★完結!★【転生はもう結構です!】崖から落とされ死んだ俺は生き返って復讐を誓うけど困ってるドラゴン助けたら女になって娘が出来ました。

monaka

文字の大きさ
上 下
345 / 476

第336話:ミナトの耳はロバの耳。

しおりを挟む

 ダンゲルは、無数に生やした棘を全て自分の身体に突き刺して自害した。

「……ラムちゃん」

「何も言うでない。儂は大丈夫じゃ」

 ラムはまるで何事も無かったかのように、ダンゲルの頬を一撫でしてから車椅子ごと俺の前までふわりと移動した。

「……どこが大丈夫なんだよ」

 確かに表情は変化が無い。
 それどころか、不自然なくらいの無表情だ。

「ラムちゃんがそんな表情してる時点で大丈夫なわけないだろ……」

「……うるさい。儂は身内を失うのなんて慣れっこじゃ」

 この子は、家族を皆殺されている。
 残っていたエルフはダンゲルとヨーキスの二人しかいない。

 ダンゲルは行方不明になっていたが、再会できたと思ったら敵の傀儡になっていて、かろうじて話が通じると思ったら目の前で自害してしまった。

 この状況を、慣れているからなんて理由で受け流せる訳が無い。

 俺は思わず車椅子の後ろに回ってラムちゃんを抱きしめた。

「なっ、何をするのじゃっ!」

「ラムちゃん、俺は後ろに居るから君の顔は見えないぜ?」

「ばっ、ばかもの……っ」

 僅かに声が震えている。
 この子は今までにどれだけの辛さをねじ伏せてきたのだろう?
 乗り越えたからと言ってその時の悲しみが消える事は無い。
 彼女の中に押し込められているだけだ。

「ついでに言うと頭の中でママドラがやかましくてラムちゃんの声も聞こえないわ」

『いつ誰がうるさくしたのよ』
 黙ってろって。

「お、お主は……本当に……ずるい奴じゃのう……」

「ん? 何か言ったか? 全然聞こえないわ」

「うぅ……うあぁぁぁぁぁぁっ……」

 彼女にとってはダンゲルも数少ない家族であり、友だったはず。
 そんな相手を失ったっていうのに我慢なんかさせてたまるか。

 ラムは今まで抑圧して来た物が一気に崩壊し、内側から想いが噴出するように大声で泣き続けた。

 俺は勿論そんな声は聞こえない。
 聞いていない事にしておく。

 空気を読んでくれたのか、ティアとネコもこちらに寄ってくる事は無かった。

 むしろ、必死にどこかのおバカ姫を近付けさせないようにしてくれているようだった。

 後で礼を言っておいた方がいいなこりゃ。

 マァナはともかくリリィはこんな時でも空気を読まずにラムに絡んでくるに違いない。「ししょーっ! どーしたんですかししょーっ! お腹でも痛いんですかーっ!?」とか言ってな。

 今あんなおバカをラムに近付けさせるわけにはいかない。




「……ミナト、おいミナト……もう本当に大丈夫じゃ」

「……」

「おい、もう聞こえんフリはやめい!」

 振り向く、というよりのけ反るようにして俺を下から覗き込み、泣き腫らし赤くなった目でラムが俺を睨む。

 ほっぺたをぷくーっと膨らませて精一杯怒っている演出をしているのが微笑ましい。

「ラムちゃんは一人じゃないからな?」

「わっ、分かっとるのじゃっ! そろそろ離れいっ!」

 顔を真っ赤にしてラムが両手を振り回し俺の顎まわりをぽかぽか叩き出したのでそっと彼女から離れる。

 もう、大丈夫だろう。

「……ありがとう」

 ほんの一言だけ、聞き取れるかどうかというくらいの小さな声でラムが呟いた。

 勿論俺の対応は決まっている。

「ん? 何か言ったか?」

「……べっつに! 何でもないのじゃこのばかものっ!」

 そう言ってラムはもう一度ほっぺたを膨らませた後、ケラケラと笑った。

 お前が守りたかったのはこの笑顔だろう?
 なぁ、ダンゲルよ。

 お前が望んでか望まずかは知らんがギャルンの傀儡に成り下がっちまった事には同情するぜ。
 ……でも最後の最期に男を見せたな。
 彼女を守る為に自分で命を絶った根性はすげぇよ。大したもんだ。

 俺はお前の事大嫌いだしイリスがさらわれる事になった直接の原因だから絶対に許せないけれど、それでも見直したよ。

 だけどさ、結果的にラムを悲しませてんじゃねぇよ。何もかも裏目りやがって……。

 まるで自分を見ているようで腹が立って仕方ない。
 だけど俺はもうあんな失敗はしないぞ。
 お前みたいに一人で突っ走ったりしないからな。
 俺には頼りになる仲間達がいるんだ。

 拠点に居る奴等だってそうだし、勿論ここにいるネコ、ティア……そしてラムもだ。

 お前と違って俺は共に歩むと決めた。
 多いに力を借りるし、俺も絶対に守り切る。

 ラムの隣に居るのがお前じゃなくて俺達だって事をあの世でせいぜい悔しがれ。

 そして安心していいぞ。
 俺達は絶対にラムを一人にしたりしない。
 お前が守りたかった物は俺達が守るよ。

 だからもうお前の出番はねぇぞ?
 のんびり眺めてりゃいいさ。

『いつものは言わないの?』

 ……人がせっかく奴への恨みを良い感じに自分の中で消化しようとしてんのにそういう事言うの?

『だって言っといた方がきっとスッキリするわよ。あいつには私だって腹立ってたんだから』

 ダンゲルのせいでイリスが……というのはママドラにも話してあったからな……恨むのは当然だろう。

 だったらやっぱりやっとくか。

『いいぞやれやれ!』

 ……いや、そんな声援送られながら言うもんでもねえだろうよ……。

 ざまぁみやがれ、なんてさ。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

魔喰のゴブリン~最弱から始まる復讐譚~

岡本剛也
ファンタジー
駆け出しの冒険者であるシルヴァ・ベルハイスは、ダンジョン都市フェルミでダンジョン攻略を生業としていた。 順風満帆とはいかないものの、着実に力をつけてシルバーランク昇格。 そしてついに一つの壁とも言われる十階層の突破を成し遂げた。 仲間との絆も深まり、ここから冒険者としての明るい未来が待っていると確信した矢先——とある依頼が舞い込んできた。 その依頼とは勇者パーティの荷物持ちの依頼。 勇者の戦闘を近くで見られることができ、高い報酬ということもあって引き受けたのだが、この一回の依頼がシルヴァを地獄の底に叩き落されることとなった。 ダンジョン内で勇者達からゴミのような扱いを受け、信頼していた仲間にからも見放され……ダンジョンの奥地に放置されたシルヴァは、匂いに釣られてやってきた魔物に襲われた。 魔物に食われながら、シルヴァが心の底から願ったのは勇者への復讐。 そんな願いが叶ったのか、それとも叶わなかったのか。 事実のほどは神のみぞ知るが、シルヴァは記憶を持ったままとある魔物に転生した。 その魔物とは、最弱と名高いゴブリン。 追い打ちをかけるような最悪な状況に常人なら心が折れてもおかしくない中、シルヴァは折れることなく勇者への復讐を掲げた。 これは最弱のゴブリンに転生したシルヴァが、最強である勇者への復讐を果たす物語。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

処理中です...