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騎士団編
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私はこの前見た夢と同じように真っ白な空間に立っていた。
目の前にはいつの間にか葉月がいて、私を見ながら微笑んでいる。
久しぶりに誰かが笑ってるのを見た。
魔物、倒せたね。この世界を、救ってくれる?
‥‥‥。
私には分からないと思った。救って、と言われてもこの世界そのものを背負って一人で立っていけるなんて思えない。
私の表情から不安を感じ取った葉月は悲しそうな顔をした。
そう、まだ、なのね‥‥‥。
じゃあ、声は返せないの。
でも、変わりにこれをあげるわ。
笑いながらそう言った葉月は紅い着物の袂から白く光る飴のような物を取り出して、私の口に押し込んだ。
甘くて苦いような不思議な味のそれは一瞬で溶けた。
いつか、必要とするときが来ると思うの。戦うために、思い出すために‥‥‥。
聞きたいことがあるのに‥‥‥!!
待って!と手を伸ばしても葉月には届かなかった。
私は、夢から覚めてしまった。
***
「おはよう。」
パチパチと瞬きをして、明かりに目を慣らして、だんだんと見えてきたのは、トレーシー様とケイン様だった。
「よく眠ってたな。」
ここは?と聞こうとしてやっぱり声が出なかった。
それに、髪が長い!?
ケイン様もいるのに、女の格好をしたままだった。
そっとケイン様を見ると、
「大丈夫です。」
と、大きく頷いてくれたその後ろに黄色が見えた。
いや、本当に黄色に光ってるもの。
びっくりしてじっと見ていたので何もしなかった私を、トレーシー様は声が戻っていないことが分かったらしい。
「声は戻ってないらしいな。」
はい‥‥‥。
聞きたいことがあるのに何も言えない‥‥‥。
俯いた私にトレーシー様は何かを差し出した。
これは‥‥‥ネックレス?
ううん、つける部分が布だからチョーカーかな?
でも、私には大きいよね。
真ん中には透明な丸い石が着けてあるシンプルな物だった。
「それは便利だぞ!着けてやる。」
私の手からチョーカーを取ったトレーシー様はベッドを回って後ろから着けてくれた。
チョーカーはシュルッと音をたてて首にぴったりと張り付く大きさになった。
何これ!?
いきなりの大きさ変化、先に言ってほしかったよ!!
びっくりしすぎて心臓が飛び出すかと思った。
「それはな‥‥‥。」
それは?
「首輪だ!」
えっ!!やだ、
【取ってください!】
声!?なんで?
チョーカーからは私が思ったことがそのまま音になった。
「首輪は冗談だ。それは、魔術具だ。お前が強く思ったことが分かる。」
へぇ~、
【便利です!!】
「そうだろう!」
うんうんと頷くトレーシー様の後ろにまた黄色が見えた。
「後はその魔石で、感情は分かるぞ。まぁ、最初は使いにくいと思うがな。」
【質問!!】
おぉ、話せた!
「ん?何が知りたいんだ?」
知りたいことはたくさんあるけど、まずは
その【黄色】何ですか?
うぅ、うまくいかないよ。
「黄色?黄色ってなんだ?ケイン、分かるか?」
「魔力‥‥‥。」
「お前、そんなはずはないとさっき言ったばかりだろう!?」
ケイン様がボソッと言った魔力、それは17歳で見れるものなはずだよね?
【17歳じゃないです!】
誕生日は2ヶ月も先だし、
「やはり、」
「魔力なんじゃねーか。」
入ってきたのはカエサル様。
目が合うと手に持っていた小さい袋を投げられた。
とっさにキャッチしたはいいけど、投げるなら一言言ってよ!!
「怒るなよ。」
「魔石が赤く光ってますよ。」
そうだった、色で分かるんだよね。
「カエサル、魔力はロードクラウンを受けなくては見えないはずだが、」
「例外は魔物の子しかない。だろ?だが、例外はもう一つある。」
難しい顔をしているトレーシー様にカエサル様は後ろに黄色を見せて答えた。
「聖女、だ。」
「バカな!?聖女様は王都にいる。」
いやいや、
【聖女じゃないです!】
「そんなこったーわかってんだよ。正確には聖女と同じ体質だ。」
「カエサルさん、教会のことは全て公開されてないはずですが、」
「いいから黙って聞けよ!」
本当に柄が悪い人。
一回一回怒鳴らなくても聞こえているのに。
「聖女はなぁ、生まれてすぐにはかった魔力が多すぎるやつの中で親がした封印が解けちまったやつか、最初から封印されなかったやつだよ。」
トレーシー様もケイン様も知らなかったらしい。
呆然としている。
「魔力測定は生まれてすぐに一度するだろ?その時に魔力を一度封印するのは知ってるはずだ。だが、魔力多すぎるとより強固な封印が必要になる。それには金がいるんだよ。だから金がねぇやつは普通の封印をするかもしくは子を教会へやる。」
「だが、協会に人を入れる場所など。」
「あるだろ?孤児院が。今の世の中、魔力は貴族だけしか持ってねぇが、男爵や子爵はどうだ?魔力量は遺伝するもんじゃねぇだろ?金がねえやつが教会で聖女になる。封印を強めなくて、途中で切れても運がよけりゃあ教会が保護する。お前も封印が切れたんだろうよ。俺が知っててよかったな!」
そんな、私は、
「大丈夫だ、アメリア。お前は騎士団が保護する。その稀有な魔物を倒す力が魔物なはずがない!!」
トレーシー様が何度も大丈夫だ、と言ってくれた。
【大丈夫!!】
私は、魔物じゃない。
今はそれを信じてくれる人がいるもの!!
目の前にはいつの間にか葉月がいて、私を見ながら微笑んでいる。
久しぶりに誰かが笑ってるのを見た。
魔物、倒せたね。この世界を、救ってくれる?
‥‥‥。
私には分からないと思った。救って、と言われてもこの世界そのものを背負って一人で立っていけるなんて思えない。
私の表情から不安を感じ取った葉月は悲しそうな顔をした。
そう、まだ、なのね‥‥‥。
じゃあ、声は返せないの。
でも、変わりにこれをあげるわ。
笑いながらそう言った葉月は紅い着物の袂から白く光る飴のような物を取り出して、私の口に押し込んだ。
甘くて苦いような不思議な味のそれは一瞬で溶けた。
いつか、必要とするときが来ると思うの。戦うために、思い出すために‥‥‥。
聞きたいことがあるのに‥‥‥!!
待って!と手を伸ばしても葉月には届かなかった。
私は、夢から覚めてしまった。
***
「おはよう。」
パチパチと瞬きをして、明かりに目を慣らして、だんだんと見えてきたのは、トレーシー様とケイン様だった。
「よく眠ってたな。」
ここは?と聞こうとしてやっぱり声が出なかった。
それに、髪が長い!?
ケイン様もいるのに、女の格好をしたままだった。
そっとケイン様を見ると、
「大丈夫です。」
と、大きく頷いてくれたその後ろに黄色が見えた。
いや、本当に黄色に光ってるもの。
びっくりしてじっと見ていたので何もしなかった私を、トレーシー様は声が戻っていないことが分かったらしい。
「声は戻ってないらしいな。」
はい‥‥‥。
聞きたいことがあるのに何も言えない‥‥‥。
俯いた私にトレーシー様は何かを差し出した。
これは‥‥‥ネックレス?
ううん、つける部分が布だからチョーカーかな?
でも、私には大きいよね。
真ん中には透明な丸い石が着けてあるシンプルな物だった。
「それは便利だぞ!着けてやる。」
私の手からチョーカーを取ったトレーシー様はベッドを回って後ろから着けてくれた。
チョーカーはシュルッと音をたてて首にぴったりと張り付く大きさになった。
何これ!?
いきなりの大きさ変化、先に言ってほしかったよ!!
びっくりしすぎて心臓が飛び出すかと思った。
「それはな‥‥‥。」
それは?
「首輪だ!」
えっ!!やだ、
【取ってください!】
声!?なんで?
チョーカーからは私が思ったことがそのまま音になった。
「首輪は冗談だ。それは、魔術具だ。お前が強く思ったことが分かる。」
へぇ~、
【便利です!!】
「そうだろう!」
うんうんと頷くトレーシー様の後ろにまた黄色が見えた。
「後はその魔石で、感情は分かるぞ。まぁ、最初は使いにくいと思うがな。」
【質問!!】
おぉ、話せた!
「ん?何が知りたいんだ?」
知りたいことはたくさんあるけど、まずは
その【黄色】何ですか?
うぅ、うまくいかないよ。
「黄色?黄色ってなんだ?ケイン、分かるか?」
「魔力‥‥‥。」
「お前、そんなはずはないとさっき言ったばかりだろう!?」
ケイン様がボソッと言った魔力、それは17歳で見れるものなはずだよね?
【17歳じゃないです!】
誕生日は2ヶ月も先だし、
「やはり、」
「魔力なんじゃねーか。」
入ってきたのはカエサル様。
目が合うと手に持っていた小さい袋を投げられた。
とっさにキャッチしたはいいけど、投げるなら一言言ってよ!!
「怒るなよ。」
「魔石が赤く光ってますよ。」
そうだった、色で分かるんだよね。
「カエサル、魔力はロードクラウンを受けなくては見えないはずだが、」
「例外は魔物の子しかない。だろ?だが、例外はもう一つある。」
難しい顔をしているトレーシー様にカエサル様は後ろに黄色を見せて答えた。
「聖女、だ。」
「バカな!?聖女様は王都にいる。」
いやいや、
【聖女じゃないです!】
「そんなこったーわかってんだよ。正確には聖女と同じ体質だ。」
「カエサルさん、教会のことは全て公開されてないはずですが、」
「いいから黙って聞けよ!」
本当に柄が悪い人。
一回一回怒鳴らなくても聞こえているのに。
「聖女はなぁ、生まれてすぐにはかった魔力が多すぎるやつの中で親がした封印が解けちまったやつか、最初から封印されなかったやつだよ。」
トレーシー様もケイン様も知らなかったらしい。
呆然としている。
「魔力測定は生まれてすぐに一度するだろ?その時に魔力を一度封印するのは知ってるはずだ。だが、魔力多すぎるとより強固な封印が必要になる。それには金がいるんだよ。だから金がねぇやつは普通の封印をするかもしくは子を教会へやる。」
「だが、協会に人を入れる場所など。」
「あるだろ?孤児院が。今の世の中、魔力は貴族だけしか持ってねぇが、男爵や子爵はどうだ?魔力量は遺伝するもんじゃねぇだろ?金がねえやつが教会で聖女になる。封印を強めなくて、途中で切れても運がよけりゃあ教会が保護する。お前も封印が切れたんだろうよ。俺が知っててよかったな!」
そんな、私は、
「大丈夫だ、アメリア。お前は騎士団が保護する。その稀有な魔物を倒す力が魔物なはずがない!!」
トレーシー様が何度も大丈夫だ、と言ってくれた。
【大丈夫!!】
私は、魔物じゃない。
今はそれを信じてくれる人がいるもの!!
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