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第三話
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「あぁ、それは僕も思った」
司くんがゆかりちゃんの言葉の途中に入って納得している。
「ここの海水って除菌や殺菌をしないでも飲めているのよ」
ゆかりちゃんがそう言ったけど私にはよく意味が分からない。
「確かにそうだわぁ」
創ちゃんは驚いている。
「どこか不自然だと思ってたのよぉ。やっぱりこの事だったんだわぁ」
私はゆかりちゃんに問う。
「ゆかりちゃん、私、海水が飲めることの何がおかしいのか分からないんだけど……」
私がそう言うとゆかりちゃんは聞いてくれる。
「分かった。世衣加のために説明するわね」
ありがとうございます~。
「皆、突然だけど人の体内の塩分って何%だと思う?」
体内の塩分が何%か? 全然分かんないやぁ。
優秀な皆もうーんと唸っている。
ゆかりちゃんは分からないのね。やれやれ、と言うように顔を振って言葉を始めた。
「答えを発表します! 皆悩んでいる、人の体内の塩分濃度は約0.9%。一方で海水の塩分濃度は約3.5%。つまり、人の体内にあるべき塩分濃度の約四倍。本来、人間の体は、塩分を摂取した場合、腎臓が余計な塩分を尿として排出するから、常に一定の塩分濃度が保たれているの。だけど海水はさっきも言ったように塩分濃度が体内よりも高いから、海水を飲むと塩分濃度が上昇してしまって、塩分濃度を戻すために更に水を欲するの。そこでさらに海水を飲むとまた塩分濃度が更に上昇して水を欲し海水を飲んで……という風にループしてしまうのよ。長い説明だったけど分かったかしら?」
「うん、大体は。ありがとう!」
「つまり皆は今、海水を飲んじゃったから体の塩分濃度が高くなって水を欲しているはずだけどそうでは無いって事がおかしいって事?」
私は頬に人差し指を添えて言う。
「その通り。それに海への到着経路が漂流でもしていたのなら尚更」
漂着?
「そっかぁ~。海から流れ着いたならもう、沢山海水を飲んじゃってるもんねぇ」
創ちゃんの方を見てゆかりちゃんは頷く。
「私達がこの島に来た理由でもおかしいことは沢山。どこかから流れ着いたとしても全員の記憶が無いなんて事は無いだろうしさっき行った通り海水を大量に摂取しちゃってるだろうしね。だからと言って誰かが私達をこんな所に運んでくるってのもおかしな話。本当にこの島は意味が分からない」
うーん、考えれば考えるほど謎は深まるね……。
「この島が普通じゃ無いって事は十分分かった。本題に戻ろう」
そうだった、ゆかりちゃんのせいでとは言わないけど、この島のおかしさについての話になってたんだった。
「今後の事よね……」
ゆかりちゃんは難しそうに頭を抱える。
「ここでの難しい事はこの島が普通ならまだしも変わった島田から対策も普通の島とは変わってくる事ね」
うーん……。
「あのぉ、その件なんだけどぉ、私、考えた事があってぇ~」
何か創ちゃん、自信なさげな雰囲気だけど、意外と話し合いじゃ発言力あるのよね。
いつもくらすで話し合いする時とかも大体司くん、ゆかりちゃん、創ちゃんだもんねぇ。
「敢えてこの島の変わってる所を取り入れてぇ、対策を立てるべきだと思うのよぉ」
司くんは創ちゃんが言ったこと聞き、メガネをカチャッと上げる。
「そうよぉ。この森に生えてる食べ物って食べられたじゃない? だからどんな食べ物でも食べる、とかぁ。私が保証するわぁ」
「保証するって言ったってっ……。本田さん、あまりに無防備過ぎるわ。証拠はあるの? もしもの事があったら、責任なんて取れやしないでしょ?」
「まぁ~、確かにそうだけどぉ~」
創ちゃんは面倒くさそうに言う。
まだまだ口論は続くのか……。
確かにどちらの言っていることも納得できる。
だけどゆかりちゃん、厳しすぎる気もして来る。
創ちゃんはふわふわしてるけどどこかオーラを感じる所もあるし。
二人共仲良くしてよぉ。
「まぁまぁ、二人共」
と、司くんが宥めてやっと二人の言い合いは落ち着いた。
いやぁ、次期生徒会長候補の力を感じたよ。
「結局本題について全然話し合いが出来ていない。まず今一番にするべき事は何だと思う?」
「俺は拠点探しするべきだと思うぞ!」
久し振りにずっと黙っていた蒼太くんが言う。
「寝たりするにも拠点は大事だし行動の中心地としても活用していけると思うんだ!」
うん、そうだね……。
少ししか行動してないのに全身が疲れてる感じがする。
「そうだね。そろそろ日が暮れそうだ。拠点を作っておいたら行動が楽になりそうだ。さっきまでもずっと皆が集まらないで困っていたからね」
誰かさんのせいで。と言うような目つきに私達はグキッとする。
「確かになるべく早めに行動したほうが良いと思うな」
こちらもお久し振りの陽太くん。
「あのぉ、寝る所とかの話だけどぉ、流石にこんな海辺に寝るのは私嫌ですぅ。以上です~」
謎の圧に押し負けてしまいそうだ。
「それなら良い場所があるぞ!」
蒼太くんが言う。
そう言えば蒼太くん、私達と合うまでは森の探索をしてたんだよね。
「ついて来てくれ」
蒼太くんは向こうをそそくさと向いた。
「分かったわ。だけど皆で行動するよりも二グループに分かれて行動したほうが効率的だと思うから男子達が蒼太について行って。私達は準備をするから」
男子たちを追っ払おうとするゆかりちゃん。
「別行動ってことぉ? この少人数なのに別行動したら危険じゃないかしらぁ?」
創ちゃんはどうしても男子とは離れたくないようだね。
「そんな事言ってる暇無いだろ! 司と陽太がついてくりゃ間に合うぞ!」
蒼太くんは大雑把な考えだね。
「うぅ、蒼太くんがそう言うなら……」
そう言って創ちゃんは意見を取り下げた。
これでゆかりちゃんの計画通り、完全なる女子だけの空間を作り上げたのだった。
司くんがゆかりちゃんの言葉の途中に入って納得している。
「ここの海水って除菌や殺菌をしないでも飲めているのよ」
ゆかりちゃんがそう言ったけど私にはよく意味が分からない。
「確かにそうだわぁ」
創ちゃんは驚いている。
「どこか不自然だと思ってたのよぉ。やっぱりこの事だったんだわぁ」
私はゆかりちゃんに問う。
「ゆかりちゃん、私、海水が飲めることの何がおかしいのか分からないんだけど……」
私がそう言うとゆかりちゃんは聞いてくれる。
「分かった。世衣加のために説明するわね」
ありがとうございます~。
「皆、突然だけど人の体内の塩分って何%だと思う?」
体内の塩分が何%か? 全然分かんないやぁ。
優秀な皆もうーんと唸っている。
ゆかりちゃんは分からないのね。やれやれ、と言うように顔を振って言葉を始めた。
「答えを発表します! 皆悩んでいる、人の体内の塩分濃度は約0.9%。一方で海水の塩分濃度は約3.5%。つまり、人の体内にあるべき塩分濃度の約四倍。本来、人間の体は、塩分を摂取した場合、腎臓が余計な塩分を尿として排出するから、常に一定の塩分濃度が保たれているの。だけど海水はさっきも言ったように塩分濃度が体内よりも高いから、海水を飲むと塩分濃度が上昇してしまって、塩分濃度を戻すために更に水を欲するの。そこでさらに海水を飲むとまた塩分濃度が更に上昇して水を欲し海水を飲んで……という風にループしてしまうのよ。長い説明だったけど分かったかしら?」
「うん、大体は。ありがとう!」
「つまり皆は今、海水を飲んじゃったから体の塩分濃度が高くなって水を欲しているはずだけどそうでは無いって事がおかしいって事?」
私は頬に人差し指を添えて言う。
「その通り。それに海への到着経路が漂流でもしていたのなら尚更」
漂着?
「そっかぁ~。海から流れ着いたならもう、沢山海水を飲んじゃってるもんねぇ」
創ちゃんの方を見てゆかりちゃんは頷く。
「私達がこの島に来た理由でもおかしいことは沢山。どこかから流れ着いたとしても全員の記憶が無いなんて事は無いだろうしさっき行った通り海水を大量に摂取しちゃってるだろうしね。だからと言って誰かが私達をこんな所に運んでくるってのもおかしな話。本当にこの島は意味が分からない」
うーん、考えれば考えるほど謎は深まるね……。
「この島が普通じゃ無いって事は十分分かった。本題に戻ろう」
そうだった、ゆかりちゃんのせいでとは言わないけど、この島のおかしさについての話になってたんだった。
「今後の事よね……」
ゆかりちゃんは難しそうに頭を抱える。
「ここでの難しい事はこの島が普通ならまだしも変わった島田から対策も普通の島とは変わってくる事ね」
うーん……。
「あのぉ、その件なんだけどぉ、私、考えた事があってぇ~」
何か創ちゃん、自信なさげな雰囲気だけど、意外と話し合いじゃ発言力あるのよね。
いつもくらすで話し合いする時とかも大体司くん、ゆかりちゃん、創ちゃんだもんねぇ。
「敢えてこの島の変わってる所を取り入れてぇ、対策を立てるべきだと思うのよぉ」
司くんは創ちゃんが言ったこと聞き、メガネをカチャッと上げる。
「そうよぉ。この森に生えてる食べ物って食べられたじゃない? だからどんな食べ物でも食べる、とかぁ。私が保証するわぁ」
「保証するって言ったってっ……。本田さん、あまりに無防備過ぎるわ。証拠はあるの? もしもの事があったら、責任なんて取れやしないでしょ?」
「まぁ~、確かにそうだけどぉ~」
創ちゃんは面倒くさそうに言う。
まだまだ口論は続くのか……。
確かにどちらの言っていることも納得できる。
だけどゆかりちゃん、厳しすぎる気もして来る。
創ちゃんはふわふわしてるけどどこかオーラを感じる所もあるし。
二人共仲良くしてよぉ。
「まぁまぁ、二人共」
と、司くんが宥めてやっと二人の言い合いは落ち着いた。
いやぁ、次期生徒会長候補の力を感じたよ。
「結局本題について全然話し合いが出来ていない。まず今一番にするべき事は何だと思う?」
「俺は拠点探しするべきだと思うぞ!」
久し振りにずっと黙っていた蒼太くんが言う。
「寝たりするにも拠点は大事だし行動の中心地としても活用していけると思うんだ!」
うん、そうだね……。
少ししか行動してないのに全身が疲れてる感じがする。
「そうだね。そろそろ日が暮れそうだ。拠点を作っておいたら行動が楽になりそうだ。さっきまでもずっと皆が集まらないで困っていたからね」
誰かさんのせいで。と言うような目つきに私達はグキッとする。
「確かになるべく早めに行動したほうが良いと思うな」
こちらもお久し振りの陽太くん。
「あのぉ、寝る所とかの話だけどぉ、流石にこんな海辺に寝るのは私嫌ですぅ。以上です~」
謎の圧に押し負けてしまいそうだ。
「それなら良い場所があるぞ!」
蒼太くんが言う。
そう言えば蒼太くん、私達と合うまでは森の探索をしてたんだよね。
「ついて来てくれ」
蒼太くんは向こうをそそくさと向いた。
「分かったわ。だけど皆で行動するよりも二グループに分かれて行動したほうが効率的だと思うから男子達が蒼太について行って。私達は準備をするから」
男子たちを追っ払おうとするゆかりちゃん。
「別行動ってことぉ? この少人数なのに別行動したら危険じゃないかしらぁ?」
創ちゃんはどうしても男子とは離れたくないようだね。
「そんな事言ってる暇無いだろ! 司と陽太がついてくりゃ間に合うぞ!」
蒼太くんは大雑把な考えだね。
「うぅ、蒼太くんがそう言うなら……」
そう言って創ちゃんは意見を取り下げた。
これでゆかりちゃんの計画通り、完全なる女子だけの空間を作り上げたのだった。
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