★完結!★【転生はもう結構です!】崖から落とされ死んだ俺は生き返って復讐を誓うけど困ってるドラゴン助けたら女になって娘が出来ました。

monaka

文字の大きさ
上 下
25 / 476

第22話:記憶の混濁。

しおりを挟む
 
 病気じゃないならなんだってんだ……?
 ただの栄養失調とかそういうんだったら俺にはどうにもできないだろうよ。

『これはなかなか珍しい奴に憑りつかれてるわね。病魔、って言えば分かるかしら?』

 病魔。それはこの世界では病気などとは違う意味を持つ。

 この子が病魔に憑りつかれてる?

「ちょっと妹さんを診させてもらうぞ」

 俺は医者でもなんでもないのに、こんな状況から助けてくれたってだけで信頼して瀕死の妹をなんとかしてもらおうとするなんて……平常時ならどうかしてるとしか思えないが、それだけ藁にもすがりたい状態なのかもしれない。

「……あぁ、確かに大分弱ってるな」

「ど、どうでしょうか……」

「この子はいつからこんな状態なんだ?」

 姉の方に確認を取ると、どうやらここに掴まる少し前から具合が悪くなり、医者へ連れて行こうとした所でさらわれたらしい。

 上の奴等も無理矢理命令されてたにしてもタイミングってもんを考えてやれよな……。
 と言っても普通の医者にどうにか出来るもんじゃないだろうが……。

 病魔というのは……どういう言葉が適切だろうか。形を持っていてとても質の悪いばい菌みたいなものだ。
 魔物とはちょっと違う、もっと原始的な、それでいて憑りつかれると高レベルの神官にでも頼み込まない限り助かる手立てはない。

 なんとかできると思うか?
『勿論。それだけの記憶を君は所持しているからね。ただ……』

 はぁ、結局こうなるのか。仕方ない、状況が状況だからやるしかないな。ママドラ頼むよ。

『はいよっ♪』
 嬉しそうだなおい……。

 俺は全身にママドラの力を行き渡らせる。
 どちらにせよ俺の身体は度重なる暗殺者スキルの使用でかなりガタが来ていたのでこれ以上何かあれば頼るしかないと思っていたところだ。

 全身に力が漲り、髪が伸びて色素が失われていく。
 きっと俺の大事な何かもこれをやるたびに消えていくんだろうけれど考えない事にした。

「姿が……! あ、貴方はいったい……」
「またオニーサンがオネーサンになったネ!」

「俺の事はいいから。とりあえずちょっと離れててくれ。近くにいると危険だから」

 身体から離れた病魔がすぐに違う身体に憑りつく可能性は高い。
 おっちゃんと女性、あとイリスを少女から距離を取るように下がらせる。

 病魔を身体から引きずり出して、即始末する為には……。

『今回は大僧正が適任だろうね』
 おいおい神官とか大神官的なのが来るかと思ったのに大僧正?

 ……あぁ、確かに俺の過去には大僧正がいるな。魔を浄化する事にのみ特化した職業だ。
 そこに至る為には血のにじむ修行をこなさなくてはならない。
 ただ大僧正はこの世界の職業じゃねぇからなぁ。本当に大丈夫なのかどうかが疑問だ。

『能書きはいいから早くやっちゃいなさいよ』
 分かってるって。

 大僧正は主に浄化のスキルを使う事が出来る。
 呪いなんかを解くのには向いていないが、汚染された物や空間を聖なる気で浄化する事が可能だ。
 病魔なんかは穢れの塊で、体に憑りつきその肉体と複雑に絡み合い、肉体を栄養源として育つ。この少女の身体を浄化し居心地を悪くさせれば自分から這い出てくるだろう。

 俺は少女のお腹のあたりに掌を当て、真言を唱える。言葉は何でもいい。要は自分の中で気を高めそれを外部に放出する為に必要な儀式のような物だ。

 掌がポウっと青白く輝き、少女の腹部から全身へと伝わっていく。

 体内に気が充満し、少女の腹部が一度ぼこんと膨らむ。

「い、妹は大丈夫なんですか……? 一体何がおきて……」

「気が散る。静かにしてくれ」
 勝負は一瞬だ。

 浄化の気が満ちる。そして……少女の口がガパっを開き、そこからぬるりと妙な生物が這い出して来る。
 ……デカい。ここまで膨れ上がってるって事は本当に少女は限界が近かったんだろう。あと一~二日遅ければ手遅れだったかもしれない。

 口から這い出ると一瞬でそいつは飛び上がり、この場から逃げようとした。
 俺は即座に、そいつを掴み地面に叩きつける。

 こいつの厄介な所は物理攻撃はほとんど効果が無い所にある。

「……お覚悟を」

 俺は病魔の前にどすんと座り込み、大僧正の浄化スキルの中から一つを選んでもぞもぞと動く軟体動物のような病魔に叩きこむ。

「回転説法ッ!!」

 病魔の周囲に光の柱が立ち上り、ふわりと病魔の身体が浮かび上がって苦しみだした。

 俺は間髪入れずに真言を唱え続ける。
 光の柱の中で病魔は高速で回転を始め、その身体が少しずつ浄化、分解され……やがて粉々になって消滅した。

「諸行無常……」

『おーい、記憶に引っぱられてるわよ』
 ……力使ってる時はその人になり切ってるようなものだもの……犯罪者なんかの記憶を呼び出すときは気を付けないといけないかもしれないわね。

『ロリペド犯罪者の記憶は呼び出さないようにしないとね』
 そんなもんが必要になる日はこないと思いたいわ。

「い、今のはいったい……それに、貴方は……?」

「私の事はいいって。それより妹さんはかなり消耗してるけれど……うん、命に別状はない……と思うわ。あとはきちんと栄養を沢山取って休めば元気になると思うわよ」

「まぱまぱーおつかれさまーっ♪」
「イリス、危険な事に巻き込んじゃってごめんね? もう終わったから大丈夫よ」

 結局今日もママドラの力使っちゃったなぁ……。

「ねぇ、その子家まで送ってった方がいいかしら?」

「いえ、そこまでして頂く訳には……」

「ギュータファミリーはもう解散したけど、それでも一応ここはスラムでしょう? せめて東ブロックまでは送るわ。さ、おっちゃんも野良猫亭に帰りましょ」

「オネーサンやっぱり凄いネ! ワタシ感動したヨ!」

 褒められるのは悪い気がしないけれど自分だけの力ってわけじゃないから少し複雑なのよね。

『何を言っているのよ。私はもう君の一部なんだから私自体君の力の一部よ?』

 だから、それを認めたくないのよ……。




―――――――――――――――――――――――――――


ややこしいですが流れとしては
通常ミナト→記憶による能力行使→記憶により性格がやや変わる→ママドラモード→女性化→記憶に引っ張られがち→ママドラモード終了→しばらく女性のまま→一時的に中身も女性に寄ってしまう→およそ一日程度で身体が元に戻る。

ミナトの中でこんな感じの事が起きています。ちなみに、どの段階で中身が女性っぽくなるかについては引き出した記憶の主の性別にもよります。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

処理中です...