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第197話:謎は全て(中略)解けた!
しおりを挟む翌朝、僕はローラの友達というリーアの部屋を訪ねていた。
「ちょっと待ってー、今着替え中だから!」
そう言われて部屋の前で待つ事数分。
「あーごめんごめん、待たせたね。でも私も忙しいからあまり時間取れないよ? 聞きたい事って何?」
リーアはメイド服の後ろのリボンを結びながら廊下を急ぐ。
それについて行く形で並走しながら話を聞く事になってしまったが、案外答えはすぐに分かった。
「あぁ、あの日に配膳してたのが誰かね? それだったらファラさんだよ」
「そのファラさんって人はどこに?」
「んー、今確か城に居ないと思うよ?」
ちょっと待て、それはどういう事だ?
「ファラさんだったら昨日の夜から実家に行くとかなんとかで出ちゃってるはずだよ?」
まずいぞ。まずいまずい。
少し遊び過ぎたかもしれない。真っ先に配膳した者を調べておくべきだった。
犯人がこれ以上の犯行をする必要が無いと思っている場合、タイミングを見計らってさっさとここから逃げるだろう。
僕らを全員始末する事が目的だと勝手に思い込んでいたが、全員に毒を仕込んで殺せるだけ殺すだけが目的だったのならどうする?
その場合既に目的は達成されている?
だとしたら犯人がここに留まる必要は、
ない。
「そのファラというメイドの実家! 場所を教えてくれ。急ぎで!」
「し、知らないよそんなの……急にどうしたの?」
「質問に答える暇はない! 知らないのなら知っている人の所へ案内したまえ! 今すぐにだ!」
このまま犯人が逃走した場合、これ以上の被害は無いだろう。だがしかし、そんなの僕が、
このジャーロック・ホムホムが許せるはずがない。
犯人は全て必ず捕まえて裁き、捌く。
この、名探偵にして銘探偵。そして切り裂きジャーロックと呼ばれた僕が、必ず犯人を切り刻んでやるからな!
メイド数人を詰問した所、ファラの部屋と実家がある場所が分かった。
念の為にまずは部屋の鍵を粉砕し中身を改める。
ほとんど物の無い質素な部屋、生活感があまり感じられず、【痕跡追跡】を使っても毒素のかけらも存在しなかった。
部屋まで持ち込まなかっただけか、或いは犯人ではないか。
しかし可能性があるのなら今このタイミングでダリルから出るのを見過ごすわけにはいかない。
僕が犯人捜しをするからには必ず見つけ、捌かなくては。
死者など増えようと知った事ではないが犯人に逃げられて終わるなど僕のプライドが許さない。
『ちょ、ちょっと! やる事が乱暴じゃない? もう少しこう、推理で犯人を追い詰める! みたいなのは??』
うるさい! その犯人の可能性がある人物がここから出てしまっているというのだから追いかけて切りきざ……ではなく、事情を聞かなければならないだろうが!
『うわ、思ってたよりヤバいわこいつ』
大丈夫、僕だって犯人以外に手を出したりはしない。その代わり犯人だと確信したならその場で切り刻んで終了だ。
早く、早く血が見たいんだ逃がすものか!
『み、ミナト君……ごめん。人選間違えたかも』
ひひひ、待っていろ。すぐに追いついてみせるからな。
僕は城を飛び出し走る。
おいママドラ! 地をかけるのに都合のいいのを寄越せ! 早く!
『わ、分かったわよぅ』
スキル【持久走】【韋駄天】。
持久走とは走る時にのみスタミナ消費を激減させるくだらないスキルだが今回についてはありがたい。
韋駄天というスキルはとにかく速度を上げる能力のようなのだがスタミナ消費が激しい。
それを持久走で軽減をかけ、とにかく走って追いかける。
ファラの実家はダリルから馬車で一日ほどかかる場所らしい。本当に実家へ向かっているとしたら通る道は限られる。
馬車で帰っている事を考えるとルートは一本のみ。
ここを全力で駆け抜け続ければ馬車に追いつけるはずだ!
三時間程時速百六十キロで走り続けると前方に馬車が見えてきた。
ドラゴンと同化したこの身体でなければとうに身体が複雑骨折でもしていただろう。便利な身体である。
「その馬車止まれぇぇぇぇぇっ!!」
馬車を追い抜き、回り込んで止まろうとしたけれどすぐには止まれず、勢いが殺せずにそのままごろんごろんと転げ回ってしまった。
「な、なんだぁ!? おい嬢ちゃん大丈夫か!?」
馬車の御者が心配そうに馬車から降りて声をかけてくれた。なかなか優しい。
「僕なら大丈夫だ。それよりその馬車にファラという女性は乗っていないか? 緊急で確認したい事があるんだが」
「名前までは分からねぇけど乗客は女性が一人だぞ」
ふふ、ふふふふ、追い付いた!
「ファラ、ついに追いついたぞ! ダリル城での毒殺未遂事件について君に聞きたい事がある!!」
外からそう叫ぶと、「なんだいなんだい」と初老の女性が顔を出した。
「君がファラか? ダリル城での会食で食事の配膳をしたのは君で間違い無いか!?」
「やぶからぼうに失礼な嬢ちゃんだねぇ。それは勿論私だけどそれがどうかしたかい? まさか私が毒を……なんて考えてるんじゃないだろうね?」
「まさにその通りだが誤認したらまずいのでとにかく詳しい話を聞かせてもらおうか!」
ファラという女性からあの日の事を出来る限り細かく聞き出した。
少々語気が荒くなってしまって問い詰めるような形になってしまったがとても貴重な話を聞くことが出来た。
「ファラ、突然疑うような真似をして悪かった。しかしおかげで犯人を特定する事が出来たよ! 感謝する!!」
「そりゃ良かった。城のメイド達もみんな怖がってるから早く解決してやって下さいな」
深く頷き、ファラを見送る。
さぁ、ホールでダリル城へ戻ろう。
「うわっ、ミナト殿か……あまり驚かせないでくれ。転んで怪我でもしたらリハビリどころでは無くなってしまうぞ」
「おお、ミナト殿! どこかへ行っていたのか? その顔は……もしや何か分かったのだろうか?」
城の前まで飛ぶと、リハビリのための散歩に出ていたライル、そして付き添っていたアリアと出くわした。
僕の顔を見て成果有りと見抜くのはさすがライル。
『それだけ今の君が凶悪な笑顔してるだけよ……』
「丁度いい。アリア、君に頼みたい事がある」
「なんだ? 私に出来る事ならばなんなりと言ってくれ」
「広間に今から言う人物を全員集めてくれ」
「そ、それでは……!」
アリアの顔がパァっと明るくなる。
ライルが倒れてからずっと暗い顔をしていたのが心苦しかったが、それもあと少しの辛抱だ。
「あぁ、謎は全て……かどうかはおいといて大体解けた!」
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