上 下
207 / 476

第201話:ダリル王妃。

しおりを挟む

 その後無事にテラの解呪、回復は終了し、これにてダリル城で起きていた問題は全て解決した。

 大臣の息子であり、毒を盛った犯人であるテラの処遇についてだが、祖父を思う純粋な心を利用されただけ、という事でお咎め無しとなった。

 幸運にも死者が出ていなかったのが大きいだろう。
 ライルもテラを責めるのは違うだろうと率先して彼の無罪を主張した。

 しかし、大臣はさすがに罪の意識を感じてしまったのか王候補からは退いた。

 よって、新たなダリル王はライルとなる運びとなった。

 ただし、テラがやった事は毒殺未遂事件だけではないので、もう一つの方はきちんと謝罪させなければならない。

 ……そこでおかしな事になってしまう。
 メイド服の窃盗について、盗まれた当人、つまりリーアの元へテラを連れて行った結果。

 自分のメイド服を盗んだのが大臣の息子と知って何故かリーアは大喜び。

「君ならなんだって似合うよ! 私のじゃサイズ大きかったでしょ? 今度妹が使わなくなった服沢山用意するから……あっ、むしろ私が仕立てるからさ、いろいろ着て見せてよ!!」

 ……だそうである。
 なんだかんだとその後うまくやっているのだとか。
 お互いの趣味趣向が完全に合致してしまった事で妙な絆が生まれてしまったらしい。

 ついでに言うならこれには後日談がある。

 ライルの即位やらなにやらでしばらく城に滞在していた間、ネコとイリスも役目を終えてこちらに合流したんだが……。

 そのネコが聞いてしまったらしい。

「あのテラって子なんですけどぉ……ライルさんの事がラブらしいですよぉ♪」

 ネコの話によると城の中を散策している時にテラとリーアが話しているところに遭遇し、「ライル様にアタックするならもっと自分に自信を持ちな! テラは可愛い! どう見たってめっちゃ可愛いから!」という発言を耳にしたのだそうだ。

「……へぇ」

 あまり首を突っ込まない方がいい案件な気がする。

 テラが毒を盛った理由は大臣を王にする事だった。そうすれば国がもっと良くなる、と言っていた。
 しかし、それ以外にも理由があったとしたらどうだろうか?

 例えば、大臣である自分の祖父が王になる事で自分は王の血統となる訳だ。
 王の孫ともなれば周りからの扱いも変わるだろう。
 そして一番王に近しい存在はライルである。

 ……つまり、そういう事なのかもしれない。

 多感な少年に幸あれ。

 数年後ダリル王が性別を越えた大恋愛をしようと、俺はもう知らん。何も知らん。面白いからどうにでもなれ。


「で、だよダリル王」

「はは、その呼び方はやめてくれないか。私の事は今まで通りライルでいい」

 王に謁見を求めた所、謁見の間などではなく以前と同じ彼の自室に呼び出された。

「まだ王としての自覚が無いのかお前は……」

「王なんてただの肩書だろう? すべき事が増えただけで何も変わってないさ。大臣のベイルにも手伝ってもらうしね」

「そうか、大臣の孫には優しくしてやれよ」

「勿論だとも。しかしあれだけ美しければ数年後には絶世の美女になっているかもしれんな」

 そう言って爽やかに笑うライルの表情からは嫌味の類は一切感じなかった。

 ……こいつ、もしかして。

「じゃあその時には妻にでも迎えてやればいい」

「さすがに年齢差がありすぎるだろう? 私も今後出会いなど無いだろうからやぶさかでは無いがね」

 このロリコンめ。
 しかしそんなロリコンが都合のいい勘違いをしている事でこの先面白くなりそうだ。

 さっきはもう知らんと思ったがこれは経過観察が必要だぞ……。

『君って人は……百合だけじゃ飽き足らずこっちもなの……?』
 あのなぁ、お前が言いたいのは男性同士とかボーイズラブだとかそういう話だろうけどこの場合は全く違う話だからな?

『えっと……? 何が違うのか分からないわ。男の人同士はぼーいずらぶじゃないの?』

 この場合男の娘という属性が入る。これは一概にボーイズラブと言い切ってしまってはいけないぞ。
『ごめん、ぜんぜんわかんない』

 俺だってそういうのが好きとかじゃないからな? 勘違いするなよ?

『はぁ……なんの言い訳なのかしら』
 言い訳じゃねぇんだって。要するに、世の中性別なんかどうでもよくて可愛けりゃそれでいいって人種がそれなりに居るんだよ。ライルもそうだったらこの先面白い事になるだろう?

『ミナト君の性癖は難解なのね……』
 だから俺のじゃねぇって言ってるだろうが!
 そういうジャンルなの! 男の娘と書いておとこのこ! 覚えときな!

『う、うん……使う事があるか分からない知識だけど一応覚えておくわね……人間って、不思議ねぇ』

「ライル、あの子は絶対お前の事好きだぞ。積極的に来ると思うから仲良くしとけ。それがお前の為にもなる」

「ふふ、それは楽しみだね。長い目で彼女の成長を待つとしようか」

「兄上……念のために言っておくがあんな幼い子に手を出すなよ……?」

 アリアがとても心配そうに見ている。そう言えばもしそこが上手くいけば自分の義理の姉……兄? となるわけだ。
 兄が居るのに年下の義兄が出来るというのも不思議な感覚だろうけど……まぁ、頑張れ。

『ほんと君は面白ければそれでいいのね』
 それをママドラが言うのか?
『……それもそうね♪』

「まぁその件はいい。それよりそろそろ本題なんだが……」

 うっかり忘れそうになってたけど俺の目的はライルを王にする事じゃなくてこの先、だからな。

「うむ、リリア帝国との和平の件、だったな。勿論和平については異論無い。ただ……」

 ライルはそこで真面目な顔になり声のトーンを落とした。

「一つだけ、条件がある」

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...