粒子が世界に降り注ぐ。
「すっごいですぅ♪ 綺麗ですねぇ」
「な、な、なんじゃぁ!?」
「ふっふーん! わらわの計算が正しければこれで世界中の人々が元通りになってるはずですよーっ! ぐはははーっ! ひれ伏せひれ伏せこうべを垂れて這いつくばるですーっ!」
「こやつ……」
「待てラムちゃん、気持ちは分るが落ち着け。こいつを殴るのはとりあえず各地の様子を確認してからにしよう」
ラムは悔しそうにへの字口で「ぐぬぬ……」などと呻いていたが、リリィはそんなラムを煽りに煽った。
「どーしたんですかねーこのお子様はーっ! わらわの高貴過ぎる才能に嫉妬してるんですかーっ!?」
「なんじゃとこのたわけーっ! ……へっ?」
わなわなと怒りに震えたラムが我慢できずにリリィに掴みかかろうと立ち上がった。
【立ち上がった】
「ら、ラムちゃん……」
「う、うそじゃろ……?」
ラムはその場で自分の足を不思議そうに眺めながらうろうろと歩き、ぴょんぴょん飛び跳ねたりしたあと蹲ってしまった。
「ちょ、ちょっと泣く事ないじゃないですかーっ! わらわそんないじわるするつもりはなかったんですーっ!」
リリィが慌てふためいて蹲ったラムを必死に慰めようとするが、違う。そうじゃない。
「あ、ありがとうなのじゃ……」
「へっ?」
「儂、足が……足が治ったのじゃ」
「へ、へー? よかった……です?」
リリィは困惑したままだが、ラムはこれでもう車椅子の必要無い身体に戻る事が出来た。
しかし何故だ?
ラムとネコは魔物化した人間を元に戻す力を使ったはずだ。
これが偶然にせよ必然にせよ理屈が分からない。
そもそもだ、ネコが治らないと言ったのだからそうなのだろうと思い込んでいたけれど……いったいどうしてラムの足を治す事が出来なかったんだ?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた
季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】
気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。
手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!?
傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。
罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚!
人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!
たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。
新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。
※※※※※
1億年の試練。
そして、神をもしのぐ力。
それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。
すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。
だが、もはや生きることに飽きていた。
『違う選択肢もあるぞ?』
創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、
その“策略”にまんまと引っかかる。
――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。
確かに神は嘘をついていない。
けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!!
そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、
神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。
記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。
それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。
だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。
くどいようだが、俺の望みはスローライフ。
……のはずだったのに。
呪いのような“女難の相”が炸裂し、
気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。
どうしてこうなった!?
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中
あ、まん。
ファンタジー
仕事一筋40年。
結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。
定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。
だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。
唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。
化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。
彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。
現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。
これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる