87 / 476
第82話:恐怖の館。
しおりを挟む「ゲオル殿は大丈夫だろうか……」
「少なくとも身の安全とかは心配しなくていいだろうぜ」
六竜が山に入って大怪我してきたとか笑えねぇしな。
結局その後俺達が次の村に到着してもゲオルは帰って来なかった。
『よし……! よしっ!』
お前なんであいつの事そんなに嫌いなの? 結婚してくれってしつこいから?
『そうよ! 会うたびに言ってきて、断っても断っても照れ隠しと勘違いされるし付きまとわれるしほんと無理』
でもほら、俺とママドラの関係については受け入れたみたいじゃないか。
『……そんな私の旦那ぶられても困るんだけど……まぁいいわ。確かに君のおかげでかなり大人しくなったっぽいわね』
俺達に害が無ければいいんじゃないか? 六竜の一人だったら仲間になってくれたら心強いし。
『……でも早速実害が出てるじゃない』
う、確かにそれはそうだけれど。
『それに、あいつは強いって言っても……』
「オネーサン! なんだかこの村様子がへんヨ」
『……ほら、呼ばれてるわよ』
お、おう……。
ママドラの言葉が若干気にはなったが、今はそれよりもこの村だ。
確かに様子がおかしい。
「まぱまぱー、この村ね、人が居ないよー?」
「おうちの中にも居ないみたいですぅ。ドアが開けっ放しのおうちもありますよぉ?」
「……何かが、起きているようだな」
うちの女子達がそれぞれのリアクションをとりながら村の異変を観察する。
確かに人が居ない。
家に籠っている訳でもないし、鍵が閉まってる家が無い。
なにより不自然なのは、勝手に入ってみても特に家の中に埃が積もってたりはしない事だ。
それどころか食事の途中のような痕跡すらあった。
ママドラ、どう思う?
『んー、可能性としては何か理由があって村人がいっせいにここを放棄したとか、何かヤバいのが来て全員一気に殺されたとか?』
殺されたにしても争った跡とか血とかさ、そういうのが残るもんだろう?
ここは普段の生活から突然人間だけが消えうせたみたいな、そんな違和感を感じる。
そしてもう一つ問題があった。
この村には人が居ない。
つまり、まともな食材が無いという事だ。
一応倉庫みたいなのは見つけたし保存食があるのも確認したのだが、勝手に持っていくのは抵抗があるし食材が原因で村がこうなっているという可能性も捨てきれない。
なんの情報も無く手を付けるのはさすがに不安が残る。
そんな時、明らかに胡散臭い物が目に入った。
村から少し離れた場所、林になっている場所の更に先に丘があり、大きな屋敷のさきっぽが微かに見える。
なんというか、海外の宮殿みたいだなぁという印象を持った。
「ミナト殿、あそこに何か建物が……」
「ああ、今どうするか考えてる」
「まぱまぱー、人が居るかもしれないし行ってみようよ~♪」
アリアとどうするか話合おうと思った矢先、イリスがぴょんぴょん跳ねながら林に入っていってしまった。
「イリスちゃん待って下さいーっ!」
「おい馬鹿、イリスはともかくネコは単独行動するな。何かあったらどうするんだ」
イリスを追いかけて走り出したネコの腕を掴み引き戻す。
勢いでネコが俺の胸に飛び込んでくる形になってしまった。
「ふにゃっ!? あ、あの……その……ごめんなさい」
「分かればいい。お前は戦う力なんか無いんだから一人で動くな。俺から離れるんじゃねぇよ」
『おっ!?』
「ごしゅじん……うれしいですぅ♪」
ネコがぎゅっと俺の腕に絡みついてくる。
「いや、離れるなとは言ったけど邪魔にならない程度の距離で頼むわ……」
『せっかくいいセリフが出たと思ったのに……』
最近ママドラは娯楽が無さ過ぎて俺で遊んでるだろう?
『暇なんだもん♪』
だもん♪ って歳かよ……。
『お゛ぉん?』
なんでもないです。
このやり取り最近した覚えがあるな……。
それはともかく、ゲオルが居たら暇なんて思う余裕も無いから丁度いいんじゃないか?
『アレはダメ。暇とかそう言うんじゃなくてただ不快になるだけだから』
そうですか。
「とにかく、俺達もあの屋敷目指して行ってみようか」
林の中には獣道よりちょっとマシ、くらいの細い道があり、それを通り抜けると想像よりもはるかに巨大な屋敷が現れた。
「おいおいマジかよ……ちょっとした城じゃねぇか」
「これだけ大きい建造物ならあの村の人々くらい余裕で受け入れられるのでは?」
……なるほど。何か事情があってここに村人を受け入れているという可能性もあるか。
実はここに来るまでに獣道で大量の足跡を発見していた。
つまり、ごく最近沢山の人々がこの屋敷へ向かっていたのは間違いない。
「ここで村人を受け入れて面倒見てるとかそういう平和的な話だといいんだけどな」
先に行ったイリスは入り口の前でぼけーっと突っ立って建物を見上げていた。
「イリス、どうかしたか?」
「……ここ、なんか変な感じする」
イリスが変だって言うなら何かあるんだろう。
それは間違いない。
「ミナト殿……」
「分かってる。こいつはかなり怪しい。だけど、俺達が旅を続けるには食料が足りない。食料を手に入れる為出来れば村人を見つけたい。村人を見つける為にはここに入らざるを得ない。結局行くしかないさ」
「うむ……実は私、その……怖いのはちょっと苦手なのだ……ミナト殿、頼りにしているぞ」
怖いの? えっ、これそういう話?
ここそういう場所なの?
俺もそういうの得意じゃねぇんだけどなぁ。
『ふふっ、頑張れ男の子♪』
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26
【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。
帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。
しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。
自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。
※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。
※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。
〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜
・クリス(男・エルフ・570歳)
チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが……
・アキラ(男・人間・29歳)
杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が……
・ジャック(男・人間・34歳)
怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが……
・ランラン(女・人間・25歳)
優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は……
・シエナ(女・人間・28歳)
絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる