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第29話:気の迷いは身を亡ぼす。
しおりを挟む気が付けば馬鹿ネコのネコミミは引っ込んでいた。
「耳が消えた……前から思ってたんだがそれはどういう仕組みなんだ?」
「やっぱりこっちの耳がある方が可愛いですか?」
「いや、そういう訳じゃなくて不思議なだけ」
俺は本来猫は好きなのでネコミミ少女なんて実際見てしまうと興味がわかない訳がないのだが……こいつの場合なんか違うんだよなぁ。
もともと普通のヤバい奴だと思ってた相手に今更ネコミミが生えても、ネコミミが生えてるヤバい奴って認識以上にはならない。
「私は亜人と人間のハーフなんですけど、耳が両方ついてて小さい頃すっごく虐められたんですよ。気持ち悪いって」
……あぁ、そう言えば人間の耳もあるからネコミミ生えたら耳が四つついてる事になるのか。そりゃ不思議だ。
「ハーフの中でも中途半端な遺伝で生まれちゃったレアケースらしいんです。だから普段は出来るだけ獣っぽい耳の方は髪の毛の中に隠しているというか、こう、寝かせているというか……」
えっ、生えたり消えたりしてるんじゃなくて髪の毛に埋もれさせてるのか? 自力で耳をぺたんこにして目立たなくしてるって事だろうか?
「どれ、ちょっと見せてみろ」
「うにゃっ!? はわわっ、だ、ダメですぅ! 亜人、特に獣人系の耳に触るっていうのはその、それなりの覚悟を……って、うにゃぁぁ……」
馬鹿ネコの頭を引き寄せて髪の毛をかき分けてみると、確かにちゃんと耳がある。
ネコミミは普段からここにあったのか……。出来る事なら初めて会った時からこの耳の存在を知りたかった。
そうすれば俺の中で馬鹿ネコじゃなくてケモミミネコ娘扱いをする事が出来たかもしれないのに。
「うっ、にゃっ……ご、ごしゅじん……そこ、ダメぇ……」
「変な声出すな」
髪の毛の中からネコミミを探り当て、むにむにと感触などを確かめてみる。
うわ……これはなかなか、馬鹿ネコの癖に良い物を持ってるじゃないか。
「ごしゅじんって……私の事、好きなんですか……?」
背筋がぞわっとして頭を離すと、ネコミミがピンと立ってぴこぴこしながら馬鹿ネコが息荒く呻いていた。
「お、教えておいてあげますけど……亜人の耳はあまり触らない方がいいです……」
「なんだ、弱点なのか?」
「そう……じゃなくてですね、いやそれもあるんですけどぉ……その、特に獣人系の耳っていうのはかなり敏感で、つまり私達にとっての性感帯といいますか、その……」
「ば、バカ野郎! そういう事をなんでもっと早く言わねぇんだよ!」
「まぱまぱーせーかんたいってなに?」
「それはですね……」
「シャーラップ!! 黙れ馬鹿ネコ!」
「なんでですかっ! そもそもごしゅじんがいきなり私の、その、みっ、耳を……」
馬鹿ネコが変な言い方するもんだから俺までとんでもない事をしてしまったような気になってくる。
馬鹿ネコの顔は真っ赤で、珍しく恥ずかしがってもじもじしていた。
そうしているととても可愛いのだがこいつの場合普段の素行が酷すぎてなぁ。
『君って奴は最低ね』
な、なんでだよ俺が悪いのか?
『当然じゃない。仮によ? もし人間相手だったとしてもいきなり女子の耳をいじくりまわしてごらんなさいよ。どうなると思う?』
うわ、それは酷いな。かなり上級者な変態だ……。
『君がやったのはつまりそういう事なのよ? 自分に気があるのかなって彼女が思ってしまうのも当然よね?』
「お、おい馬鹿ネ……ユイシス」
「にゃい……?」
「その、なんだ……急に耳触ったりして悪かった。今回は完全に俺が悪かったよ。別に変な意味じゃないんだ。ただ気になって」
「……あっれれー? ごしゅじんってば私の事がそんなに気になったんですかぁ? それならそうと言ってくれればいくらでも触ってくれていいのに~♪」
さっきまでのもじもじ感が嘘のようにニヤリとしたアホ面で俺をからかってきやがった。
なので腹いせに本当にもう一度頭を引き寄せて耳をもきゅもきゅしてやった。
「えっ、ちょっ!? 冗談ですってごしゅじん! ごしゅ……ふにゃっ、にゃぁぁぁ……ら、らめぇ……」
「これに懲りたらイキり散らして俺をからかったりするのはもうやめ……ろ、よ?」
馬鹿ネコが顔を真っ赤にして涙目で、俺を上目遣いに見つめながら口の橋から若干の涎を垂らしている。
俺はその時になってやっと、完全に選択を誤ったと気が付いた。
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