219 / 476
第213話:邪教も邪教。
しおりを挟む「ラムちゃんの予定じゃこれからどうするつもりだったんだ?」
「だからラムちゃんと呼ぶなと……まぁ良いのじゃ。これから、など勿論敵の拠点を叩くのみじゃっ!」
いやいや、そうはいかんでしょうよ。
ラムは椅子から立ち上がって腰に手を当てふんぞり返っていたが、そううまく行くとは思えない。
「いきなり本拠地はどう考えても無謀だろう?」
「拠点と言っても総本山という意味ではないぞ? 敵の拠点、なのじゃ」
ランガム教の拠点が本拠地以外にいくつかあるという事だろうか?
「儂らが調べた限りでは奴等の拠点は三つあるのじゃ。出来れば拠点攻略に協力してもらいたいんじゃが……」
ここまで来て断る方がどうかしてる。
それに俺は少女の涙には弱いからな。
『やーいろりこん。やっぱりロリペド犯罪者の血がうずくのかしらね?』
今だにどいつの事か分からんがそいつの話はするな俺とは関係ない。
『それもまたミナト君なのにねぇ?』
「……協力するのは構わない。乗りかかった船ってやつだしな。拠点の位置や敵の数とかは分かってるのか?」
『また無視? まぁ今は幼女との会話を楽しむ時間だものねぇ』
しつこい。
『むーっ!』
「拠点三か所はそれぞれ五百人程度駐留しているようじゃ。勿論完璧に、とは言えんがおおよそその程度じゃろう」
五百人……それが三か所で千五百人か。
「正直、全部落としたとしても数の優位性は揺らがないな……」
「しかしながらこれは儂らにとって大きな一歩なのじゃ。これを繰り返していけばいつかは……!」
気の長い話だ。しかし、今までもこの子らはずっとそうやってきたんだろう。
「ちなみにランガム教の親玉ってのはどんな奴なんだ?」
「知らぬ」
「知らぬってお前……」
いくら相手がでかい宗教団体で教祖やら親玉だかが表に出てこないとはいえ何も知らないって事はないだろう。
「知らぬ物は知らぬのじゃ。いつしかこの国に現れ妙な宗教を広めた。そして洗脳されたかのように人々はそれに従った……儂が知ってるのはそれだけじゃよ」
そいつの詳しい情報が広まる間もなくこの国を掌握されたって訳だ。なかなかのやり手だなそいつも。
「そして奴はこの国の名前を消し去った。今ではランガム教国と言い張っておる」
「ランガム教国ねぇ……ちょっと気になったんだがランガム教、って言うからには神として信奉している対象がいるんだろ? そいつらは何を信奉しているんだ?」
ラムは俺の質問にとても苦い顔をした。
「それを聞いても……まだ儂の味方をしてくれるじゃろうか?」
「当然だ。俺は一度決めたらそう簡単には揺らがねぇよ」
『本当かしら?』
ほんとなの!
「……六竜じゃ」
「……あ?」
六竜を信奉している宗教なのか?
じゃあ間違いなく破壊の権化だわ。
『失礼ね! 君絶対今私の事言ってるでしょ!?』
お前が昔暴れたせいでそんな信者ができたんだろうが……。
「ダリル王国にも聖竜教ってのがあるが……」
聖竜教に関してはそんな過激派じゃないけどな。
「おそらく信奉している竜が違うのじゃな」
『あっ、なんか物凄く嫌な予感がしてきたわ』
奇遇だな、俺もだよ。
「奴等が信奉しておるのは六竜の中でも最も危険と伝えられているカオスリーヴァという竜じゃ。お主がイルヴァリースならば知っているであろう?」
ほら来たよ……。邪教も邪教じゃねぇか。
お前の旦那だろ? なんとかしろよマジで……。
『元旦那よ元! あんな奴知らないわっ! それに……カオスリーヴァを信奉してるってだけで、奴が関係してるとは限らないじゃない』
まぁそりゃそうだわ。
「ちなみに俺達はそのカオスリーヴァって奴の分離体と交戦した事がある。面倒極まりない奴だからあいつが絡んでたら厄介だな……」
「ほんとなのじゃ!? という事は撃退しておるんじゃな!?」
「喜ぶのは早い。あくまでも大昔に分裂した分離体らしいからな」
もし奴が後ろに居るのなら今回も妙な策略を練ってるに違いない。
あいつの面倒な所はその力というよりも趣味の悪さだからな……。
「ど、どうじゃ……? 力を貸してもらえるじゃろうか?」
そんな潤んだ目で聞かれたらイエスとしか言えねぇよ。
『このろり……』
だまらっしゃい。
「カオスリーヴァなんて名前聞いちまったら余計手を貸さない訳にはいかなくなったよ」
「で、では……」
「おう。任せときな。で、どう攻める? プランは考えてるのか?」
ラムがボスだというのならば作戦等もこいつが立てているのだろうか?
「勿論じゃ。まずはきっちり拠点を潰したい。援軍が来る暇も無いほど一気に、纏めて殲滅できるのが理想じゃ」
もしそれを本気でやろうとしてるのなら戦力の分散が必要になってくるな……。
「一つはレジスタンスを一同に集めて攻め落とす。もう一か所はお主等で対応してもらえるとありがたいんじゃが……」
俺達三人で拠点一つ? もう一つがレジスタンスとして、まだ一か所あるだろう?
「残りの一か所は……儂が出る」
「そ、それはなりません!」
今まで黙って話を聞いていたヨーキスが慌てて立ち上がり、叫んだ。
「黙れヨーキス。無関係のミナト達がここまで力を貸してくれるというのじゃ。儂がのんびり高みの見物しとるわけにはいかんじゃろ」
言うじゃねぇか……ただ隠れている形だけのボスではないという事か。
ただ簡単にヨーキスが納得するとは思えない。
その証拠に、ヨーキスは鬼のような形相をしていた。
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。
真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆
【あらすじ】
どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。
神様は言った。
「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」
現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。
神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。
それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。
あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。
そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。
そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。
ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。
この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。
さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。
そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。
チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。
しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。
もちろん、攻略スキルを使って。
もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。
下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。
これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。
【他サイトでの掲載状況】
本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる