304 / 476
第296話:このヘンタイっ!
しおりを挟む「ルーク、浮かれる気持ちは分らないでもないが私と君の命がかかっている問題だ。少しは自重したまえ」
「はっ、そ、そうですね……申し訳ありません」
リザインは難しい顔をしてルークをたしなめる。
ルークは肩を落としつつも、なんだかまだニヤケているように見えた。
「あのなぁ、この国の王政が滅んだのなんて大昔だろ? それ考えたら隻眼の鷹とかいう奴等はどう考えても名を語る奴等だろ」
「……そうでしたね。万が一隻眼の鷹の名を語る不届き者が居るのならばキツイ制裁を与えてやらねばなりますまい!」
ルークは急に拳を振り上げ、怒りに満ちた表情で天井を睨む。
単純な野郎だな……。
「とにかく、だ。こいつが帰って来ない時点で返り討ちにあった事は相手にも筒抜けだろう。次はもっと大掛かりな暗殺計画を練ってくるかもしれない」
例えば暗殺者を十人くらい纏めて投入するとかな。
さすがにこのくらいの力量ある奴が十人も纏めてかかってきたら殺さない自信は無い。
でも俺の目的はその中の一人でも生きて捕らえて親玉の情報を吐かせる事だから多少死んだっていいか。
『君もなかなか発想が物騒になって来たわね……』
どこの誰とも分らんヤバい奴等なんていくら死んだって俺の人生に影響ないからな。
『自分さえよければいいという現代社会にはびこった過ちね』
お前俺の記憶の中から何を見たんだよ……。
どんどん妙な知識や言い回しを覚えやがって。
『ニホンで生きていた頃の記憶なら大体閲覧は終わったわ。なので今は君が読んだ本とかの記憶をサルベージして読んでるところね』
……俺が読んだ本? 例えばどんな?
『ああっ、やめてっ! 中にだけは』
やめろやめろやめろ!!
お前は人の頭の中からなんちゅうものを拾い上げてんだ!
『なかなかに面白いわ。君の性癖も知れて一石二鳥ってやつかしら。でも君ってやっぱり幅広いわよね~。十代の頃にここまで歪んでいるとは六竜もびっくり』
やかましい!
ママドラに隠し事が出来ないのはもう諦めていたけれど過去に見たいかがわしい物まで拾い上げられるなんて恥ずかしいどころの騒ぎじゃないぞ……。
『大丈夫。誰にも言わないから……ね? おにぃちゃん♪』
うぅ……頭痛い。
「どうかされましたか? 具合が悪そうですが」
俺が頭を抱えて蹲ってしまったのを見てルークがとても心配している。
「ああ、大丈夫。ちょっといろいろ問題が発生したけれど気にしないでくれ」
ルークは「無理しないで下さいよ?」くらいで納得してくれたが、リザインはこちらを見て目を細めて何か考えている。
なかなか観察眼が鋭い。
「ミナト……君はいったい……」
「ストップ」
俺は掌をリザインの前に出してその続きを言わせないようにした。ルークは何が起きたのかとそわそわしている。
「俺の事はいい。全部終わったらどっちみち話してやるし、聞いたら後戻りはできないからな。ただし、お前やこの国に敵意も害意も無いとだけ断言しておくよ」
「……そうか。あれから私もルークにいろいろ聞いたのだがね、どう考えても君は普通ではない。是非ともこの件を早く片付けて君の話を聞きたい所だ」
「前向きなのは助かるよ。……さて、とにかくあと数日は様子見だな。また来るようなら次は必ず生け捕りにする」
早く解決しないとシルヴァの奴もうるさいしな……。
代表のスケジュール調整にだって時間がかかるだろうし、サクっと終わらせてしまいたい。
「しかし……五日後の講演会はさすがに出ない訳にはいかないぞ。二か月前から決まっているスケジュールだからな」
「……それまでにかたが付けばそれでよし、無理なら全力で護衛するまでだ」
「ふふ、頼もしい限りだね。期待しているよ」
それから数日、リザインとルークを直接目的地へ送り届け、張り付いて護衛、という日々を繰り返す。
勿論夜はストレージ内に避難してもらい俺が家で待機。
しかしあの暗殺者以降誰一人侵入者は来なかった。
「……明日は代表の演説がある。お前らにも力を貸してもらう事になるだろうから頼むぞ」
「もちろんなのじゃっ♪」
「待ちくたびれちゃったゾ。最近ミナト全然かまってくれないんだもん」
「うっ、うっ……ごしゅじんが男の家に外泊を続ける日々を耐えるのはつらかったですぅ」
三者三様、とはこの事だろう。
リザインとルークをストレージ内に避難させてから防衛隊の宿舎へ行き、皆に状況を説明したところだ。
ちなみにシャイナは残念ながらドタバタと忙しくしているらしいので説明は後回し。
ラムは純粋に俺の力になろうとしてくれている。
ティアは拗ねて口を尖らせ、ネコは嘘泣き。
「とにかく、だ。俺はまたリザインの家に戻るから明日の昼前にはリザインの家に集まってくれ」
「現地集合でもいいんだゾ?」
「いや、恐らくここ数日襲撃が無かったという事は講演会を狙ってくる可能性が高いからな……早い時間から監視の目が動いてるかもしれない。現地で目立つのはダメだ」
そこで警戒されて行動を見送られてしまうと次はいつ尻尾を掴めるか分らないからな。
「では明日リザイン宅に行くのも儂の転移で行った方がよさそうじゃのう?」
「さすがラムちゃんは理解が早い」
頭を撫でてやるとくすぐったそうにしていたが、手が耳にちょんと触れた瞬間急に顔を真っ赤にして物凄い速さで後ろに飛びのいた。
車椅子なのに器用なもんである。
「こ、こっ、このヘンタイっ!」
……いや、ここでその罵倒は予想してなかったわ。
『もしかしたらネコちゃんと同じでエルフも耳がアレなのかもしれないわね』
アレってお前……。
『耳を触られたからにはお嫁に行くしかないのじゃぁぁぁ~っ』
お前ほんとに俺の頭の中で何読んだんだよ……。
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる