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第269話:さすエル。
しおりを挟む「ミナトさん、遅れてしまいましたがこれ前回と今回の報酬です♪」
目の前に大量のガロが入った袋が五つほど積まれた。
「……これはさすがに貰いすぎじゃないか?」
「いえいえ、本当ならこれでも少ないくらいですよ! それくらいミナトさん達はギルドに貢献して頂けてるんです♪」
「分かった。そういう事ならありがたく頂いておくよ。ただ……」
俺は目の前に置かれた袋を二つニームに渡す。
「あ、あの……ですからこれは正当な報酬でして……」
「違う違う。返すんじゃなくてさ、この金が無くなるまではギルドの冒険者たちに好きに酒を飲ませてやってくれ」
その言葉を聞いた瞬間ギルド内は歓声に包まれる。
「さすがねぇさん分かってるーっ!」
「ミナトさんゴチになります!」
「姐さんサイコーっ!」
まったく調子のいい奴等だぜ。
「そ、そういう事でしたら……このお金はマスターの方に渡して貰った方が……」
「その辺は任せるから後でうまくやってくれ。それよりも……」
俺は真昼間から酒場で飲んだくれている荒くれ冒険者共に向き直り、言いたい事を言っておいた。
「お前ら、当面の酒代は俺が奢ってやるから俺達が居ない間、この街を頼むぞ。しっかり働けよ! 働かない奴の酒代まで払う気はねぇからな!」
「「「「おおぉぉぉぉぉっ!!」」」
皆が拳を突き上げて吠える。
これだけ煽っておけばちゃんと働いてくれるだろう。
「……ミナトさん、本当に、なんて言っていいか……俺、俺……」
オーガスが一歩前に出て、何故か涙目になる。
「なんだよいい歳した男が泣くんじゃねぇ」
「あんたは、ミナトさんは俺達の希望なんだ。どこに居たって応援してるし、きっと俺達なんかの応援がなくたってどこでも輝く一番星だと思ってる。頑張ってくれよな」
どこでも輝く一番星……?
こいつ、こんないかついナリして随分詩的な表現を使うじゃないか。
人は見かけによらないもんだ。
「言われなくても頑張るさ。すぐにここまで俺達の活躍が聞こえてくるようにしてやるから期待して待ってろ」
「は、はいぃぃ……みだどざん、おで……俺……っ!」
なんでこいつこんなに俺に懐いてるんだ……?
どちらかと言うと慕ってくれてる、って感じかな。
あれだ、ヤンキーとか特有の自分より優れた相手を敬う的なやつ。
こういう奴等に限って意外と人情に厚かったりするんだよな。ムカつく事に。
俺は基本的に根暗イキリ陰キャだったからパリピとヤンキーは大っ嫌いだったけれど、こうやって真っ直ぐな好意を向けられるとこれはこれで悪くないな。
『女の子からの好意は怖がるくせに男からの好意は喜ぶなんて……ミナト君ってやっぱり……』
待て待て妙な誤解を生みかねない言い回しはやめてくれ。
俺は女性は嫌いじゃない。信じられないだけだ。
その点男は信じられる奴等も居るけど基本的に嫌いなんだよ。そこを勘違いしないでくれ。
『……?? 男嫌いなの? まるで気弱女子みたいな事言うのね?』
上手く説明するのが難しいんだけど……男は大抵女の子を好きなもんだ。俺だってそう。ただちょっと女性不信になってるだけだ。
『……それは理解したわ』
で、だ。男はいい奴悪い奴居るけど、それはそれとして生物的に嫌いだからあまり仲良くしたくない。オーケー?
『君今かなり最低な事言ってない?』
俺はこの身体になってから尚更男を生き物として嫌いになったよ。
『無駄にモテるものね?』
おかげ様で変なのにばっかりな。
ジキルは純粋に気持ち悪いから嫌だしエクスは完璧超人すぎて腹立つしシルヴァはとにかく何考えてるか分からなくて気味が悪い。
ついでに言うならアドルフはキングオブ糞野郎だ。
男なんてろくなもんじゃねぇよ。
『君は自分を男だと言い張ってるじゃない』
……だから言ってるじゃねぇかよ男なんてろくなのんじゃねぇってよ。
『自分を含めた話だったのね……納得』
出来ればそこで納得はしないでほしかったかな。
「そろそろいいかのう? こっちは既に準備完了じゃぞ? いつでも飛べるのじゃ」
「おっ、ごめんごめん。じゃあルーク、トリアの街ってとこに行こうぜ」
「ここから直接……本当に? 疑う訳ではありませんが……」
ルークは未だに信じきれてはいないようだが、気持ちはよく分かる。
俺だってラムの規格外さはびっくりだったもんな。
さすがエルフ可愛くて魔法が凄い!
『頭悪そうな感想……』
エルフっていったらそういうもんなんだよ。
『ダンゲルとかいう奴だってエルフじゃない』
あんなの俺からしたらエルフじゃねぇ……って、そう言えばダンゲルの野郎はあの後どこ行ったんだろうな……。
あの時は感情に任せて消えろ的な事を言った気がするが、気が付いたら本当に姿をくらましていた。
あの状況から再びギャルンにつくとは思えないし、ギャルンもこれ以上ダンゲルに用はないだろう。
一人旅でもしてるのか……或いは。
「じゃあ出発なのじゃーっ!」
思考を遮るようにラムの明るい声が耳に突き刺さる。
ふわっとした感覚に包まれ、一瞬で俺達は見知らぬ街の前に立っていた。
「さすが儂じゃのう! 位置取り完璧なのじゃっ!」
「す、すすす凄い……! 本当にこの人数をまとめて転移させるとは……!」
「どやーっなのじゃ!」
車椅子の上でふんぞり返るラムの頭をネコが優しく撫でる。
こうしてみてると本当に家族みたいだなぁ。
どちらかというと親子よりも姉妹だけど。
「あっ……!!」
突然ルークが大声を出して顔を青くさせた。
「……どうかしたか?」
「一緒にレイバンに来てくれた護衛の人達を……街に置いてきてしまった……」
あぁ……防衛大臣だもんな。防衛隊から離れて一人で来るのはおかしいか。
「はぁ……仕方ないのう。じゃあもう一度戻って今度はそいつらも一緒に連れてくるのじゃ」
ラムがめんどくさそうにルークと一緒に消えていき、しばらくすると馬車と護衛三人を連れて帰ってきた。
困惑する護衛の連中を尻目に、ラムは大あくびをしていた。
さすがにこのお子様も疲れてしまったようだ。
そんな様子を見ながらネコとティアもあくびしてるけど君達はどうしてそんなに眠そうにしてるんだい……?
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