289 / 476
第281話:どういう事だってばよ。
しおりを挟む「シャイナ、いいか、それは何もおかしな事じゃない。ごく稀にだがある事だ」
「そ、そうなのか!? 私、子供の頃に友達や両親に話しても誰も信じてくれなくて……頭がおかしい子だと思われて……それで……」
シャイナの場合前世の記憶を完全に持っている訳じゃないんだろう。
それで断片的に蘇る過去の記憶に悩まされていた、と。
「大丈夫だ。お前はおかしくなんかないし、俺はそういう事があるのを知ってる」
「よかっ……た……初めて、初めて私……受け入れて、もらえた……ミナトに話して本当に、よかった……」
シャイナは瞳から大粒の涙をぼろぼろと流し、必死に指で拭う。
「シャイナ、それは前世の記憶だよ」
「……前世? 私になる前の、私……?」
「そうだ。人が死ぬとその魂は別の存在として生まれ変わる事になる。俺も詳しくはないからそれが人間だけなのか、全ての生き物に共通なのかは分からん」
「私は、違う人間としての記憶を持っていると……?」
にわかには信じられないと言った困惑気味の表情でシャイナが額に手を当てる。
「シャイナみたいに断片的なのも居れば、前世の記憶を完全に持ち越している奴もいる。……例えば俺みたいにな」
「……えっ?」
「ふにゃっ? ごしゅじんってそうだったんですぅ?」
シャイナが驚くのは当然としてネコはそろそろ気付いてたっておかしくねぇ気がするんだけどなぁ。
『君が説明してないんだからしょうがないわよ。アルマもいちいちそんな事言わないでしょうし』
「この際だからネコにも話しておくが、俺の魂はちょっと特別らしくてな。普通なら十回も転生すれば命はすり減って終わりが来るらしいんだけど、俺はもうすでに転生を百万回ほどしてるらしい」
『厳密には百万回死んで、九十九万九千九百九十九回転生し、一回生き返った状態だけどね』
それは今省いていいだろ。
「百万……?」
「ほぇ~。あ、もしかしてごしゅじんがたまに違う人みたいになるのって……」
「やっと気付いたか。それだよ。俺は過去俺が生きてきた人生全ての記憶、スキルなどがこの頭に詰まってる。必要な時に引き出して使用する事が出来るってわけだ。ほら、こう聞いたらシャイナが別におかしくないって分かるだろ?」
『どう考えてもおかしいのは君だもんね』
それは激しく同意だよ。
「そ、そうか……ありがとう。気が楽になったよ。それにしても百万か……凄いな」
「まぁその話は後でいい。それより、シャイナは前世の記憶の中でドラゴニカ所持者を見た事があるって事だな?」
「そう、みたいだ。はっきりとした記憶ではないんだけれど、一緒にパーティを組んでいた仲間だったんだと思う。その人が使うドラゴニカは形状変化はなく、ただ竜の力を身に宿す事で身体能力を激しく向上する……そういうスキルだった」
なるほどなぁ。伝説級にレアなスキルで詳しい情報がないからそこまでは知らなかった。
「なるほど、いい話が聞けたよ」
「だから……ドラゴニカって表記を見た時すごく違和感を感じて……ミナトのは何か、違うんじゃないかって」
「ここまで来たらシャイナにはちゃんと教えるさ。俺はステータス鑑定の時に隠蔽工作というスキルを使ってでたらめなステータスを表示させたんだ」
「そんな事が出来るのか……でも、それならあの腕は……もしかして」
シャイナは俺のドラゴニカが何か違うとなんとなく気付いていた。そして、ネコの中にアルマが居ると知ってしまった。
そこまで辿り着けば、俺のあの腕の秘密に辿りつく事も出来るだろう。
「そのもしかして、だよ。俺の中には六竜イルヴァリースが居る。試験の時は腕を竜化……イルヴァリースの力を顕現させたって所かな」
「……はは、ミナトが、六竜イルヴァリース様……どうりで強いわけだ。もしかしてあのティアとラムも……?」
「いや、あいつらはただ単に人間として規格外におかしいだけだよ。ティアは勇者だし、ラムはとんでもないスキルを持った賢者だ」
「そうだった! ドラゴニカの件で完全に忘れていた……ティアの勇者って、あれは……」
あー、どうしたもんかな。
ティアについては説明がもっとややこしい。
過去の勇者が現代に生き返りました、じゃ説明になってないし理解できないだろうなぁ。
「あいつも過去の記憶があるんだよ。あいつの場合は前世が……魔王を倒した勇者ティリスティアその人ってだけだ」
うん、これなら齟齬なく納得できるんじゃないか?
『前世が勇者ってだけでも大概だけどねぇ……』
「六竜が二人……それに勇者……幼いのにとてつもない力を秘めた賢者……君達のパーティは、凄いな」
「偶然だよ。なんだかんだ成り行きで集まっちまっただけさ」
「六竜が二人も……私にはそれだけで何がなんだかわからない状態だよ」
「地元にはゲオルさんっていう六竜のおじさんと~なんでしたっけ? シヴァルド? シルヴァ? とかいう六竜のお兄さんもいますよぉ?」
ネコが口元に人差し指を当てながら適当な説明をした。
それは別に言わなくてもよかったんじゃないの……?
「六竜が、四人……!? でもその者らは男性なのだな。……確か地元にはミナトの帰りを待つ女の子が沢山いるってユイシスが……もしかしてその子達も特別な子達なのか?」
なんだかシャイナが不安そうに上目遣いで身を乗り出してきた。
表情と行動が一致してないんだが?
こいつは何を聞きたいんだ?
「いや、そうじゃないよ。人間として普通に強い奴らは結構いるけどな」
「そうか、それならまだ私も……」
だからどういう事?
『君は女心が分かってないのよ』
だからどういう事だってばよ。
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。
真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆
【あらすじ】
どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。
神様は言った。
「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」
現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。
神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。
それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。
あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。
そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。
そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。
ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。
この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。
さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。
そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。
チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。
しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。
もちろん、攻略スキルを使って。
もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。
下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。
これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。
【他サイトでの掲載状況】
本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強
こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」
騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。
この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。
ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。
これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。
だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。
僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。
「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」
「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」
そうして追放された僕であったが――
自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。
その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。
一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。
「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」
これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる