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第191話:陰謀と疫病神。
しおりを挟む「え、じゃあ俺だけ参加するって事?」
いきなりそんな奴等の中に一人で放り込まれるのはちょっと気が重いなぁ。
「心配せずとも私はしっかり警備をしておくから大丈夫。すぐ近くで見ているよ」
アリアは腕を組んでにっかりと笑った。
なかなかに頼もしい笑顔である。
そういう事ね、会食には参加しないってだけでその場には居てくれるんならまぁいいか。
「ではそろそろ行こう。食事はミナト殿の分を合わせて四人分用意するように言っておく。ギリギリになったがそれくらい対応できるだろう」
俺達はライルに案内されて会食の場に到着。
彼が扉を開けると、部屋の中央には円卓があり、既に二人が席についていた。
一人はベルベロスを連想させるような外見の親父。多分こいつが大臣だろう。
大臣ってのは天辺が剥げててそのサイドだけに髪の毛があるのが定番なのか? 確かに俺もそういうイメージが強いけど……。
そして大抵の場合大臣って聞くだけで裏で何か企んでいるような印象だ。
リリアの時はまさにその典型的なパターンだったし、今回も警戒しておいた方がいいだろう。
もう一人は……なんというか、まるで吟遊詩人のような外見の好青年。
いかにもチャラチャラしてそう。
「ライル殿、遅いぞ……そちらの方はいったい……いや、待て。その顔まさか」
「もしかして……君はミナト・ブルーフェイズでは?」
最初のが大臣のベイル。次がサイラス。なんだか思った通りの反応だが、やっぱり俺の事はすぐに見当がついたらしい。
「うむ、まさしくこの国の英雄ミナト殿だ。ちょうどいいタイミングで立ち寄って頂けたのでこの会食にも参加して頂く事になった」
ライルは二人に俺を紹介し、席を用意してくれた。
円卓を囲むように座ると、俺の正面がライル、右側が大臣、左がサイラスという並びになった。
俺の背後、扉の前にはアリアと副団長のガリアンが警備を固めている。
「貴女がミナトか……その節は儂が不在の間にこの国を救って頂き感謝する」
「そういえば大臣は以前見かけなかったな」
「ああ、お恥ずかしい話ではあるのだが家内が具合を悪くして臥せっていたのでな……あの当時はしばらく城を留守にしていたのだ」
なるほど。あれだけの騒ぎがあったタイミングで偶然不在だった……怪しい。
「聞きしに勝る美しさですね……僕が王になった暁には是非とも妻に迎えたい物です」
「……」
「そ、そんな顔をされると傷付くなぁ。これでも僕は女子達からそれなりに人気なのだけれど……」
俺は余程嫌な顔をしていたらしい。サイラスはがっくりと肩を落とした。
「皆様、お食事の用意が出来ました」
その時、メイドが料理を運んできて、それぞれの前に配膳していく。
「今日は顔合わせなのだから難しい話は後にして、まずは食事でもしようではないか」
料理が並べ終わり、ライルの合図でメイドが下がる。
好物が出たらしくライルはさっそく食事をとり始め、大臣もスープを飲んで舌鼓を打つ。
サイラスはどれから手を付けようか悩んでいるのかなかなか手をつけようとしない。
目の前に並べられた料理はどれも美味しそうで、俺も少し迷いつつ、サラダを一口。
「ぐっ、ぐはぁっ!!」
ガシャァァン!!
目の前の出来事にその場にいた人全ての動きが止まる。
真っ先に声を発したのはアリアだった。
「あ、兄上ぇぇぇっ!!」
真っ先に食事を食べていたライルが突然苦しみだし崩れ落ちたのだ。
アリアがすぐにライルに駆け寄り、「み、ミナト殿! 兄上がっ!」と叫ぶ。
「まさか毒を盛られたのか!?」
「そ、そんなっ!!」
大臣とサイラスが騒ぎ始め、俺はやっと何が起きているのかを把握した。
『ばか! ぼーっとしてないで早く解毒してあげなさいっ!』
お、おう!
「アリア、代われ!」
「ミナト殿……兄を、兄上を……!」
「分かってる。少し黙ってろ!」
ママドラ、解毒魔法使える奴!
『もう準備してるわよ!』
頭の中に神官、ドリトラの記憶が流れてくる。
彼は神官としては中級程度の、特別優れた者ではなかったが……毒に関しては突出した知識を持っている。
「デトケイション!!」
この毒はかなり強力な物だったが、対処がそれなりに早かった事でライルは一命を取り留めた。
とはいえ命が助かったのと五体満足なのは別の話だ。
しばらくの間身体に麻痺が残るかもしれない。
少なくとも一週間は療養が必要だろう。
「ミナト殿……兄上は……」
「大丈夫、死にゃしねぇよ。でもしばらくは休ませた方がいい」
……そしてこの毒を誰が仕込んだのか、が問題だ。
次期王の座を狙う二人の犯行、という線が一番濃厚だが……。
怯える大臣とサイラスの様子を見る限りそうとも限らないか……?
やれやれやっぱり面倒な事に巻き込まれてしまった。
なんでダリルに来て王と話をするだけの予定がこんな事になっちまうんだよ。
疫病神でもついてんのかねぇ?
『それってもしかして』
俺はまだ何も言ってねぇよ。
『……でもちょっとくらい思ったでしょ?』
……うん、ごめん。
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