とある管理者のため息

蒔苫 凌

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1息目 ざまぁの準備をしよう

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「嗚呼、またか…。」
そうして、私はうす暗い部屋で放たれるモニターの青白い光の中、1人ため息をつくのだった。

私は、『管理者』
この世界で生きる命を守り・教え・導く役割を『創造神様』より与えられている者だ。

私は、この役割に誇りを持ち 神の期待に応えられるよう、全身全霊をもって臨んでいる。

……臨んで、いるのだが……
最近思うところがあり、やや…いや、かなり微妙な気持ちでいるのだ。

私がいるこの世界の『創造神様』は、少し…ではなく、だいぶ変わっているお方だと思う。

神としてのお力は、凄まじく 申し分ないのだろうが、いかんせん お人柄に難有りなお方なのである。

なんと表現すれば良いのか…。
そう、異界の言葉を借りるのならば、「腐女子」…であろうか?

のちに、『創造神様』が、「失礼な!私は『貴腐人』よ‼︎」…とおっしゃられていたが……キフジン???
我が神は、いつの間に貴族になられたのだろうか?
未熟な私には、分からない事ばかりだ。

最近のお気に入りが「悪役令嬢モノ」や「婚約破棄モノ」 「ざまぁモノ」という事らしいが、
私には、全くと言っていいほど理解出来ない。

今日も今日とて、そんな『創造神様』の趣味で転生 もしくは、転移して来た「自称ヒロイン」達の動向を見守っていた。

大抵の者達は、真面目に生活をし、再び与えられた命やチャンスを 大切に・有意義に過ごそうとする。

しかし、今回その中に、やはりというか、まぁ、そうなるよねーっというか…「勘違いする馬鹿女」がいた訳だ。
そして、冒頭のため息へとつながる。

「まぁ~た、馬鹿女がいたのね?」
ブルーライトによる眼精疲労を緩和すべく、目頭を揉んでいた私の背後から、明るい声とともに、ワクワクが抑えられないというお顔で『創造神様』が現れた。

ちなみに、彼女は、床に届きそうなほどの長い純白のローブをまとっている。
そして普段は、フードを目深に被り、本人は嫌だと気にしている童顔を隠しているのだが、今は、フードを被っていなかった。

私は、がっくりとうなだれながら、「はぁ、そのようデスネ。」と答える。

また、介入するのだろうと察して、私が今まで管理して来た「自称ヒロイン」の資料をモニターに表示する。

資料は、紙にします?それともデータ送っておきます?と、問うと、紙にしろとの事だった。

我が神曰く、執務室の革張りの椅子に座り、「難しい顔をして資料をめくる自分」をやってみたいのだそうだ。
ヒマか?…ヒマなのですね?

ため息を1つついて、プリントアウトを開始。
出てきた資料に間違いがないか確認したあと、『創造神様』のもとへと魔法で転送する。

彼女は すでに自身の執務室へと移動し、喜々としてお茶とお菓子を自らの手で準備して、私からの資料の到着を待っていることだろう。



数日後、私は 『創造神様』の執務室にいた。
そこは、落ち着いた雰囲気の色合いで統一された、神がおわすには、あまりに狭すぎるのではないかと思われる部屋だった。

もっと広くて荘厳な雰囲気のお部屋をご用意致しましょうか?と問えば、我が神曰く、生来「ビンボウショウ」という病を患っている自分には、広すぎる部屋は、落ち着かないし 体に悪いのだ、との答えが返って来た。

そのような病があろうとは‼︎
『管理者』となってから、かなりの年月が過ぎ、曲がりなりにも神の端くれである私も、殊この『創造神様』に関する事は、今だに知らない事が多く、困惑する場面に遭遇する事がかなりの確率である。

「やっぱり、馬鹿女には、ざまぁを味あわせてやりたいのよ‼︎」
お顔を紅潮させ、鼻息も荒く、机に乗り上げる勢いで『創造神様』がおっしゃった。

ご自身の創った世界での傍若無人な振る舞い、住民達への度重なる迷惑行為にかなりご立腹のようだった。
 
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