★完結!★【転生はもう結構です!】崖から落とされ死んだ俺は生き返って復讐を誓うけど困ってるドラゴン助けたら女になって娘が出来ました。

monaka

文字の大きさ
上 下
147 / 476

第142話:英傑王。

しおりを挟む

「次の人どうぞ」

 宮殿へと続く長蛇の列に並ぶこと四時間。
 一組、また一組と大きな扉の向こうへと入っていき、ほんの数分で出てくる。
 それを繰り返してやがて俺達の番がやってきた。

 俺の身長の倍はある高さの扉を衛兵二人が左右から毎回扉を開いては閉じてを繰り返している。
 無駄な労力のように思うがこの人達は仕事に誇りを持っているか、楽しんでいるかのどちらかのようで、にこやかに並ぶ人達へ微笑みを向けていた。

 思っていたよりも余程平和だし、住んでいる人達の人間性が他の街に比べて格段に良質だ。
 なにせ獣人の外見をしているぽんぽこに差別的な視線を向けない。
 ガルパラでもそうだったけれど、あれは女性限定だ。

 ここでは男女問わず人間と獣人が普通に接し、暮らしている。

 意外とこの国ではこれが普通なのでは? と錯覚してしまうほどだ。
 それが絶対的に間違いなのはウォールの奴隷市場を見れば分かる。

 しかし、逆に言えば統治の仕方、民の導き方で改善していく事が可能だという事だ。

 扉を通り抜けると目の前に階段があり、その上にはまるで王の玉座のような物があった。

「要件を聞こう」

 そこに座り、椅子に肘をついてこちらを見下ろしていたのは金髪、切れ長の目、整った顔立ち。どう見てもイケメンだ。つまり俺が嫌いなタイプの人種である。

 そして、こういう奴って漫画やアニメなどによくいるタイプで、俺にも似たようなキャラに心当たりがあったりする。

 そしてこいつにそれが当てはまるとしたら、有能だけどかなり性格に問題がある。

「ヴァールハイトについて知っている事を教えてほしいんですわ!」

 ……おい、突然そんな事言ってもただの不審者だぞ!

「……ふむ、それを余に聞きに来た理由はともかくとして、なかなか良い所に目を付けたなタヌキよ」

「タヌキじゃありませんわーっ! わたくしは……」
「待て」

 英傑王が掌をこちらへ翳しぽんぽこの発言を遮る。

 俺とジオタリスに緊張が走った。

 英傑王が俺達を不審者だから捕まえろと言えばそこから先は実力行使をせざるを得ない。
 行列に並んでいる間にジオタリスに聞いたのだが、英傑王は多分ジオタリスの事など知らないだろうという事。
 有能な人材にしか興味が無く、英傑の中に自分を楽しませられる人間は居ないと思っているため他の英傑が誰なのかなど覚えてないだろうとジオタリスは語る。
 つまり、こちらにも英傑がいるのだから本当の話だぞ、という説得の仕方は無理という事だ。

「……ふむ、近いな……おいバートン!」
「はっ」
「この者達以降並んでいた者どもは後日に出直すように伝え、エクサー全体に警戒態勢をとれと伝えよ」

 英傑王がそう告げると、バートンと呼ばれた部は顔を青くして「畏まりましたっ!」と扉を蹴り飛ばす勢いで飛び出していった。
 扉前の憲兵も、並んでいた人々も、バートンの「警戒態勢発令! 警戒態勢発令!」の叫び声に蜘蛛の子を散らすように消えていった。

「……さて、人払いも出来たな。こちらも事情があるので余があけられるのは五分のみだが詳しい話を聞こうか、姫よ」

「「「へっ?」」」

 ぽんぽこ、ジオタリス、そして俺、三人の声が見事にハモった。

「ど、どうしてわたくしがポコナだと気付いたんですの?」

「確認に割く時間は無駄だが答えてやろう。姿が違えど王家の人間には特有の波長がある」

 ……英雄王には何か人とは違う物が見えているのだろうか? 俺が相手の心の色が見えるのと似たような力かもしれない。

「時間が惜しい、本題に入れ。姫と……あとそっちのは確か英傑の一人か?すまんが名前までは記憶していない。そちらの女は……知らんな」

 この街に何か重大な事が起きているようなふうだったのに全く態度を変えずにどっしりと構えたまま。

「わ、わたくしは獣人の姿に変えられてしまいましたの!」
「それは見れば分かる。それがヴァールハイトの仕業だと?」
「わかりませんわ。しかし一番疑わしいのはヴァールハイトですの!」

 ぽんぽこは眉間に皺を寄せながら必死に質問をしている。
 彼女が何を言ってもまるでそよ風が吹き抜けただけのような反応。そして無駄はとことん切り捨てようとしてくる。

 こりゃ確かに相性悪いな。

「そこの女、見た所一番賢そうだから要点を纏めろ」

 ついに指名されてしまった。今必要な話だけを総合すると……。

「俺達は帝都内で発生した事件の解決の為に動いている。姫だけじゃなくロリナージャや帝都に居た住民たちが何人か巻き込まれた」

「ほう、なるほど」

 少しは興味を持ったのか、体勢が若干前のめりになったように思う。

「英傑達を訪ねながら情報を収集していたのだが、どうもヴァールハイトが怪しい。それでクイーンが英傑王に聞いてみるといいって言うからここまで来たんだよ」

「理解した。しかしその外にもいろいろと聞かなければならない事がありそうだ。……が、時間切れだな」

 時間切れ、というのは最初に言ってた五分の事だろうか?

「今何が起きてる?」

「貴様等には関係の無い事だが……いいだろう。この街は数日前から頻繁に魔物の群れに襲われていてな」

 ……嘘だろ? 街の連中の様子を見る限りまったくそんな気配が無かった。

「その度に一応形だけでも警戒態勢をとらせて備えているのだが……まぁそんな必要も無い。余が障壁を張るので何人たりともその間街へ侵入する事はできない」

「……街を覆い尽くすほどの障壁を? 魔物はそんなにすぐに諦めるのか?」
「馬鹿か。半日は居座っておるわ」

 即レスで馬鹿扱いされてしまった……。

「だったらそんな大規模な障壁いつまでも張ってられないだろう? どうする気だ」
「ふん、これだから凡人は……余にとってその程度は容易い事よ。難点があるとすれば撃退に動けない事だ。余が動けば魔物を皆殺しにするくらい容易いが、街への侵入を許してしまう可能性がある。民に危険が及ぶような真似はできん」

 なんだこいつめっちゃまともな奴だ……。
 顔がよくて強くてまともな奴だ……。

 俺こいつ嫌い。
『ぶはっ!』

 ずっと黙っていたママドラが噴き出すのが聞こえた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

処理中です...