30 / 476
第27話:混ぜるな危険。
しおりを挟む「おいおっちゃん! もっとスピード出ねぇのか!?」
「これが限界ヨ! 空から来るなんて卑怯ネ!!」
シャンティアを出た俺達は、今絶賛魔物の大群に追いかけられ中である。
「畜生め、ウェアウルフの大群の次はイビルイーグルの群れとかどうなってんだ!?」
『おかしいわね。あいつら普段群れて行動するような魔物じゃないわよ?』
そりゃそうだろうぜ俺だってあんな大群のイビルイーグルなんて初めて見たし群れるなんて話は聞いた事が無い。
奴等は基本単体行動、あるいはツガイと共に行動すると言われている。
だからこの状況は明らかにおかしい。
「まぱまぱー鳥さんいっぱいだよ!」
「こらイリス! 顔出すんじゃない。危ないだろ!?」
「ごめんなさーい」
イリスがしょんぼりしている。強く言い過ぎたかな……。
「でもごしゅじん、あの大群いったいどうするんです? 空じゃ攻撃も届かないでしょうし……」
馬鹿ネコまで心なしか元気が無い。
「あいつらの出す変な音波が私にはキツイですぅ……」
よく見たら頭の上に獣耳が出ててぴこぴこと動いている。
普通の人間に比べて亜人の方が感度がいいというか動物の特徴も踏まえているから、俺には聞こえない音を拾ってしまっているのだろう。
「その耳見るとお前が亜人なんだなって実感するよ」
「うにゃぁ……恥ずかしいですあまりじろじろ見ないでくださいぃぃ!」
馬鹿ネコはネコミミを抑えるように手で覆って頭を下げた。
こいつにも羞恥心っていう概念があったのか……。
『さぁこの状況で君はどうするのかしらね? わくわく♪』
こいつ……ママドラの力を借りるしかないの分かってて言ってやがるな……。
まるでお前が引き寄せてるんじゃねーだろうな。
『私にそんな器用な真似ができる訳ないでしょ? 威圧して散らす事はできても引き寄せるなんて妙な真似は出来ないわよ』
待て、散らす事なら出来るのか?
『私の本来の姿で咆哮でもすりゃ一発よ♪』
……そりゃ参考にならない意見ありがとよ。
竜化せずにあいつらを倒すとしたら……。
遠距離可能な職業、やはり弓士系だろうか?
『それは有る意味で正しいけれど、弓はどこから出てくるのかしら?』
うっ……。
『仮にスナイパーやガンナーのスキルを使用したとして、弓や銃なんてどこで調達するの? それでも何とかしたければ魔法で飛び道具を精製し使用するっていう職業もあるみたいだけど……』
いやいや、そんなの本末転倒だろう。スキルだけでなんとかしようって言ってんのに魔法系スキルが必要になったら結局竜化しなきゃダメじゃねぇか!
自慢じゃないが魔法の弓矢や魔法の銃なんて俺のイメージ力で作り出せる気もしないしそんな攻撃方じゃ一~二発撃ったところで俺の魔力が尽きちまう。
『ふむふむそれもそうよねー。じゃあやっぱり私の力を頼るしか無いんじゃないかしら』
クソが……。だったらいっそあいつら纏めて吹っ飛ばせるような魔法使える職業とかの方がいいんじゃねぇのか?
『あっ、頼る気になった? だったら是非オススメがあるんだけどな♪』
嬉しそうだなぁおい……。結局こうなっちまうのか……。自分の力だけじゃ何もできねぇ自分が歯がゆすぎる。
チラっとステータスを見ると、俺の現在のレベルは28まで上がっていた。
とは言えあれだけの数のウェアウルフと対人戦、そして病魔を倒してもまだこれくらいか。
ウェアウルフ自体は単体だと大した事ない奴等だから仕方ない。
確かイビルイーグルはそれなりに厄介な相手のはずだから確実に30までは上がるだろう。
自分のレベルが上がると考えれば……まぁ、妥協できなくもないか?
「お、オニーサン! 追いつかれるヨ!!」
仕方ねぇな……ママドラ、どの記憶引っ張って来るかは任せる! 適した奴を頼むぞ!
『良し来た♪ じゃあこんなのはどうかしら?』
俺はママドラの力を借り竜化を発動させる。
相も変わらず髪から色素が抜け金色に輝き、髪の毛が急激に伸びる。
俺の毛根大丈夫なのかなぁ……。
『そんな心配は要らないから気にしない方がいいわよ? 余計な心労で禿げたら笑ってあげるわ』
うるさいわね……!
私は魔導シューター。私の人生に立ちはだかる如何なる相手もこの一撃で灰にしてあげるわ!
馬車の窓から身を乗り出して枠を掴み、遠心力を使って逆上がりの要領で屋根の上へ飛び乗る。
「このままスピードを維持して出来るだけ左右にブレないようにお願いね!」
「オニ……オネーサン了解ヨ!」
さて、じゃあいっちょやってやりましょうか!
「私の力は一対多数に特化している……私にちょっかい出した事覚悟しなさいよね!」
って言ってもこいつらには言葉通じないわね。昔は戦場で恐れられたものだけれど……。
私に恐れおののく人々の顔が見れないのは
ちょっと残念だわ。
……ま、どっちにしても纏めてぶち殺すのは大っ好きだからいーけどね♪
私は両腕を大きく広げ、意識を集中。
視界が青く染まりフィルターがかかったようになる。
そして、大空に広がる無数のイビルイーグル、その全てに白い十字マークが固定されていく。
……数にして百二十二……このくらいなら余裕ね。
大きく広げた両腕それぞれにずしりと確かな重量を感じる。
私の力は頭にイメージした兵器を具現化して魔法で再現する事。
具体的な構造なんてどうだっていい。私のイメージした通りの性能、威力を発揮する。
要はイメージが全てなのだ。
その為には実物を知っている必要がある。
『だからついでに別の世界の科学者の記憶も一緒にプレゼントよ♪』
……他者同士の記憶が頭の中でごちゃごちゃになって気持ち悪い感覚はあるけれど……。
「ヒヒッ! 吾輩の作り出した追尾型エーテルエアッドの威力を思い知るがいいのだァッ!! ヒャアッハァ!!」
吾輩の作り出せし兵器をまさか魔導エネルギーその物で構築する事が可能とはなんという未知の能力ッ!! 素晴らしいッ!!
私の力でその詳細な力を全て出力し、ターゲッティングした敵を全て撃ち滅ぼす!
「「ファイアーッ!!」」
両腕それぞれで抱えた四角い箱からエーテル……要するに魔力による砲弾を無数に発射。
それらが白い軌跡を描いて一斉に空へ向かい、クソ野郎共へまっしぐら。
危機を感じて回避しようとしてももう無駄だ。吾輩のエアッドによる追尾能力、そして私のターゲッティングからはどうやっても逃げられない……!
ファイア! ファイアファイアファイア!!
轟音を響かせ青空をエーテル爆発によるエメラルドグリーンの花火が埋め尽くす。
「あぁ……大量虐殺って最高……! イーッヒヒヒッ吾ァァ輩のォォ兵器はァァァ世ェェ界一ィィィィ!!」
『混ぜるな危険……か、覚えておくわ』
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。
真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆
【あらすじ】
どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。
神様は言った。
「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」
現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。
神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。
それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。
あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。
そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。
そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。
ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。
この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。
さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。
そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。
チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。
しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。
もちろん、攻略スキルを使って。
もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。
下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。
これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。
【他サイトでの掲載状況】
本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強
こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」
騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。
この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。
ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。
これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。
だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。
僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。
「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」
「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」
そうして追放された僕であったが――
自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。
その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。
一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。
「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」
これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる