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騎士団編
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「お~い、アメリア!持ってきたぞ!」
待ってました!!
今日はトレーシー様が魔石を持ってきてくれる日。
午前中は買い出しだから午後に来てくれることになっていた。
るんるん気分で入り口に向かうとトレーシー様の後ろにカエサル様も立っていた。
つい、げ、と顔をしかめると、睨まれた。
まぁ、今日は気にしな~い。
「これの使い方分かるか?」
そう言ってトレーシー様は手に持っていた麻の袋から手のひらサイズの丸い石を取り出した。不思議な光沢を持った光る石だ。
私は、もちろん使い方なんて知るはずもない。元気よく、
【分かりません!】
と答えた、片手を上げて。
正直ものすご~く楽しみにしてた!
だって、元地球生まれの私からしたら、魔法は憧れ!!
例えば、空飛びたい!とか遠くにある物が取りたい!とかとか!!
思ったことありません?
魔力量が分かる。それは、つまり魔法を使うための第一歩。素晴らしい!
「これに額をあてながら、心の中で何かに魔力を捧げろ。捧げる様子を想像しろ。だが、気をつけろよ。これから先、魔法を使うときは全てそれに捧げるからな!」
捧げる‥‥‥。
私が、魔力を捧げるのは、お母様。
緊張しながら慎重に魔石を受け取り、私はそっと額に当てた。
【お母様‥‥‥。】
そっと声になったその言葉はその場にいた二人に聞こえたのか、私には分からなかった。
体の奥から何かが吸い出される感覚がある。
これが魔力?
お母様を思いながらどんどんと流れていく魔力をかんじる。
すっと軽くなるようだ。
心地いい。
ふぅ、と息を吐いて身を委ねる。
しばらく、たって何かがおかしいと思った。
ただ、体が熱くて熱くて、まるで燃えているようだ。
その中で私は、もう顔がおぼろ気になってしまったお母様に、全てを渡す気で祈っていた。
私に全てをくれたお母様。
私が全てを奪ったお母様。
魔石がひんやりしている。私の頭はこれのおかげで冷静でいられる。
でも、立っているのか座っているのか分からない。
「ちっ、おい!!貸せ!!」
不思議と意識は途切れなかった。
見えているのは天井かな?
カエサル様の焦ったような声が聞こえて、額に当てたままだった魔石を剥ぎ取られた。
「逆流してやがる!おい、トレーシー!これはいくつ入る?」
「念のため買ってきた、賢者ようだから、たしか、50万なはずだが。」
「おいおい、それが本当ならこいつは化けもんかよ。」
二人とも、驚いた顔だ。
少し、ひきつっているようにも見えた。
「お前、どこで産まれた?」
知らない。分かんないよ‥‥‥。
目を開けるのが疲れて閉じた。
「ちっ、トレーシー氷作ってこい。冷やすぞ。」
「あぁ。少し待ってろ。」
バタバタと外に出ていく足音が聞こえた。
カエサル様が私を横に抱えて運んでいる。
「お前の魔力、見誤った。すまん。辛いだろーな?」
ベッドに置くと、普段では考えられないほど、優しい手つきで撫でられた。
もしかして、寝ているものだと思ってる?
以外な一面を見た。
起きたらお礼を言わなきゃ、ね。
今は眠りたい。
待ってました!!
今日はトレーシー様が魔石を持ってきてくれる日。
午前中は買い出しだから午後に来てくれることになっていた。
るんるん気分で入り口に向かうとトレーシー様の後ろにカエサル様も立っていた。
つい、げ、と顔をしかめると、睨まれた。
まぁ、今日は気にしな~い。
「これの使い方分かるか?」
そう言ってトレーシー様は手に持っていた麻の袋から手のひらサイズの丸い石を取り出した。不思議な光沢を持った光る石だ。
私は、もちろん使い方なんて知るはずもない。元気よく、
【分かりません!】
と答えた、片手を上げて。
正直ものすご~く楽しみにしてた!
だって、元地球生まれの私からしたら、魔法は憧れ!!
例えば、空飛びたい!とか遠くにある物が取りたい!とかとか!!
思ったことありません?
魔力量が分かる。それは、つまり魔法を使うための第一歩。素晴らしい!
「これに額をあてながら、心の中で何かに魔力を捧げろ。捧げる様子を想像しろ。だが、気をつけろよ。これから先、魔法を使うときは全てそれに捧げるからな!」
捧げる‥‥‥。
私が、魔力を捧げるのは、お母様。
緊張しながら慎重に魔石を受け取り、私はそっと額に当てた。
【お母様‥‥‥。】
そっと声になったその言葉はその場にいた二人に聞こえたのか、私には分からなかった。
体の奥から何かが吸い出される感覚がある。
これが魔力?
お母様を思いながらどんどんと流れていく魔力をかんじる。
すっと軽くなるようだ。
心地いい。
ふぅ、と息を吐いて身を委ねる。
しばらく、たって何かがおかしいと思った。
ただ、体が熱くて熱くて、まるで燃えているようだ。
その中で私は、もう顔がおぼろ気になってしまったお母様に、全てを渡す気で祈っていた。
私に全てをくれたお母様。
私が全てを奪ったお母様。
魔石がひんやりしている。私の頭はこれのおかげで冷静でいられる。
でも、立っているのか座っているのか分からない。
「ちっ、おい!!貸せ!!」
不思議と意識は途切れなかった。
見えているのは天井かな?
カエサル様の焦ったような声が聞こえて、額に当てたままだった魔石を剥ぎ取られた。
「逆流してやがる!おい、トレーシー!これはいくつ入る?」
「念のため買ってきた、賢者ようだから、たしか、50万なはずだが。」
「おいおい、それが本当ならこいつは化けもんかよ。」
二人とも、驚いた顔だ。
少し、ひきつっているようにも見えた。
「お前、どこで産まれた?」
知らない。分かんないよ‥‥‥。
目を開けるのが疲れて閉じた。
「ちっ、トレーシー氷作ってこい。冷やすぞ。」
「あぁ。少し待ってろ。」
バタバタと外に出ていく足音が聞こえた。
カエサル様が私を横に抱えて運んでいる。
「お前の魔力、見誤った。すまん。辛いだろーな?」
ベッドに置くと、普段では考えられないほど、優しい手つきで撫でられた。
もしかして、寝ているものだと思ってる?
以外な一面を見た。
起きたらお礼を言わなきゃ、ね。
今は眠りたい。
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