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第36話:悪い子にはお仕置き。
しおりを挟むじゃあママドラ、例の科学者のやつ頼むわ。
『了解っ♪』
俺の頭の中にマッドな科学者の記憶が……。
って、おい!
『……? 何かしら??』
クソが、ハメやがったな!?
『えっ、えっ? どういう事??』
この記憶は確かに科学者だし奴等に効果のある物を作る知識がある、だけどな……。
この知識で作れる物に必要な素材がこの世界にゃ存在しないじゃないか!
『……えぇ~? さ、さすがにそこまでは責任持てないっていうか……』
畜生め。竜化せずに記憶だけだったのは救いだ。無駄に女性化を進めずに済んだからな。
『あの、なんかごめんね? 私もどういうスキルを持ってるとかは分かるんだけど記憶の中身全部を見てる訳じゃないのよ。そもそも必要な素材の名前とか私にはよく分からないし……』
分かった分かった、それはもういいよ。それよりこの記憶だけじゃダメだ。
出来ればこの世界の住人で、さらに言えば出来る限り薬学に優れた奴の記憶とかないかな?
『ちょっと待ってね。それなら薬学関係と植物学者の二人でどうかしら? でも二人分の記憶はさすがにそのままじゃ無理よ』
分かったよ。しょうがねぇから竜化するぞ。
全身にママドラの力が漲っていく。
髪の色、長さが変わり、出る所が出て有る物が消えていく感覚。
こればっかりは何回経験しても慣れないな。
そして二人分の記憶が頭の中でぐちゃりと混ざっていく。
「まぱまぱーなんとかなりそう?」
イリスが心配そうに私の服を掴んだ。
「ええ、大丈夫よ。私がすぐに何とかするからね」
イリスの頭を撫でてやると気持ちよさそうに目を細めた。
さて、私もやるべき事をやらないとね。
「……そうね、まずは必要な素材を集めないと。ユイシスちゃん、手伝ってくれるかしら?」
「うにゃ……? ご、ごしゅじん……私でも出来る事あるんでしょうか?」
ユイシスちゃんが不安そうに私の様子を伺ってくる。
「勿論よ、今は人手が必要なの。手伝ってくれるかしら?」
「うにゃっ! が、がんばりますっ!! 何したらいいですか?」
「この辺に生えてる草をいろんな種類集めてもらえる? 出来れば一種類につき数本ずつ用意してほしいの」
「分かりましたっ! 片っ端から集めてきますっ!!」
必要な物をピンポイントで支持するのは難しいし、ここら辺に生えてる草を調べる為にもまずは適当に集めてもらった方がいい。
その間に私は木の方を調べて……っと。
「イリス、ちょっと一緒においで」
「うん♪ 何探すのー?」
私はイリスを連れて付近に生えている木を幾つか調べて回った。
「この木は……当時と少し品種が変わってるわね……成分は同じかしら?」
木の表面を剣で削って樹液を出し、それを指先に付けて臭いをかいでみる。
「……これは、私の知ってる物より刺激が強くなってるわね。肌が弱い部分だったらかぶれちゃうかも。気を付けないと……イリス、これには触っちゃだめよ?」
「はーい♪」
ガラガという種類の木であるそれの枝を何本か折って採掘所前まで持っていく。
「次は……っと。確かここは鉱石が取れるのよね」
中に入るのはちょっと危ないから、周りに転がっている石の中でめぼしい物は……。
「あらあら、良いのがあるじゃない!」
そこに落ちていた石はダンレー鉱石と言って、市場価値は皆無と言っていい石だけれど、石同士をこすり合わせると簡単に削れて粉になる。
その粉に水分を少し混ぜてこねると簡単に火薬玉が出来る。
粉の状態だと可燃性は無いのに水分を混ぜてからだと簡単に発火するようになる変わった石で、鉱山なんかだと爆弾などに着火させる際などに使ったりする。
石の状態で雨水に濡れても、粒子が密着しているので水分を吸収しない。
つまり、削って粉にしない限りこの特性は現れない。
「ごしゅじーん! こんな感じでどうでしょーかっ!」
ユイシスちゃんが大量の草を抱えて帰ってきた。
どさりと目の前に降ろされた草をチェックしていくと……。
「ユイシスちゃん、お手柄よ♪ よしよし」
良い物を見つけて来てくれたので頭を撫でてあげた。
「うにゅ……ごしゅじん、くすぐったいですぅ」
「あら可愛い♪ 次は葉っぱの先が丸くなってるタイプのこの草と、こっちのギザギザのやつ。この二つを沢山持ってきてくれる?」
「うにゃーっ! かしこまりーっ!」
ユイシスちゃんはとっても嬉しそうにネコミミをピコピコさせながら走って行った。
ほんと、可愛い子。
この草は葉を傷付けるととてつもない刺激臭を出す。
ギザギザの方は乾燥させると、ある成分が急激に増える。
そして先程取って来た木の枝と、その二つを一緒に燃やすとあら不思議、混ぜるな危険的な毒のできあがり♪
「ご、ごしゅじーん、これでいいですかぁ~?」
草を山ほど抱えて前が見えなくなってるユイシスがどさっと草を目の前に降ろした。
「うん、上出来よ♪ そしたら今度はイリスも手伝ってくれるかしら?」
「うん♪ まぱまぱー、なにすればいい?」
「これから三人でこの丸い葉っぱとギザギザの葉っぱの草を分けましょう。ギザギザの方は手に刺さらないように気を付けてね」
「「はーい」」
二人が元気よく手を上げて作業に取り掛かった。私も一緒に作業し、十分くらいで全部区別し終わったので携帯用の固形燃料を使って火をおこし、ギザギザの方をあぶっていく。
近付け過ぎると燃えちゃうから加減が難しい。
準備にたっぷり一時間半ほどかかってしまったけれど、葉っぱの乾燥も終わった。
最後に木の枝を細かく削って葉っぱ二種類を細かくして混ぜた後、石の粉を水でこねた物でコーティングし、人の頭より少し大きいくらいの球体が出来上がる。
一本長い蔦を取り付けて導火線にし、完成♪
植物学の知識と薬学知識の二つでいい具合に必要な物が作れたわ。
「ごしゅじーん、結局これってなんなんです?」
「まー見てなさいって♪」
私は導火線に火をつけ、球体を採掘所の中へ放り投げた。
「さ、ちょっとだけ離れてて」
しばらくするとピンク寄りの紫色した煙がもくもくと採掘所内に充満し、入り口から煙が出て来そうになった所で、薬学者が持っていた唯一のスキルを使用。
「アシッドフィルター!」
出入り口に薄い膜を張る。本来は自分の周りに展開して毒から身を守る物だけど、これで入り口を塞げば毒の煙が外に漏れだす事は無い。
「このまま三十分も待てばあいつらも卵もイチコロよ♪」
「まぱまぱすっごーい♪」
「うにゃ~ごしゅじんさすがですぅ♪」
飛びついてくる二人を両手を広げて受け止める。
「うにゃ~♪ てっきり避けられるか叩かれるかすると思ってましたぁ」
「そう? 私はどちらかというと女性専門なのよね♪」
ぴこんと立った可愛らしいネコミミを優しく撫でる。
「今夜は楽しみましょうね♪」
「う、うにゃにゃっ!? ご、ごしゅじんがなんか変な事に……っ!」
その時、採掘所の方で轟音が響き渡り、何か巨大な物が内部の壁をゴリゴリ削りながら飛び出して来た。
『ぎぇ……、アレがきっと女王ね。私の巣の時はもう少し小さかったけれど……』
「ジジジッッ!!」
巨大なゴリーブはアシッドフィルターを突き破って外に飛び出し、苦しそうにゴロゴロと転げ回った。
「やれやれ……私のお楽しみタイムを邪魔するなんて悪い子ね……イリス、危ないからユイシスちゃんと一緒に下がっててちょうだい」
悪い子にはお仕置きしなきゃね。
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