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第156話:クイーン大爆発。
しおりを挟む会場からの黄色い声は男三割女七割と言った所だろうか。
クイーンを応援するのはやはりどちらかというと女性の方が多いようである。
その女性陣が今絶叫している。
自分の憧れの女性に、男が絡みついているのだ。そりゃ絶叫したくもなるだろうな。
ただクイーンの方はそれどころじゃ済まないみたいで、今にも白目を剥いて泡でも吹きそうな感じになっている。
男自体が嫌いならあんな接触に耐えられないだろうなぁ……。
「は、な……せ」
「嫌だね。俺が勝つにはこうするしかない。そして俺はどんなに地味な勝ち方だろうと負けるよりは勝ちを選ぶ!」
「はな……せ……」
なんだかクイーンの様子がおかしい。
完全に意識が飛んでしまったのだろうか?
うわごとのように離せとボソボソ呟くだけだ。
「む……? あの女、魔法も使えるのか?」
「え、そうなの?」
あんまり魔法使うタイプって感じじゃなかったんだけどな。
「今現在進行形であの女の中で異常な魔力の高まりを感じる。余ほどではないが、かなり強力だぞ」
「クイーンは魔力自体は結構ある方だったんだ。ただあまり魔法を使うのが上手じゃなくて……って話を聞いた事があるな」
ジオタリスが俺の疑問を捕捉してくれる。
だとしたら。俺は軽く既視感を感じていた。
ただクイーンがアレを使えるとは思えない。
アリアのマッスルコンバージョン。アレは魔力を筋力に変換する特殊な魔法。
クイーンが覚えたらいろいろプラスになりそうだとは思っていたが……今それは勿論使えない。
結果的に、高まった魔力の行き先が無い。
「こういう場合どうなる?」
「……大抵暴走を起こす。主な症例は爆発だな」
爆発ってお前……。
「止めに入った方がいいんじゃないか?」
「ふん、自分の魔力も制御できぬならどうなってもいいのではないか?」
こいつめんどくせぇだけだろ……。
あまりに見ていられなくなって口を挟むことにした。ルール的に話しかけるだけなら反則にはならんだろう。
「おいラピルタとかいうやつ! そのまま危険だ! 死にたくなかったら離れて負けを認めろ!」
俺の言葉にラピルタが顔だけをぐにゃりとこちらへ向ける。
「……馬鹿か? そんな言葉を誰が信じる。お前はクイーンとも知り合いのようだが助ける為に世迷言を言うとは……」
ダメだこいつ……全く信じていない。
「愚かな……貴様が何を言ったところで戦っているのは当人たちだ。そんな言葉を信じる根拠もなにもないのだから当然だろう」
エクスは冷ややかな言葉を述べるのみ。
お前が言えばまた少しは違っただろうがよ……。
「離せ」
ぶちっ。
「ぎゃあぁぁぁあっ!!」
軟体動物のようになってクイーンに巻き付いていたラピルタの一部が千切れた。
「私は離せと言ったんだ。男が嫌いだから。触れたくないから、だから離せとお願いしたんだ」
「ぎゃああぁぁ! 血が、血が……!」
「でもお前は離してくれなかったんだ。私はとても怒っている。汚らしい男が私の身体に卑猥な事をしようとした事を」
「ち、ちが、俺は身動きを止める為に……!」
クイーンは目の焦点が定まっているようには見えない。
首を左右に、交互に傾けながら前かがみになってゆっくりとラピルタへ近付いていく。
「ま、待て! 分かった。俺が悪かった!」
「男なんていつも口ばっかりだ。言うだけで全くそれに本心が伴っていない。つまりは嘘だ。私は嘘付きが嫌いだ」
「嘘なんて付かない! それを証明してやる。俺は……こ、」
ラピルタは完全に戦意を喪失している。
今度こそクイーンの勝ちだ。暴走とか爆発とか物騒な事をエクスが言うから心配したがどうという事は無かったな。
「こうさ……むぐっ!?」
「言わせない」
「むーっ! むぐっ、んむ゛ーっ!」
……おいおい、クイーンの奴何やってんだ。
「男なんて……いつだって嘘つきで、いつだって女を下に見て、甘ったれで情けなくて自分勝手で……頭にくるのよ」
クイーンがラピルタの口を押え……というより口の辺りを鷲掴みにしてメキメキと力を入れている。
アレじゃ降参すらできないぞ……。
クイーンは片手でラピルタを持ち上げた状態のまま、もう片方の腕を思い切り引いた。
アレは俺に最後に食らわせようとした高威力の溜め攻撃だな……。
クイーンがラピルタに強力な一撃を繰り出そうとしたその時、彼女の肘がスパークした。
「お、おいなんだアレは」
「だから爆発すると言っただろう。あの女の場合は運が良かったな。これはすぐに使いこなせるようになる。なかなかセンスもいい」
エクスが少しばかり身を前に乗り出してクイーンの様子を注視した。
爆発……肘から?
「見ていろ。凄いのが出るぞ」
なんのこっちゃ……。肘から魔力が噴射してどうする?
攻撃に使うには逆方向……。
ぶしゃーっ!!
ついにクイーンの肘から抑え込まれていた大量の魔力が勢いよく噴き出し……。
クイーンはそれを推進力にして烈火の如き一撃をラピルタにぶち込んだ。
「ぶほーっ!!」
ラピルタは勢いよく上空へと吹き飛び、会場に張られた障壁の天井に激突して、ゆっくりと落下してきた。
勿論受け止める者は誰も居ない。
そして、その光景を見て会場からは喝采の言葉も、悲鳴も、何も無かった。
ただただ俺達と同じように絶句していた。
静まり返る会場で、一人だけクイーンが足音をカツカツ立てながら実況者に詰め寄る。
「ねぇ」
「ひゃっ、ひゃいっ!?」
「私の勝ちよね? 早くアナウンスして」
実況の人完全に怖がってるな……可哀想に。
「それとも貴方も嘘をつく?」
「い、いえそんな事は……! 第一回戦第三試合、勝者はクイーン!!」
その言葉を聞いて満足したのか、クイーンはその場にびたーん! とひっくり返った。
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