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熱の在処 八戒×悟空 過去編
第二章 ①
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「花山はどんなので抜いてんの?」
ニヤニヤしながら八戒が言った。あまりにも毎日暑すぎて、放課後のおれらは花山の家をたまり場にするようになった。
両親は共働きで不在だし、広い家はクーラーつけ放題だ。おれと八戒は革張りのソファにだらりと座り、取り巻きABC(おれにはいつまで経っても彼らの名前はわからない)は床に寝そべった。だだっ広いリビングなのに、急にむさくるしい臭いが充満していく。
「……えっ?なんの話ですか?」
きちんと人数分淹れた麦茶を皆に配りながら花山はびくんと肩を震わせた。嗜虐性を煽る反応をするのがからかわれる理由だと本人だけが知らないでいる。
「だからオナニーの話だよ。花山がどんなモノに興奮すんのかなって、昨日兄貴と話しててさ」
な?と八戒がおれの顔を覗き込む。巻き込むなって。
「え……、二人で僕の話を?」
おれの顔をおずおずと見る花山の頬は不思議と赤くなっている。心なしか気まずくなっておれは言う。
「いや……、別になんとなく話の流れでさ」
「そ、そうですよね。大将が僕のことなんか気にするわけないですよね」
「俺はねぇ、花山のこと気になっちゃうな~。ねえ、どんなのが好きなの?今から花山のベッドの下、覗いてきてもいい?エロ本くらい隠してあんだろ?」
「やめてよ。隠してなんかないってば」
「じゃあ、ネット派か。携帯の履歴みていい?消しちゃってるかな?」
花山のポケットに手を突っ込んでスマホを取り上げようとする八戒に、おれはため息をついて取り巻きに言い投げる。
「おい、お前ら。八戒はお前らのツレだろ?止めろよ」
互いの腹を枕代わりにして、ぐでーんと寝そべった取り巻きABCは興味なさそうに口々に言った。
「俺らに止められるわけねえだろ」
「八戒の頭の中は、エロいことと食うことしかねえんだよ。ほっとくしかねえよ」
「じゃあなんで、お前らは豚の傍にいんだ。迷惑かけられるだけだろ?」
「……なんでって……、まぁ」
「メリットも……あるからっつーか」
取り巻きたちははそれぞれもごもごと口ごもる。
「メリットだと?八戒の傍にいて?」
おれは一ミリも理解できずに眉をしかめる。じゃれあいついでに花山の携帯を奪い取った八戒は、会話に加わってきた。
「俺がさ、時々抜いてやってんだよ、こいつらのこと」
「……はぁ?」
抜くって、おい。
抜くって……、そういう意味で?
嘘だろと思って取り巻きたちを見る。彼らが若干ばつの悪そうな顔で何も言わないところを見ると、どうやら事実らしい。
「お前、どアホだと思ってたが……。てか、お前らもこんな豚相手で良いのかよ」
嫌悪感というよりも、不可解さの方が大きい。
「別に挿れたりしてるわけじゃないし、口と手で出してあげるだけだよ。俺も気持ちいいし、こいつらも気持ちいいし、ウィンウィンじゃん?」
取り巻きたちが気恥ずかしそうに狸寝入りを始めたのと対照的に、八戒は平気の平左である。こいつの性的な倫理観は一体どうなっているのか、まったく理解ができない。
「……だめだろ。……気持ちいいはずないだろ?」
八戒は花山の携帯をスクロールしながら適当に返事をする。
「気持ちいいことしてんだから、気持ちいいに決まってんじゃん。あ、花山~。可愛い系じゃなくて綺麗なお姉さんが好みなんだねえ。しかも巨乳派かあ。わっかりやすいなあ」
「やめろって、もう!」
花山が携帯を取り返そうと八戒の後ろから飛びついているが、体格が違いすぎて手が届かないままだ。
「なあ、兄貴。かわいいねえ。花山はきれいなお姉さん好きなんだって」
おれはため息をついて、花山のために八戒を諫めてやる。
「ってことは、お前には縁がないな。もう携帯返してやれ」
「へいへい」
八戒は半泣きの花山に携帯を返しながら「こんなことで泣くなよ。可愛がられちゃうぞ」とその小さな頭を撫でた。
「子ども扱いすんな」
花山は潤んだ瞳で睨んだ。
「してねえって。ほんとだよ。その証拠にさ、将来花山が綺麗なお姉さんとエッチするときに困らないように、今度俺がイロイロ教えてやんよ。な?」
「教えるって……」
「綺麗なお姉さんなんて、絶対経験豊富に決まってるよ。うまくリードできないと『だからガキは嫌いよ』って思われちゃうじゃん?俺がどんな風にリードしたらいいか教えてあげるよ、な?」
八戒の流れるような誘いに花山の眉間の皴がどんどんと開いていく。まったく下心を感じさせないその飄々とした語り口に流されそうになっている。
「……え、っと……、ほんとに?」
「おい、やめろやめろ。こんな豚の言うこと、本気にするんじゃねえ」
おれが花山の頭をぽんぽんとたたいて正気に戻してやる。
「大将……」
「この豚は教えるのにかこつけてお前を抱こうとしてるだけだ」
「そっか……そうですよね。ありがとうございます、大将」
八戒は口を尖らせる。
「なあんだよ、別に利用とかそういうんじゃねえって。お互い気持ち良くなればいいじゃん。まったく兄貴は頭が固いんだよ。好きな人としかセックスしちゃしないとでも思ってんの?セックスっていうのは、太古の昔から気持ち良さを感じるようにできてるんだぜ?気持ちいいってことはつまり身体にも良いんだよ。だから気持ちいいことは、どんどんすればいいんだ、な?俺、間違っちゃいないはずだぜ?」
「……お前の享楽主義にはついていけねえよ」
ニヤニヤしながら八戒が言った。あまりにも毎日暑すぎて、放課後のおれらは花山の家をたまり場にするようになった。
両親は共働きで不在だし、広い家はクーラーつけ放題だ。おれと八戒は革張りのソファにだらりと座り、取り巻きABC(おれにはいつまで経っても彼らの名前はわからない)は床に寝そべった。だだっ広いリビングなのに、急にむさくるしい臭いが充満していく。
「……えっ?なんの話ですか?」
きちんと人数分淹れた麦茶を皆に配りながら花山はびくんと肩を震わせた。嗜虐性を煽る反応をするのがからかわれる理由だと本人だけが知らないでいる。
「だからオナニーの話だよ。花山がどんなモノに興奮すんのかなって、昨日兄貴と話しててさ」
な?と八戒がおれの顔を覗き込む。巻き込むなって。
「え……、二人で僕の話を?」
おれの顔をおずおずと見る花山の頬は不思議と赤くなっている。心なしか気まずくなっておれは言う。
「いや……、別になんとなく話の流れでさ」
「そ、そうですよね。大将が僕のことなんか気にするわけないですよね」
「俺はねぇ、花山のこと気になっちゃうな~。ねえ、どんなのが好きなの?今から花山のベッドの下、覗いてきてもいい?エロ本くらい隠してあんだろ?」
「やめてよ。隠してなんかないってば」
「じゃあ、ネット派か。携帯の履歴みていい?消しちゃってるかな?」
花山のポケットに手を突っ込んでスマホを取り上げようとする八戒に、おれはため息をついて取り巻きに言い投げる。
「おい、お前ら。八戒はお前らのツレだろ?止めろよ」
互いの腹を枕代わりにして、ぐでーんと寝そべった取り巻きABCは興味なさそうに口々に言った。
「俺らに止められるわけねえだろ」
「八戒の頭の中は、エロいことと食うことしかねえんだよ。ほっとくしかねえよ」
「じゃあなんで、お前らは豚の傍にいんだ。迷惑かけられるだけだろ?」
「……なんでって……、まぁ」
「メリットも……あるからっつーか」
取り巻きたちははそれぞれもごもごと口ごもる。
「メリットだと?八戒の傍にいて?」
おれは一ミリも理解できずに眉をしかめる。じゃれあいついでに花山の携帯を奪い取った八戒は、会話に加わってきた。
「俺がさ、時々抜いてやってんだよ、こいつらのこと」
「……はぁ?」
抜くって、おい。
抜くって……、そういう意味で?
嘘だろと思って取り巻きたちを見る。彼らが若干ばつの悪そうな顔で何も言わないところを見ると、どうやら事実らしい。
「お前、どアホだと思ってたが……。てか、お前らもこんな豚相手で良いのかよ」
嫌悪感というよりも、不可解さの方が大きい。
「別に挿れたりしてるわけじゃないし、口と手で出してあげるだけだよ。俺も気持ちいいし、こいつらも気持ちいいし、ウィンウィンじゃん?」
取り巻きたちが気恥ずかしそうに狸寝入りを始めたのと対照的に、八戒は平気の平左である。こいつの性的な倫理観は一体どうなっているのか、まったく理解ができない。
「……だめだろ。……気持ちいいはずないだろ?」
八戒は花山の携帯をスクロールしながら適当に返事をする。
「気持ちいいことしてんだから、気持ちいいに決まってんじゃん。あ、花山~。可愛い系じゃなくて綺麗なお姉さんが好みなんだねえ。しかも巨乳派かあ。わっかりやすいなあ」
「やめろって、もう!」
花山が携帯を取り返そうと八戒の後ろから飛びついているが、体格が違いすぎて手が届かないままだ。
「なあ、兄貴。かわいいねえ。花山はきれいなお姉さん好きなんだって」
おれはため息をついて、花山のために八戒を諫めてやる。
「ってことは、お前には縁がないな。もう携帯返してやれ」
「へいへい」
八戒は半泣きの花山に携帯を返しながら「こんなことで泣くなよ。可愛がられちゃうぞ」とその小さな頭を撫でた。
「子ども扱いすんな」
花山は潤んだ瞳で睨んだ。
「してねえって。ほんとだよ。その証拠にさ、将来花山が綺麗なお姉さんとエッチするときに困らないように、今度俺がイロイロ教えてやんよ。な?」
「教えるって……」
「綺麗なお姉さんなんて、絶対経験豊富に決まってるよ。うまくリードできないと『だからガキは嫌いよ』って思われちゃうじゃん?俺がどんな風にリードしたらいいか教えてあげるよ、な?」
八戒の流れるような誘いに花山の眉間の皴がどんどんと開いていく。まったく下心を感じさせないその飄々とした語り口に流されそうになっている。
「……え、っと……、ほんとに?」
「おい、やめろやめろ。こんな豚の言うこと、本気にするんじゃねえ」
おれが花山の頭をぽんぽんとたたいて正気に戻してやる。
「大将……」
「この豚は教えるのにかこつけてお前を抱こうとしてるだけだ」
「そっか……そうですよね。ありがとうございます、大将」
八戒は口を尖らせる。
「なあんだよ、別に利用とかそういうんじゃねえって。お互い気持ち良くなればいいじゃん。まったく兄貴は頭が固いんだよ。好きな人としかセックスしちゃしないとでも思ってんの?セックスっていうのは、太古の昔から気持ち良さを感じるようにできてるんだぜ?気持ちいいってことはつまり身体にも良いんだよ。だから気持ちいいことは、どんどんすればいいんだ、な?俺、間違っちゃいないはずだぜ?」
「……お前の享楽主義にはついていけねえよ」
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