1 / 1
1話 ドッペルゲンガー
しおりを挟む
そこには、真っ暗な夜空に、青く光る月がぽつんと浮いていた。
聞いたことがある、どこか懐かしい声で
その人は言う。
「青の月には長男を」
その声に俺はゾッとして、サーっと
血の気が引く感覚がする。
なんでだ?
青く光っていた月は赤く光り、また、
同じ声が夜空に響く。
「赤の月には長女を、
この布に収めたまえ─」
「やめて、いたいよ
なんで庵じゃないんだよ
おれとおなじ─」
「はっ! 」
最後、俺の名前が呼ばれた?
なんなんだ今の夢は…。
目が覚めた俺の体には、ベッショリ汗をかいていて、涙も出ている。息切れもすごい。
時計を見ると、まだ4時だ。
服に汗がついていて、気持ち悪いから
1階の浴室で、シャワーを浴びることにした。
服を脱ぎ、鏡を見ると腕には黒の丸い刺青?のようなものがあった。
不思議に思ったけど家族は寝てるし、起こして言う訳にも行かないなと思ったので、そのままシャワーを浴びる。
これが朝シャン、ってやつか。
なんだか新鮮な気持ちだな。
さっきの夢はなんだったんだ。
いや、考えたらダメだ。
考えてはいけない、気がする。
俺は必死にその夢から目を逸らした。
勉強やら運動やら、色んな事をしていたら、もう6時になっていた。
「庵くん?今日は早いね。おはよう」
「おはようございます」
俺のお母さん…裕香理さんが2階から起きてきて、目を丸くして言った。
正式にはお義母さんだけど。
しばらくして、父さんが2階から降りてきて、裕香理さんが作った朝食を3人で食べる。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
食べ終わって、学校に行く。
意外と時間は早くすぎるもんだな。
自転車を漕いで、学校に向かっていく。
「庵ー! 」
後ろから声がする。
西河だ。西河はオカルト好きで、ずっと
オカルトの話をしてくる。
「んだよ」
「ドッペルゲンガーって知ってるか? 」
またきたよ。
「知らねーよ」
「なんか、自分と同じ顔してて、会ったら死ぬんだって!怖くね? 」
そのオカルト話をする時に、毎回最後に
「怖くね?」って言ってくるのをやめて欲しい。
「うそくさ…。そんなことあるわけねぇだろ! 」
「いや、分からんよ~? 」
「はいはい。もう学校ついたぞ」
高校の校門をくぐって、学校の駐輪場に自転車を置いて、学校の中に入る。
2年3組の看板がついている教室に入って、
勉強をする。
朝のホームルームが終わって、しばらくしてから1限目が始まる。
学校が終わって、茜色の空に照らされながら
家に帰る。
俺の”お母さん”って、どんな人なんだろう…
ふと、たまに思う。
なんで、俺にはお母さんが居ないんだろう。
俺を産んだ母親が。
でも、そんなこと考えてもどうしようもない。
そんなこと考えて、お母さんが来るとでも?
そんな事ないだろ。
俺は、止まっていた足を再び前に進めた。
家に着いた。
「おかえり」
キッチンにいる裕香理さんの声が玄関まで響く。
「ただいま」
俺が返事をして、靴を脱いで自分の部屋に向かう。
部屋で宿題をしていて、ふと窓を見ると、
もう月が上がっている。
月を見てまた思い出してしまった。
「おい」
自分の部屋には、誰もいないはずなのに、
頭の中で声が響く。
「お前の体、少し借りるぞ」
「なに言って…」
あれ?なんか、ふらふらする…。
バタンと、音が鳴った。
目の前が真っ暗で、前が見えない。
そうか、俺が倒れたのか。
状況を察する。
「いててて…。ここどこ…? 」
真っ暗な場所に俺がいる。
たしかさっき、知らない奴の声が聞こえて…
「よお」
暗闇の中から”なにか”がこちらに近づいてくる。
それは俺の姿で、だけど俺がした事がないような表情をしていて、俺と同じ声をしている。
「は…お前、誰だよ」
その姿に俺は怖気付く。
「俺はお前、湖月庵だよ。これから毎日夜の時間だけ体を借りる。月が出てる間だけね。」
「お前何言ってんだよ!俺は俺だろ…!?
お前なんかに俺の体は渡さない!! 」
「…じゃあ、取り返してみなよ」
不敵な笑みを浮かべて言う。たしかに、
今俺が自分の体を操れる訳では無い。
「あ、思いついた!
じゃあ、お前に頼みがあるんだけど…」
「…なんだよ」
そいつは、何かを思いついたような顔で
俺に頼み事を言ってくる。
「1個目は、日向神社っていう神社があるんだけど、そこには特殊なお面があってね。
そこでお面を買ってくれない? 」
「なんで俺がお前のために…! 」
「いや、買って俺に付けさせてくれたら庵と同じ形になって俺がここから出れるんだ。
だから庵も夜はここにいなくても良くなるってこと!どう?」
「どうって…。お前みたいなやつに頼み事されて、従うわけないだろ! 」
「え~?じゃあ、このままでもいいわけ? 」
「…は? 」
「これからずっと、夜だけここにいてもいいの? 」
たしかに、夜、こんな所にいる訳にもいかない。
学校から帰って、することが沢山あるんだ。
「…わかったよ。じゃあ、何叶えて欲しいの? 」
そう言うと、それはとても嬉しそうな顔をして
「やったー!じゃ、俺は飯食ってくるから。ずっとお腹すいてたんだよな~…。あ、大丈夫!俺とお前は体が連携されてるから、俺が食べたものの味もするし、俺が食べたら腹も減らない」
と言って、俺と同じ姿のそいつは、また暗闇に消えていった。
今日の夜はここで過ごせって言うのかよ…。
そういえば、西河の、「ドッペルゲンガー」
って、これの事だったのか…?
続く
聞いたことがある、どこか懐かしい声で
その人は言う。
「青の月には長男を」
その声に俺はゾッとして、サーっと
血の気が引く感覚がする。
なんでだ?
青く光っていた月は赤く光り、また、
同じ声が夜空に響く。
「赤の月には長女を、
この布に収めたまえ─」
「やめて、いたいよ
なんで庵じゃないんだよ
おれとおなじ─」
「はっ! 」
最後、俺の名前が呼ばれた?
なんなんだ今の夢は…。
目が覚めた俺の体には、ベッショリ汗をかいていて、涙も出ている。息切れもすごい。
時計を見ると、まだ4時だ。
服に汗がついていて、気持ち悪いから
1階の浴室で、シャワーを浴びることにした。
服を脱ぎ、鏡を見ると腕には黒の丸い刺青?のようなものがあった。
不思議に思ったけど家族は寝てるし、起こして言う訳にも行かないなと思ったので、そのままシャワーを浴びる。
これが朝シャン、ってやつか。
なんだか新鮮な気持ちだな。
さっきの夢はなんだったんだ。
いや、考えたらダメだ。
考えてはいけない、気がする。
俺は必死にその夢から目を逸らした。
勉強やら運動やら、色んな事をしていたら、もう6時になっていた。
「庵くん?今日は早いね。おはよう」
「おはようございます」
俺のお母さん…裕香理さんが2階から起きてきて、目を丸くして言った。
正式にはお義母さんだけど。
しばらくして、父さんが2階から降りてきて、裕香理さんが作った朝食を3人で食べる。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
食べ終わって、学校に行く。
意外と時間は早くすぎるもんだな。
自転車を漕いで、学校に向かっていく。
「庵ー! 」
後ろから声がする。
西河だ。西河はオカルト好きで、ずっと
オカルトの話をしてくる。
「んだよ」
「ドッペルゲンガーって知ってるか? 」
またきたよ。
「知らねーよ」
「なんか、自分と同じ顔してて、会ったら死ぬんだって!怖くね? 」
そのオカルト話をする時に、毎回最後に
「怖くね?」って言ってくるのをやめて欲しい。
「うそくさ…。そんなことあるわけねぇだろ! 」
「いや、分からんよ~? 」
「はいはい。もう学校ついたぞ」
高校の校門をくぐって、学校の駐輪場に自転車を置いて、学校の中に入る。
2年3組の看板がついている教室に入って、
勉強をする。
朝のホームルームが終わって、しばらくしてから1限目が始まる。
学校が終わって、茜色の空に照らされながら
家に帰る。
俺の”お母さん”って、どんな人なんだろう…
ふと、たまに思う。
なんで、俺にはお母さんが居ないんだろう。
俺を産んだ母親が。
でも、そんなこと考えてもどうしようもない。
そんなこと考えて、お母さんが来るとでも?
そんな事ないだろ。
俺は、止まっていた足を再び前に進めた。
家に着いた。
「おかえり」
キッチンにいる裕香理さんの声が玄関まで響く。
「ただいま」
俺が返事をして、靴を脱いで自分の部屋に向かう。
部屋で宿題をしていて、ふと窓を見ると、
もう月が上がっている。
月を見てまた思い出してしまった。
「おい」
自分の部屋には、誰もいないはずなのに、
頭の中で声が響く。
「お前の体、少し借りるぞ」
「なに言って…」
あれ?なんか、ふらふらする…。
バタンと、音が鳴った。
目の前が真っ暗で、前が見えない。
そうか、俺が倒れたのか。
状況を察する。
「いててて…。ここどこ…? 」
真っ暗な場所に俺がいる。
たしかさっき、知らない奴の声が聞こえて…
「よお」
暗闇の中から”なにか”がこちらに近づいてくる。
それは俺の姿で、だけど俺がした事がないような表情をしていて、俺と同じ声をしている。
「は…お前、誰だよ」
その姿に俺は怖気付く。
「俺はお前、湖月庵だよ。これから毎日夜の時間だけ体を借りる。月が出てる間だけね。」
「お前何言ってんだよ!俺は俺だろ…!?
お前なんかに俺の体は渡さない!! 」
「…じゃあ、取り返してみなよ」
不敵な笑みを浮かべて言う。たしかに、
今俺が自分の体を操れる訳では無い。
「あ、思いついた!
じゃあ、お前に頼みがあるんだけど…」
「…なんだよ」
そいつは、何かを思いついたような顔で
俺に頼み事を言ってくる。
「1個目は、日向神社っていう神社があるんだけど、そこには特殊なお面があってね。
そこでお面を買ってくれない? 」
「なんで俺がお前のために…! 」
「いや、買って俺に付けさせてくれたら庵と同じ形になって俺がここから出れるんだ。
だから庵も夜はここにいなくても良くなるってこと!どう?」
「どうって…。お前みたいなやつに頼み事されて、従うわけないだろ! 」
「え~?じゃあ、このままでもいいわけ? 」
「…は? 」
「これからずっと、夜だけここにいてもいいの? 」
たしかに、夜、こんな所にいる訳にもいかない。
学校から帰って、することが沢山あるんだ。
「…わかったよ。じゃあ、何叶えて欲しいの? 」
そう言うと、それはとても嬉しそうな顔をして
「やったー!じゃ、俺は飯食ってくるから。ずっとお腹すいてたんだよな~…。あ、大丈夫!俺とお前は体が連携されてるから、俺が食べたものの味もするし、俺が食べたら腹も減らない」
と言って、俺と同じ姿のそいつは、また暗闇に消えていった。
今日の夜はここで過ごせって言うのかよ…。
そういえば、西河の、「ドッペルゲンガー」
って、これの事だったのか…?
続く
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
ガールズバンド“ミッチェリアル”
西野歌夏
キャラ文芸
ガールズバンド“ミッチェリアル”の初のワールドツアーがこれから始まろうとしている。このバンドには秘密があった。ワールドツアー準備合宿で、事件は始まった。アイドルが世界を救う戦いが始まったのだ。
バンドメンバーの16歳のミカナは、ロシア皇帝の隠し財産の相続人となったことから嫌がらせを受ける。ミカナの母国ドイツ本国から試客”くノ一”が送り込まれる。しかし、事態は思わぬ展開へ・・・・・・
「全世界の動物諸君に告ぐ。爆買いツアーの開催だ!」
武器商人、スパイ、オタクと動物たちが繰り広げるもう一つの戦線。
下っ端妃は逃げ出したい
都茉莉
キャラ文芸
新皇帝の即位、それは妃狩りの始まりーー
庶民がそれを逃れるすべなど、さっさと結婚してしまう以外なく、出遅れた少女は後宮で下っ端妃として過ごすことになる。
そんな鈍臭い妃の一人たる私は、偶然後宮から逃げ出す手がかりを発見する。その手がかりは府庫にあるらしいと知って、調べること数日。脱走用と思われる地図を発見した。
しかし、気が緩んだのか、年下の少女に見つかってしまう。そして、少女を見張るために共に過ごすことになったのだが、この少女、何か隠し事があるようで……
夜明け待ち
わかりなほ
キャラ文芸
「君の悩みを解決しよう。1匙の魔法を添えて」
『黎明堂』 それは、不思議な店主と不思議な道具たちが作り出した、不思議な雑貨店
高校生の少女・桜井かすみは、とある過去からクラスメイトとの関わりに悩んでいた
彼女は、ある雨の日にその雑貨店に足を踏み入れた。
過去に囚われ苦しむ女子高生。友達とのすれ違いに傷ついた少女。亡き妻への消えない後悔を抱く老紳士。自身の進路に悩む男子高生。そして、店主自身。
これは、『黎明堂』を取り巻く人々の、夜明けを描く物語
参考文献
①『世界魔法道具の大図鑑』
文:バッカリオ/オリヴィエーリ
訳:山崎瑞花
②『アリスの不思議なお店』
著:フレデリック・クレマン
訳:鈴村和成
③『毒と薬の蒐集譚』
著:医療系雑貨生みたて卵屋
【NL】花姫様を司る。※R-15
コウサカチヅル
キャラ文芸
神社の跡取りとして生まれた美しい青年と、その地を護る愛らしい女神の、許されざる物語。
✿✿✿✿✿
シリアスときどきギャグの現代ファンタジー短編作品です。基本的に愛が重すぎる男性主人公の視点でお話は展開してゆきます。少しでもお楽しみいただけましたら幸いです(*´ω`)💖
✿✿✿✿✿
※こちらの作品は『カクヨム』様にも投稿させていただいております。
夜紅前日譚
黒蝶
キャラ文芸
母親が亡くなってからというもの、ひたすら鍛錬に精を出してきた折原詩乃。
師匠である神宮寺義政(じんぐうじ よしまさ)から様々な知識を得て、我流で技を編み出していく。
そんなある日、神宮寺本家に見つかってしまい…?
夜紅誕生秘話、前日譚ここにあり。
※この作品は『夜紅の憲兵姫』の過去篇です。
本作品からでも楽しめる内容になっています。
路地裏猫カフェで人生相談猫キック!?
RINFAM
キャラ文芸
「な、なんだ…これ?」
闇夜で薄っすら光る真っ白な猫に誘われるようにして、高層ビルの隙間を縫いつつ歩いて行った先には、ビルとビルの隙間に出来たであろうだだっ広い空間があった。
そしてそこに建っていたのは──
「……妖怪屋敷????」
いかにも妖怪かお化けでも住んでいそうな、今にも崩れ落ちてしまいそうなボロ屋だった。
さすがに腰が引けて、逃げ腰になっていると、白い猫は一声鳴いて、そのボロ屋へ入っていってしまう。
「お…おい……待ってくれよ…ッ」
こんなおどろおどろしい場所で一人きりにされ、俺は、慌てて白い猫を追いかけた。
猫が入っていったボロ屋に近づいてよく見てみると、入口らしい場所には立て看板が立てられていて。
「は??……猫カフェ??」
この恐ろしい見た目で猫カフェって、いったいなんの冗談なんだ??絶対に若い女子は近付かんだろ??つーか、おっさんの俺だって出来ることなら近寄りたくないぞ??
心を病んだ人だけが訪れる、不思議な『猫カフェ』の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる