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第352話:六竜にも理解しがたい事はある。
しおりを挟む結果的に、俺……というかイルヴァリース、アルマ、シヴァルドという六竜三人の魔力をラムに委譲し、限界まで強化された転移魔法を用いて俺達は全員リリアの拠点まで戻ってきた。
「うげぇ……さすがに魔力酔いを起こしたのじゃ……儂は少し休む」
到着するなりラムはヘロヘロになって自室へと帰っていった。
車椅子を浮かせる余力すらなかったようで、ネコが車椅子を押していった。
ネコも俺にいろいろ言いたい事があったのか少し名残惜しそうにこちらを見つめつつ、自分のやるべき事を優先したようだ。
俺も今回の件でネコには負担をかけてしまったので後でいろいろと二人で話したい事もある。
だが、今は別の事を優先しなければならない。
「シルヴァ、話がある」
「無論だ。こちらとしてもラヴィアンで起きた事を聞いておかねばならんからな」
「お帰り!」と、わらわらと集まって来た拠点の皆に詫びを入れ、シルヴァを連れて俺の自室へ向かう……が、その前に。
「マァナとティア……あとイリスも一緒に来てくれ」
本当ならラムにも同席してほしかったが今は無理を言えないだろう。ダンゲルの話もしなきゃならないので、今の状態で更に辛い思いはさせたくない。
「えっ、えっ、わらわはー!?」
「リリィ様、自分がのけ者にされた理由をよく考えた方がよろしいかと」
騒ぎだしたリリィをジーナが羽交い絞めにして食い止める。グッジョブ。
「ポコナ、それにレナ」
「な、なんですの?」
「なぁにミナト♪」
「とりあえず俺は大事な話があるから離れてくれるか?」
俺の両脇を二人ががっちりと掴んでいた。
二人はむくれながらも、いう通りに手を離し一歩下がる。
「そこのリリィってのはラヴィアン王国の姫様のダメな方だからとりあえず適当にお茶でも出してやってくれると助かる。話が済むまでアホの相手をしてやってくれ」
「ダメな方ってなんですかーっ!? わらわこれでもちゃんと姫ですよー!? 不敬です不敬です死刑ですーっ!」
「ちなみに私もリリア帝国の姫ですわよ? ここはリリアの地、そしてミナトはリリア帝国でも重要な人物ですわ。……この場合どちらが不敬ですの?」
ポコナが軽くイライラしながらリリィを詰めていく。
「えっ、えっ、リリアの姫? ここリリアなんです? えっと……その……っ」
「リリィ様、早く謝って下さい。アホな姫の道連れで死刑になるのは御免です」
「そ、そんな言い方しなくてもーっ!」
あいつらは大丈夫そうだな。
「じゃあすまんがそのアホの相手を頼むよ。あとジーナ、リリィが騒ぎ出したら……頼むぞ」
「かしこまりました。即座に黙らせますのでご安心を」
その言葉を聞いて安心した俺は、最後にレナにこっそりと頼み事をした。
「あのアホな姫は苦い豆茶が大好物だから出してやってくれ」
「そうなの? 分かった。じゃあにっがいの用意するね♪」
これでいい。
居間を後にして、俺の部屋に入るなりシルヴァは机に備え付けの椅子に、ティアとイリスは俺を両脇から掴んでそのままベッドの上に座った。
二人とも腕をぎゅっと掴んで離さない。
まるでさっきのポコナとレナのようだ。
「お、おい……」
「話を進める上で特に問題は無いからそのまま進めよう。して、ラヴィアンで何があった?」
この状況でも平然と話を進めようとするあたりこいつもどうかしてるな。リリィでも連れてくればシルヴァへの嫌がらせになっただろうがそれと同時に話も進まなくなるのが問題だ。
大人しく部屋の隅で立ったままのマァナを見ると本当に血が繋がっているのか疑問しかない。
「お前、見てたんじゃないのかよ」
「勿論見ていたさ。会話までは分からないがね。見てはいたが城に入ってから見えなくなってしまったのだ」
シルヴァの話によると、ラヴィアン城の迷いの結界みたいな通路を通り出したあたりから見えなくなったとの事。
つまりあの妙な装置があった場所に近付いた事でギャルンの術に妨害された、とかそんなところだろう。
「どちらにせよイリスを無事に助けられたようでなによりだが……何があったか聞かせてもらおう」
俺は迷いの術式を抜けた先に妙な装置があった事、その装置の効果、そして破壊した事、ギャルンのせいでおかしくなったダンゲルの事などを説明した。
「ふむ……その種というのは以前にも報告があったアレの事かね」
「今回は一応残骸だが持ち帰ったぞ」
イリスから受け取った干からびた種をシルヴァに投げる。
「む……これか。後程詳しく調べておこう」
「そこで一度ギャルンが現れて……」
続いて、ギャルンを倒した事、イリスが黒鎧として現れた事、その身体の中からイヴリンを追い出した事まで話した所でシルヴァの顔色が変わる。
「イヴリンだって? イヴリンがイリスに憑りついていた? しかしそれでは大した力を振るえない筈だが」
「イリスの場合は悪意にあてられてたんだよ。必死に抑えてくれてたおかげで被害は少なく済んだが」
「それでイヴリンはどうした?」
「ぶっ殺しちゃったゾ♪」
ティアがあっけらかんとそんな事を言うのでシルヴァが固まってしまった。
「……ん?」
「だから、ぶっ殺しちゃったゾ?」
「……どう、やって?」
「ひっ捕まえて地面に叩きつけてダンテヴィエルでちょいやーって」
シルヴァは「何を馬鹿な事を」とか言いながら俺の方へ確認の視線を送ってきたので頷いてやった。
「……な、なるほど?」
言葉とは裏腹に、その表情は何も分かって無さそうだった。
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