上 下
8 / 16

8.おウチに帰ろう。というか帰って来ました。

しおりを挟む
長い間お待たせして申し訳ありませんでした。
ようやく元気になりました。
少しずつ書き進めていきたいと思います。
遅筆な為、皆様をお待たせするとは思いますが、これからも、よろしくお願いします!


これは、クマジローを退治した直後のお話し。

温かくて少しだけ硬い腕の中に横抱きにされながら、私は1人 顔を赤らめて俯いている。
美し過ぎるお顔があまりにも近くて…。

黒髪の美丈夫は、自らを「魔王」と名乗った。
艶やかな黒髪にアメジスト色の瞳、鍛え上げられた体躯とある意味不釣り合いな程に整った美しい顔立ち。
ともすると冷たい印象を受けかねないのに、時折向けられる視線は常に優しくて何故か甘い。

クマジローに襲われた恐怖から腰が抜けてしまった私と未だ私に抱えられている娘を軽々と抱き上げ家へと向かっていた。
その際、森の中を全力疾走した為に
汚れてしまった私達に浄化魔法もかけてくれる。

人見知りなど全くしない我が娘は、
突如として現れた久しぶりに見る母親以外の人物に興味津々だ。
どうやって此処に来たのか、
此処には何をしに来たのか、
いつまでいられるのか、
他にも色々な事を聞いていた。

娘はとてもお話しが好きで 幼い時から
良く喋っていた。
話し出したら止まらない…親の私でも時折ウンザリする、まさにマシンガントークだ。

私が若干引く位の言葉の猛攻にも関わらず 魔王さんは、少しも嫌な顔をせず
時折笑顔まで向けて、
幼子のつたない質問に1つ1つ丁寧に答えてくれていた。
魔王さんは、優しくてとても良い人なのだなぁと
ほんわかした温かい気持ちになった。

程なくして家に到着した私達。
中に入り、居間にあるソファへと優しく降ろされた。
私の少し乱れた髪を流れる様な動作で
優しく撫でつけ、耳にかけてくれる。
もちろん極上の笑顔で。
とくん、と胸の奥でもう随分前にしまい込んだままになっていた感情が動き出した様な気がして、顔が熱を持つ。

道すがら、すっかり魔王さんに懐いてしまった我が子は、家に着いてからも
魔王さんにくっついたまま仕切りに話し掛けている。

森の中では、産まれたての子鹿の様だった私の脚もすでに回復していた。
恐らく真っ赤になっている顔を落ち着かせる為キッチンへ行き、精霊さん達とお茶を入れて来た。

子供を私の横に座らせて 2人で助けてくれた事に何度もお礼を述べると、
魔王さんは優しく微笑んで頷いてくれた。
「貴女達が無事で良かった。
私は、神達から2人の護衛を任された。
これからは、私が必ず貴女達親子を守ると誓おう。」
一瞬前まで向かい側に座っていたはずの魔王さんは、いつの間にか私のそばに跪いて私の手を取り、指先に軽く口付けると美しい顔にトロけるような笑みを浮かべている。

先程からずっと魔王さんから漂う甘い雰囲気…少しも隠す事なく、真摯に向けられる思い…幾ら私が鈍くてもさすがに、気付いてしまう。
魔王さんの瞳の中にある「愛しい」という感情に。
(でも、魔王様は、無自覚です。というか、ママ殿への愛は、おそらくデフォルトです。標準装備です。)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

異世界で買った奴隷がやっぱ強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付
ファンタジー
「異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!」の続編です! 前編を引き継ぐストーリーとなっておりますので、初めての方は、前編から読む事を推奨します。

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。 え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

【R18】助けてもらった虎獣人にマーキングされちゃう話

象の居る
恋愛
異世界転移したとたん、魔獣に狙われたユキを助けてくれたムキムキ虎獣人のアラン。襲われた恐怖でアランに縋り、家においてもらったあともズルズル関係している。このまま一緒にいたいけどアランはどう思ってる? セフレなのか悩みつつも関係が壊れるのが怖くて聞けない。飽きられたときのために一人暮らしの住宅事情を調べてたらアランの様子がおかしくなって……。 ベッドの上ではちょっと意地悪なのに肝心なとこはヘタレな虎獣人と、普段はハッキリ言うのに怖がりな人間がお互いの気持ちを確かめ合って結ばれる話です。 ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

処理中です...