169 / 476
第163話:英傑王VS〇〇。
しおりを挟む「貴様に聞いておきたい事がある」
「何かな? 女の子の秘密は簡単には教えてあげられないけれど言える範囲なら答えてあげるよ?」
エクスとティリスティアは激しい攻防を繰り広げながら、息一つ乱す事なく平然と会話をしていた。
「貴様の名前……フルネームを聞いても?」
「ふふん、そんな事? 私の名前はティリスティア・マイ・メビウス・メロディよ♪」
マイ……なんだって? まいめろ? だめだよく聞き取れなかった。
「そんな馬鹿な話あるわけないわ」
そんな言葉を呟いたのは、何故かアルマだった。
「どうかしたか?」
「……いえ、何でもないわよ」
それだけ言ってアルマは引っ込んでしまった。
思わず表に出て来てしまうほど驚くような何かがあったのか?
「ほう……やはり余の勘は正しかったな。貴様が何故その名を語っているのかは分からないが、それにふさわしい実力である事は認めよう」
……? 名を語る? どういう事だ?
『……』
ママドラも何か思う所あるのか何も返事をしてくれない。
「名を語るだなんて失礼だなぁ。でもそう思われても仕方ないわよね。あれからすっごく時が経ってるもの。でもこうやってまた君みたいな強い人と戦えて私は嬉しいわ」
「……? 本人だとでも? だとしたら過去の亡霊はお呼びではない。今は余等の時代だ!」
今まで素手でティリスティアの攻撃を受け流していたエクスが、ついに英傑武器を取り出す。
それは異様な長さの剣。
おそらくエクスの身長よりも長い。二メートル近くあるその剣を、まるで手足のごとく自由自在に操りティリスティアへと切りかかる。
会場全体が息を呑むのが分かった。
俺もその一人だから。
エクスの連撃はまるで舞の達人の動きのようで、美しく、無駄がない。
そして長い刀身は薄く、彼の動きに合わせて軽くしなりながら宙に軌跡を描いた。
あの薄い刀身では相手に当てる角度を間違えた時点で刃こぼれか、下手をしたら折れてしまうだろう。
アレを使いこなせる卓越した技術こそ英傑王たる所以なのかもしれない。
「うわわっ、それ相手に丸腰ってのはちょっとまずそうだね……だったら私も剣を抜かせてもらうわよっ♪」
絶句した。
会場の誰よりも、間違いなくこの俺が。
目を疑った。何度も目を擦ってそれを見直した。
でも間違いなかった。
ティリスティアが取り出したその巨大な剣は、間違いなく俺が知っているソレだった。
「ダンテヴィエル……なぜこんな所に」
それは勇者の証、ダンテヴィエル。ダリルで保管されていて、キララが持ち主に選ばれ勇者になった。
ダンテヴィエルが戻ってきたのか? 新たな勇者として選ばれたのがティリスティア?
分からない。何も分からないがアレが他の持ち主に渡っているという事はキララが死んだという事だ。
あの女こそがキララの変装……という線も考えたがそれは無いだろう。
魂の色が綺麗すぎる。見た事が無い程の純白。
あの女は……勇者として相応しい魂を持っている。
しかしどうしてダリル発の勇者がこんな所でリリア帝国のお偉いさん推薦で英傑祭なんかに?
何もわからん。考えても無駄だ。
どちらにせよ俺達の目的は俺かエクスが勝ち残る事。
ここでエクスが勝ってくれれば何も問題ない。
「……その剣は、ヴェッセルか?」
「よく知ってるね。……行くよ?」
ティリスティアの豪快な、それでいて素早い剣撃は確実にエクスを後ろに下がらせていた。
何度も打ち合い、正面からでも英傑武器が明らかに欠け始める。
「くっ!」
エクスがついに後ろへ飛びのき距離を取った。
「あはっ♪ 打ち合いは私の勝ち~っ♪ ……って、何それ嘘でしょーっ!?」
ティリスティアが慌てて横に飛ぶ。
先程まで立っていた場所には光の矢が突き立ち、爆発を起こした。
「何それっ! 英傑は一人一つの武器じゃなかったの!?」
「そんな常識誰が決めた? 余が英傑武器を一つしか持っていないなどと誰が言ったのだ? 下らぬ先入観は身を亡ぼすぞ」
エクスはいつの間にか黄金の弓矢を手にしていて、魔法で作り上げた光の矢を次々と撃ち出していく。
連射速度もさることながら一撃の威力も高い。
遠距離武器も持っているとは……エクスが特別なのが痛いほど分かった。
「うわわっ、そんな物まで使いこなすなんて……やっぱり君は面白いね! でも……それでも私の方が強いっ!」
ガキィン!
ティリスティアはダンテヴィエルに魔力を込め、光の矢を弾き飛ばす。
軌道がそれた矢は舞台の隅へ飛んで行き爆発を起こした。
エクスの攻撃は止まらず次々に矢が降り注ぐが、その全てをティリスティアが払い、打ち落としていく。
「ならばこれでどうだ」
英傑王がマジックストレージから何か球体を
取り出した。ボーリングの玉程度のサイズだろうか?
英傑王はそれをポイっと宙へ放る。
すると自動的にティリスティアを認識、追尾を始めた。
「なぁにこれーっ! ついて来るんだけど!」
今の所それがどのような脅威がある物なのかは分からない。
「もう、鬱陶しい!」
ティリスティアが加速し、空飛ぶ球体を真っ二つに割く……その瞬間大爆発を起こした。
障壁内が光に包まれ、視界が奪われる。
そんな中、エクスの攻撃は止まず次々に矢が放たれた。
ティリスティアは目が眩みながらもかろうじて矢の気配を感じ横に飛んで回避。
「ふふっ、君、本当に強い。私が戦ってきた相手の中でもトップクラスよ」
「当然だ。余は英傑王エクス。英傑の中の英傑であるぞ!」
エクスが高らかに名乗りを上げた。
エクスの周りには先ほどの球体が再び浮かんでいる。
そしてエクスは距離を取って矢を放ち、球体を飛ばし牽制しながら中距離からは長尺の剣で攻撃しつつ、
更なる武器を取り出した。
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。
帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。
しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。
自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。
※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。
※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。
〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜
・クリス(男・エルフ・570歳)
チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが……
・アキラ(男・人間・29歳)
杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が……
・ジャック(男・人間・34歳)
怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが……
・ランラン(女・人間・25歳)
優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は……
・シエナ(女・人間・28歳)
絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる