6 / 12
第六話
しおりを挟む
「こんな時、ゆかりちゃんが居たら……」
私は悲しみの声を呟く。
ゆかりちゃん、どこに行っちゃったんだろう……。
いいや、ゆかりちゃんなら絶対にこんな時にでも諦めない!
何か作戦とか方針……。
……あっ! 私、気付いた……。
「皆、聞いてくれる」
私は思いっ切り手を挙げて言う。
「ゆかりちゃんが言っていた通り、この島はおかしいよね。だって海水も飲めるし、きのみだって食べられる。それって本当? 私は有り得ないと思う。だってそんな島、現実では見たことも聞いたことも無いでしょ?」
それがどうしたんだよと言いたげな蒼太くんの視線を振り切って私は続ける。
「それで私、思ったの。『この島って実在するの?』って」
皆の視線は私に釘付けだ。
「そんな馬鹿なって思ったよね? だけど他にどう考える?」
それは……と陽太くんは口元に手を近づける。
「この島が実在しないと考え、これは夢では無いと思えば……」
夢という言葉を聞くと創ちゃんは頬を掴んで「痛いぃ……」と呟く。
「餓死の危険性がある」
自称、私の綺麗な声が皆の耳に響き渡っただろう。
「餓死? それはどういう意味かな?」
司くんはいつもの手を挙げて首を傾げる行為をする。
「この島が本当に存在しているとしたらお腹だって溜まる。だけどここではどう?」
「え? 私、お腹いっぱいになってた気がするよぉ!」
嘘でしょ~! と創ちゃんは立ち上がる。
「でもそのお腹いっぱいって本当なのかな? 人ってのは満腹中枢が刺激されてお腹いっぱいになったと感じるらしいよね。だけど私達の場合は、食べたと思っているからお腹いっぱいだと思った」
「食べたと思った? どういう事ぉ? 満腹中枢が刺激されてお腹がいっぱいになるのだって同じでしょ~?」
ちょっといつもより真剣風だ。
「いや、満腹中枢は噛む事によって刺激されてるはず。だけど私達は食べていなかった。と、思う。食べ物を口に含んで噛んでいるフリをしてるだけでは? って思うのよ」
「噛んでるフリしてるだけっていうのか!? 皆実際に食べ物、触れてただろ。それに見てたしっ……」
「まあ普通に考えたらそうだよね。だけどさ、もし食べ物を口に含んでいるフリをしていただけだと考えたら私達は今日、何も食べてないよね。これだけ動き回って何も飲み食い出来ないってのは随分とマズい。人は三日飲まず、七日食わずだったら死ぬってよく聞くけど私達の場合は全く水分補給出来ないからあと二日で死んでもおかしくないのよ」
「なるほど、確かにもしもの事を考えたら危険だね。方針はどうするつもりだい?」
司くんを見て私は言う。
「うん、方針はね、脱出方法の考案と行動が良いと思う。もしあと二日で死んでしまうと考えたら脱出してしまった方が寝泊まりする場所を確保する事よりも大事だよね。脱出できるかも考えないと。それにこの島の不思議な点を利用する考え」
この島の不思議な点? と創ちゃんは謎めいた顔をする。
「そう、あれを見て」と、私は空を指す。
「空?」と皆、上を見る。
「ここでは全然夜にならないと思わなかった? 夏だと言っても流石に夕日の時間が長すぎる。異常だよね~。だからね、この島ってずっと夜にならないと考えで脱出計画を立てたら良いんじゃ無いんかなって」
「なるほどっ」と陽太くんは手をポンと打つ。
「もしかしてこの中で一番賢いのってゆかりちゃんじゃなくて世衣加ちゃんだった?」とこっそり呟く創ちゃんの声がする。
いやいや~、それ程でもぉ。
私、意外と耳良いんだよね!
「早速脱出方法を考えようか」
司くんの仕切りでまた話が進んでいく。
「脱出方法って言ってもぉ、この島って広い海のどこかにあるってことでしょ~?」
うんと私は頷く。
「ならぁ、むやみにどこかの陸にたどり着く事を祈って泳いで行くのって無理じゃない? そもそも私、泳げないし……」
後半に成るに連れて、ブツブツと言う。
まぁ私も水泳、得意では無いんだけどっ……。
「じゃあどうやって脱出するんだ?」
う~ん、と皆同時に唸る。
「そうだわぁっ」
創ちゃんがポンっと言いそうな感じに手を打つ。
「もし世衣加ちゃんの話が本当ならぁ、脱出する所があって良いんじゃない? ほらぁ、よくファンタジー小説とかでさぁ、あるじゃない? ピッカピカに光った扉があってぇ~」
あ、創ちゃんがファンタジーに没頭し始めた。創ちゃんなだけに。
「ファンタジーにもハイファンタジーってのとローファンタジーってのがあってぇ、この場合だとぉ~。ローの方なのかなぁ~?」
皆頭を抱え始めた。
「創ちゃん? お~い、創ちゃん~!」
私は創ちゃんの目の前で手を何回も振って彼女を現実に及び戻す。
「あれぇ? あ、私、ファンタジー没頭モードになってたぁ」
没頭モード……。
確か本気モードもあったよね。
この人何モードあるんだろう。
人格的な感じなのかな……?
「……まぁ、ここが本当に存在していないのであれば、その様な考えがあるだろうね」
「ホントにピカピカのドアが出てくるってか?」
司くん達は創ちゃんの考え方をそれなりに考慮してあげてる風を装ってる様だ。
「蒼太くんはどう思う?」
私はずっと難しい顔をしている蒼太くんに聞いてみる。
「俺はドアなんかが出てくるとかより泳いだ方が全然いいと思う! その方が現実的だろ!」
うーん、考え方は色々だなぁ。
まあ現実的に考えたら泳ぐという結論に至るのか?
何かもっと違う考え、無いのかなぁ~?
私的には泳ぎたくない……。
「そうだ、SOSよ!」
私は頭を捻って考え出した結果を皆に伝える。
「SOSをここから出したとしたら誰かが気付いてくれるかも知れないけどぉ。この世界からSOSを発信して通じるのかが問題だわぁ。それに通ってくれる人が居るとしても二日以内にって事は難しいと思うんだけどなぁ」
私に続けて創ちゃんが言う。
「でもこの中では一番現実的な考えではあると思うよぉ。ファンタジーが大好きな私でもぉ、ピッカピカのドアは……有り得ないかなぁ。それに泳ぐなんて考えよりも全然良いと思うわぁ! 泳ぐなんて絶対嫌! 無理! それくらいなら死んだほうがマシぃ……」
無理と嫌を物凄く強調している。
それに死と比較するなんて……。
「じゃあSOSの準備を、と言いたいのだけれど正直に言って眠いから早く睡眠時間を……」
司くんはそう言って目を擦る。
私は悲しみの声を呟く。
ゆかりちゃん、どこに行っちゃったんだろう……。
いいや、ゆかりちゃんなら絶対にこんな時にでも諦めない!
何か作戦とか方針……。
……あっ! 私、気付いた……。
「皆、聞いてくれる」
私は思いっ切り手を挙げて言う。
「ゆかりちゃんが言っていた通り、この島はおかしいよね。だって海水も飲めるし、きのみだって食べられる。それって本当? 私は有り得ないと思う。だってそんな島、現実では見たことも聞いたことも無いでしょ?」
それがどうしたんだよと言いたげな蒼太くんの視線を振り切って私は続ける。
「それで私、思ったの。『この島って実在するの?』って」
皆の視線は私に釘付けだ。
「そんな馬鹿なって思ったよね? だけど他にどう考える?」
それは……と陽太くんは口元に手を近づける。
「この島が実在しないと考え、これは夢では無いと思えば……」
夢という言葉を聞くと創ちゃんは頬を掴んで「痛いぃ……」と呟く。
「餓死の危険性がある」
自称、私の綺麗な声が皆の耳に響き渡っただろう。
「餓死? それはどういう意味かな?」
司くんはいつもの手を挙げて首を傾げる行為をする。
「この島が本当に存在しているとしたらお腹だって溜まる。だけどここではどう?」
「え? 私、お腹いっぱいになってた気がするよぉ!」
嘘でしょ~! と創ちゃんは立ち上がる。
「でもそのお腹いっぱいって本当なのかな? 人ってのは満腹中枢が刺激されてお腹いっぱいになったと感じるらしいよね。だけど私達の場合は、食べたと思っているからお腹いっぱいだと思った」
「食べたと思った? どういう事ぉ? 満腹中枢が刺激されてお腹がいっぱいになるのだって同じでしょ~?」
ちょっといつもより真剣風だ。
「いや、満腹中枢は噛む事によって刺激されてるはず。だけど私達は食べていなかった。と、思う。食べ物を口に含んで噛んでいるフリをしてるだけでは? って思うのよ」
「噛んでるフリしてるだけっていうのか!? 皆実際に食べ物、触れてただろ。それに見てたしっ……」
「まあ普通に考えたらそうだよね。だけどさ、もし食べ物を口に含んでいるフリをしていただけだと考えたら私達は今日、何も食べてないよね。これだけ動き回って何も飲み食い出来ないってのは随分とマズい。人は三日飲まず、七日食わずだったら死ぬってよく聞くけど私達の場合は全く水分補給出来ないからあと二日で死んでもおかしくないのよ」
「なるほど、確かにもしもの事を考えたら危険だね。方針はどうするつもりだい?」
司くんを見て私は言う。
「うん、方針はね、脱出方法の考案と行動が良いと思う。もしあと二日で死んでしまうと考えたら脱出してしまった方が寝泊まりする場所を確保する事よりも大事だよね。脱出できるかも考えないと。それにこの島の不思議な点を利用する考え」
この島の不思議な点? と創ちゃんは謎めいた顔をする。
「そう、あれを見て」と、私は空を指す。
「空?」と皆、上を見る。
「ここでは全然夜にならないと思わなかった? 夏だと言っても流石に夕日の時間が長すぎる。異常だよね~。だからね、この島ってずっと夜にならないと考えで脱出計画を立てたら良いんじゃ無いんかなって」
「なるほどっ」と陽太くんは手をポンと打つ。
「もしかしてこの中で一番賢いのってゆかりちゃんじゃなくて世衣加ちゃんだった?」とこっそり呟く創ちゃんの声がする。
いやいや~、それ程でもぉ。
私、意外と耳良いんだよね!
「早速脱出方法を考えようか」
司くんの仕切りでまた話が進んでいく。
「脱出方法って言ってもぉ、この島って広い海のどこかにあるってことでしょ~?」
うんと私は頷く。
「ならぁ、むやみにどこかの陸にたどり着く事を祈って泳いで行くのって無理じゃない? そもそも私、泳げないし……」
後半に成るに連れて、ブツブツと言う。
まぁ私も水泳、得意では無いんだけどっ……。
「じゃあどうやって脱出するんだ?」
う~ん、と皆同時に唸る。
「そうだわぁっ」
創ちゃんがポンっと言いそうな感じに手を打つ。
「もし世衣加ちゃんの話が本当ならぁ、脱出する所があって良いんじゃない? ほらぁ、よくファンタジー小説とかでさぁ、あるじゃない? ピッカピカに光った扉があってぇ~」
あ、創ちゃんがファンタジーに没頭し始めた。創ちゃんなだけに。
「ファンタジーにもハイファンタジーってのとローファンタジーってのがあってぇ、この場合だとぉ~。ローの方なのかなぁ~?」
皆頭を抱え始めた。
「創ちゃん? お~い、創ちゃん~!」
私は創ちゃんの目の前で手を何回も振って彼女を現実に及び戻す。
「あれぇ? あ、私、ファンタジー没頭モードになってたぁ」
没頭モード……。
確か本気モードもあったよね。
この人何モードあるんだろう。
人格的な感じなのかな……?
「……まぁ、ここが本当に存在していないのであれば、その様な考えがあるだろうね」
「ホントにピカピカのドアが出てくるってか?」
司くん達は創ちゃんの考え方をそれなりに考慮してあげてる風を装ってる様だ。
「蒼太くんはどう思う?」
私はずっと難しい顔をしている蒼太くんに聞いてみる。
「俺はドアなんかが出てくるとかより泳いだ方が全然いいと思う! その方が現実的だろ!」
うーん、考え方は色々だなぁ。
まあ現実的に考えたら泳ぐという結論に至るのか?
何かもっと違う考え、無いのかなぁ~?
私的には泳ぎたくない……。
「そうだ、SOSよ!」
私は頭を捻って考え出した結果を皆に伝える。
「SOSをここから出したとしたら誰かが気付いてくれるかも知れないけどぉ。この世界からSOSを発信して通じるのかが問題だわぁ。それに通ってくれる人が居るとしても二日以内にって事は難しいと思うんだけどなぁ」
私に続けて創ちゃんが言う。
「でもこの中では一番現実的な考えではあると思うよぉ。ファンタジーが大好きな私でもぉ、ピッカピカのドアは……有り得ないかなぁ。それに泳ぐなんて考えよりも全然良いと思うわぁ! 泳ぐなんて絶対嫌! 無理! それくらいなら死んだほうがマシぃ……」
無理と嫌を物凄く強調している。
それに死と比較するなんて……。
「じゃあSOSの準備を、と言いたいのだけれど正直に言って眠いから早く睡眠時間を……」
司くんはそう言って目を擦る。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
9
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる