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第十二話
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「まず初めに、最新のVRってのは眼鏡みたいなのを目につけるんじゃ無いってのは勿論知ってるよね?」
そうなんだ。知らなかった。
「最新のVRってのは脳に電波を送って脳を刺激して夢を見てるのよ。設定さえすれば大抵の夢は見れるわ。貴方って時代遅れなの? こんな事も知らないで」
そうなんだ! 知らなかった。
ん? 時代遅れ? 私ってそうなのぉ!? 最新ニュースを確認しとくか。いつか。出来れば。
「私を時代遅れ呼ばわりしたのは置いといてあげるけど大抵って事は見れない夢も有るのよね?」
「勿論。人や動物との関わりは出来ないわよ」
物には触れられ無いって事だったよね。
「あ、そっか! だから物が当たっても痛くも無いし怪我もしないんだね」
そうそう、と創ちゃんは頷く。
「うん、だってVR見る時って丸いボールみたいな所に入って見るんだもん。それに危険性があったら出来ないし。本来だったら修学旅行の活動を低価で出来るし安全だからって決まったんだよね。だけど私が場所も変えたし本来なら栄養摂取みたいな事をされるんだけどそれもキャンセルしちゃって……。皆の修学旅行は私のせいでっ……うわぁん」
ちょっとわざとっぽい泣き方泣き出してしまった。
心を改めても根は変わら無いなぁ。(ぶりっ子って所がかな?)
「まぁまぁ、それで丸いボールにそれぞれが入ってるんでしょ? それなのに私達はどうして会話出来てるの?」
今だって。
「それぞれ別の部屋に入ってるんだけどね、同じ空間に居る事になってる人同士は会話出来る様になってるの。ほら、貴方のVRに私が登場してるって事。それはお互いに同じ事」
そう言って創ちゃんは私の手に触れようと近づいた。
「あれっ?」
すると私の手をすり抜けて通っていってしまった。
「それぞれの行動がボールの中に映し出されて体験出来てるんだぁ!」
私は驚いたがそれよりも大事な事があると思い出した。
「それでVRの世界のどこかってのはどこなの?」
「うぅ……それがね、本来ならタイマーを付けてVRから現実に戻るんだけどぉ、私達の班はタイマー設定が無いの。半永久的に、この空間から出る事が出来ないように設定されてるのぉ……」
つまりずっとVR人生って事!?
「どー言う事よ! それならゆかりちゃん達はこの無人島に居るんじゃ……!?」
「ううん。実はリタイア機能ってのを付けちゃったの」
私は首を傾げる。
「リタイア機能……?」
「私が作った機能なんだけどね、無理矢理にこのVR世界から脱出しようとした者をVR世界と現実世界の狭間に閉じ込めて置くっていう機能なの」
世界の狭間……。
「それはどうやって解除するの? 解除する方法はあるんでしょ!? こんなファンタジーの世界なら」
「う……無い事は無いけど……今すぐに解除するには外部からの接触が無いと……」
息苦しそうに彼女は言う。
「なら修学旅行から全然帰ってない事を気付いて誰かが来るかも……」
私の後ろから聞き慣れた声が聞こえてくる。
「そんな甘い考えで思い通りに行く訳無いわよ。世衣加」
「えっ?」
「ゆ、ゆかりちゃん!?」
私の目の前にはボロボロになったゆかりちゃんが。
ううん、陽太くん、蒼太くん、司くんまでもが現れた。
「皆も! どういう事、創ちゃん!? 皆は空間の狭間とかに居たんじゃ!?」
私は「どういう事よ」と創ちゃんに問い詰める。
「私も分かんない……。空間の狭間って言っても意識が無いだけで寝ている状況って言うだけだから脱出なんて出来る訳も……」
この子にも分かんないの?
『それは私が干渉したからだろうね』
何っ!?
スピーカーの様な音で放送が入る。
「無人島に放送だと!?」
蒼太くんが辺りを見渡して大声で叫ぶ。
だけど一人、ゆかりちゃんは落ち着いた様子だ。
「こ、この声……」
創ちゃんはじんわりと目に涙を浮かべて少し震えている。
するとモニターの様な画面が表示された。
モニターの中には如何にも科学者という感じの男の人が立っている。
『まずは自己紹介からかな? 私の名前は本田諭吉』
本田!? もしかしたら創ちゃんの……。
「お、お父さん!」
『創、貴方には後でお話があります』
諭吉さんの後ろから小柄な女性が登場した。
顔からしてもやっぱり創ちゃんにそっくり。
『皆さん、今回はむすめがご迷惑をおかけしました。本当にごめんなさい。創ちゃんの母の本田美幸です』
諭吉さんに美幸さん……どっちも似てる、創ちゃんに……。
「お父さん、お母さん……。私っ、私……本当にごめんなさいぃ……」
創ちゃんは大粒の涙を目に浮かべている。
「あ、あの! このVRは解除して貰えないのでしょうか?」
ゆかりちゃんが丁寧な言葉遣いで聞く。
『その事なんだが、このVRは予定されていた修学旅行の六泊七日間は外部からでも解除できないような設定になっている』
「そんな……」
と誰かが呟いた。
『君達に水分や栄養素は緊急的に補給させたんだが、後少しだけでも楽しんで欲しいと思って……』
諭吉さんが言葉を言いかけている一瞬の間に無人島が消え、私達は白と黒だけの世界が浮かんだ。
「何だ!?」
司くんがあたふたして驚いている。
『最初に予定されていた旅行よりも何ランクも上の超高級な修学旅行を準備しておいたよ』
そう言って諭吉さんが指をパチンと鳴らすと美幸さんの下にキーボードが出現してエンターキーを強く押した。
するとその瞬間……。
辺りは色とりどりの大自然に成っていた。
綺麗な緑の木、何種類も有る花だらけに成っていた。
「な、何これっ!? ……す、すごい!」
私は声が抑えきれなく成り、ジャンプしそうな程、嬉しくなって来た。
『大森林の体験を予定されていたでしょう? まぁ無人島に飽きているかも知れないけれどねぇ。ふふふふっ』
あ、やっぱり創ちゃんにそっくり! ぶりっ子なのかな?
「うわぁ、綺麗!」
ゆかりちゃんも、
「色とりどりですね!」
司くんも、
「今にも走りたい!」
陽太くんも、
「大自然だなぁ!」
蒼太くんも
「VRってこんな事にも使えるんだわぁ!」
創ちゃんも、皆楽しそう。
『少しの間だけれど楽しんでくれ給え』
『皆さんまたご家族やお友達とのご利用も楽しみにしていますわよ~!』
うん気が早いー。
するとモニターの画像は消え、私達だけの世界に成った。
「皆、色々酷い事しちゃってごめん! 殺そうとしたり……。何が起こるかも知らないで……。だ、だけど私をっ、VRを嫌いにならないで! 楽しもうねぇ~!」
一言なのに切り替え早い!
やっぱり創ちゃんらしい。
「さ、行きましょ!」
ゆかりちゃんに手を引かれ、私達は未知の世界に走り出して行く。
そうなんだ。知らなかった。
「最新のVRってのは脳に電波を送って脳を刺激して夢を見てるのよ。設定さえすれば大抵の夢は見れるわ。貴方って時代遅れなの? こんな事も知らないで」
そうなんだ! 知らなかった。
ん? 時代遅れ? 私ってそうなのぉ!? 最新ニュースを確認しとくか。いつか。出来れば。
「私を時代遅れ呼ばわりしたのは置いといてあげるけど大抵って事は見れない夢も有るのよね?」
「勿論。人や動物との関わりは出来ないわよ」
物には触れられ無いって事だったよね。
「あ、そっか! だから物が当たっても痛くも無いし怪我もしないんだね」
そうそう、と創ちゃんは頷く。
「うん、だってVR見る時って丸いボールみたいな所に入って見るんだもん。それに危険性があったら出来ないし。本来だったら修学旅行の活動を低価で出来るし安全だからって決まったんだよね。だけど私が場所も変えたし本来なら栄養摂取みたいな事をされるんだけどそれもキャンセルしちゃって……。皆の修学旅行は私のせいでっ……うわぁん」
ちょっとわざとっぽい泣き方泣き出してしまった。
心を改めても根は変わら無いなぁ。(ぶりっ子って所がかな?)
「まぁまぁ、それで丸いボールにそれぞれが入ってるんでしょ? それなのに私達はどうして会話出来てるの?」
今だって。
「それぞれ別の部屋に入ってるんだけどね、同じ空間に居る事になってる人同士は会話出来る様になってるの。ほら、貴方のVRに私が登場してるって事。それはお互いに同じ事」
そう言って創ちゃんは私の手に触れようと近づいた。
「あれっ?」
すると私の手をすり抜けて通っていってしまった。
「それぞれの行動がボールの中に映し出されて体験出来てるんだぁ!」
私は驚いたがそれよりも大事な事があると思い出した。
「それでVRの世界のどこかってのはどこなの?」
「うぅ……それがね、本来ならタイマーを付けてVRから現実に戻るんだけどぉ、私達の班はタイマー設定が無いの。半永久的に、この空間から出る事が出来ないように設定されてるのぉ……」
つまりずっとVR人生って事!?
「どー言う事よ! それならゆかりちゃん達はこの無人島に居るんじゃ……!?」
「ううん。実はリタイア機能ってのを付けちゃったの」
私は首を傾げる。
「リタイア機能……?」
「私が作った機能なんだけどね、無理矢理にこのVR世界から脱出しようとした者をVR世界と現実世界の狭間に閉じ込めて置くっていう機能なの」
世界の狭間……。
「それはどうやって解除するの? 解除する方法はあるんでしょ!? こんなファンタジーの世界なら」
「う……無い事は無いけど……今すぐに解除するには外部からの接触が無いと……」
息苦しそうに彼女は言う。
「なら修学旅行から全然帰ってない事を気付いて誰かが来るかも……」
私の後ろから聞き慣れた声が聞こえてくる。
「そんな甘い考えで思い通りに行く訳無いわよ。世衣加」
「えっ?」
「ゆ、ゆかりちゃん!?」
私の目の前にはボロボロになったゆかりちゃんが。
ううん、陽太くん、蒼太くん、司くんまでもが現れた。
「皆も! どういう事、創ちゃん!? 皆は空間の狭間とかに居たんじゃ!?」
私は「どういう事よ」と創ちゃんに問い詰める。
「私も分かんない……。空間の狭間って言っても意識が無いだけで寝ている状況って言うだけだから脱出なんて出来る訳も……」
この子にも分かんないの?
『それは私が干渉したからだろうね』
何っ!?
スピーカーの様な音で放送が入る。
「無人島に放送だと!?」
蒼太くんが辺りを見渡して大声で叫ぶ。
だけど一人、ゆかりちゃんは落ち着いた様子だ。
「こ、この声……」
創ちゃんはじんわりと目に涙を浮かべて少し震えている。
するとモニターの様な画面が表示された。
モニターの中には如何にも科学者という感じの男の人が立っている。
『まずは自己紹介からかな? 私の名前は本田諭吉』
本田!? もしかしたら創ちゃんの……。
「お、お父さん!」
『創、貴方には後でお話があります』
諭吉さんの後ろから小柄な女性が登場した。
顔からしてもやっぱり創ちゃんにそっくり。
『皆さん、今回はむすめがご迷惑をおかけしました。本当にごめんなさい。創ちゃんの母の本田美幸です』
諭吉さんに美幸さん……どっちも似てる、創ちゃんに……。
「お父さん、お母さん……。私っ、私……本当にごめんなさいぃ……」
創ちゃんは大粒の涙を目に浮かべている。
「あ、あの! このVRは解除して貰えないのでしょうか?」
ゆかりちゃんが丁寧な言葉遣いで聞く。
『その事なんだが、このVRは予定されていた修学旅行の六泊七日間は外部からでも解除できないような設定になっている』
「そんな……」
と誰かが呟いた。
『君達に水分や栄養素は緊急的に補給させたんだが、後少しだけでも楽しんで欲しいと思って……』
諭吉さんが言葉を言いかけている一瞬の間に無人島が消え、私達は白と黒だけの世界が浮かんだ。
「何だ!?」
司くんがあたふたして驚いている。
『最初に予定されていた旅行よりも何ランクも上の超高級な修学旅行を準備しておいたよ』
そう言って諭吉さんが指をパチンと鳴らすと美幸さんの下にキーボードが出現してエンターキーを強く押した。
するとその瞬間……。
辺りは色とりどりの大自然に成っていた。
綺麗な緑の木、何種類も有る花だらけに成っていた。
「な、何これっ!? ……す、すごい!」
私は声が抑えきれなく成り、ジャンプしそうな程、嬉しくなって来た。
『大森林の体験を予定されていたでしょう? まぁ無人島に飽きているかも知れないけれどねぇ。ふふふふっ』
あ、やっぱり創ちゃんにそっくり! ぶりっ子なのかな?
「うわぁ、綺麗!」
ゆかりちゃんも、
「色とりどりですね!」
司くんも、
「今にも走りたい!」
陽太くんも、
「大自然だなぁ!」
蒼太くんも
「VRってこんな事にも使えるんだわぁ!」
創ちゃんも、皆楽しそう。
『少しの間だけれど楽しんでくれ給え』
『皆さんまたご家族やお友達とのご利用も楽しみにしていますわよ~!』
うん気が早いー。
するとモニターの画像は消え、私達だけの世界に成った。
「皆、色々酷い事しちゃってごめん! 殺そうとしたり……。何が起こるかも知らないで……。だ、だけど私をっ、VRを嫌いにならないで! 楽しもうねぇ~!」
一言なのに切り替え早い!
やっぱり創ちゃんらしい。
「さ、行きましょ!」
ゆかりちゃんに手を引かれ、私達は未知の世界に走り出して行く。
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ですが、文章の構成は、まだまだ経験を積んで行かれる方が良いです。
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第1回きずな児童書大賞は投票しちゃいました!
ありがとうございます!
短編ですが、12話に丁度よくまとめられており、読みやすかったです。
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これからも連載、頑張って下さい!
ご感想ありがとうございます!
12話にするとき、話数をすごく迷ったので、読みやすいとの意見、嬉しいです。
世衣加ちゃんの推理やキャラクターの名前等の感想もありがとうございます。
キャラクターの名前はとても個性的な名前と言えば聞こえは良いけれど、変な名前のことか多かったですよね?
そんな中、優しく見守って下さる皆様の感想、励みになります。
ぜひ、第1回きずな児童書大賞にもエントリーしておりますので、投票お願いします。
他の作品も是非見て頂けたら光栄です。