笑顔で異世界救います!?

綺羅姫

文字の大きさ
上 下
13 / 33
騎士団編

11

しおりを挟む
私はこの前見た夢と同じように真っ白な空間に立っていた。

目の前にはいつの間にか葉月がいて、私を見ながら微笑んでいる。
久しぶりに誰かが笑ってるのを見た。

魔物、倒せたね。この世界を、救ってくれる?

‥‥‥。

私には分からないと思った。救って、と言われてもこの世界そのものを背負って一人で立っていけるなんて思えない。
私の表情から不安を感じ取った葉月は悲しそうな顔をした。

そう、まだ、なのね‥‥‥。
じゃあ、声は返せないの。

でも、変わりにこれをあげるわ。

笑いながらそう言った葉月は紅い着物の袂から白く光る飴のような物を取り出して、私の口に押し込んだ。
甘くて苦いような不思議な味のそれは一瞬で溶けた。

いつか、必要とするときが来ると思うの。戦うために、思い出すために‥‥‥。

聞きたいことがあるのに‥‥‥!!
待って!と手を伸ばしても葉月には届かなかった。


私は、夢から覚めてしまった。


***



「おはよう。」


パチパチと瞬きをして、明かりに目を慣らして、だんだんと見えてきたのは、トレーシー様とケイン様だった。

「よく眠ってたな。」

ここは?と聞こうとしてやっぱり声が出なかった。
それに、髪が長い!?
ケイン様もいるのに、女の格好をしたままだった。
そっとケイン様を見ると、

「大丈夫です。」

と、大きく頷いてくれたその後ろに黄色が見えた。
いや、本当に黄色に光ってるもの。
びっくりしてじっと見ていたので何もしなかった私を、トレーシー様は声が戻っていないことが分かったらしい。

「声は戻ってないらしいな。」

はい‥‥‥。
聞きたいことがあるのに何も言えない‥‥‥。
俯いた私にトレーシー様は何かを差し出した。

これは‥‥‥ネックレス?
ううん、つける部分が布だからチョーカーかな?
でも、私には大きいよね。

真ん中には透明な丸い石が着けてあるシンプルな物だった。

「それは便利だぞ!着けてやる。」

私の手からチョーカーを取ったトレーシー様はベッドを回って後ろから着けてくれた。
チョーカーはシュルッと音をたてて首にぴったりと張り付く大きさになった。

何これ!?
いきなりの大きさ変化、先に言ってほしかったよ!!
びっくりしすぎて心臓が飛び出すかと思った。

「それはな‥‥‥。」

それは?

「首輪だ!」

えっ!!やだ、

【取ってください!】

声!?なんで?
チョーカーからは私が思ったことがそのまま音になった。

「首輪は冗談だ。それは、魔術具だ。お前が強く思ったことが分かる。」

へぇ~、

【便利です!!】

「そうだろう!」

うんうんと頷くトレーシー様の後ろにまた黄色が見えた。

「後はその魔石で、感情は分かるぞ。まぁ、最初は使いにくいと思うがな。」

【質問!!】
おぉ、話せた!

「ん?何が知りたいんだ?」

知りたいことはたくさんあるけど、まずは

その【黄色】何ですか?
うぅ、うまくいかないよ。

「黄色?黄色ってなんだ?ケイン、分かるか?」

「魔力‥‥‥。」

「お前、そんなはずはないとさっき言ったばかりだろう!?」

ケイン様がボソッと言った魔力、それは17歳で見れるものなはずだよね?

【17歳じゃないです!】

誕生日は2ヶ月も先だし、

「やはり、」

「魔力なんじゃねーか。」

入ってきたのはカエサル様。
目が合うと手に持っていた小さい袋を投げられた。
とっさにキャッチしたはいいけど、投げるなら一言言ってよ!!

「怒るなよ。」

「魔石が赤く光ってますよ。」

そうだった、色で分かるんだよね。

「カエサル、魔力はロードクラウンを受けなくては見えないはずだが、」

「例外は魔物の子しかない。だろ?だが、例外はもう一つある。」

難しい顔をしているトレーシー様にカエサル様は後ろに黄色を見せて答えた。

「聖女、だ。」

「バカな!?聖女様は王都にいる。」

いやいや、

【聖女じゃないです!】

「そんなこったーわかってんだよ。正確には聖女と同じ体質だ。」

「カエサルさん、教会のことは全て公開されてないはずですが、」

「いいから黙って聞けよ!」

本当に柄が悪い人。
一回一回怒鳴らなくても聞こえているのに。

「聖女はなぁ、生まれてすぐにはかった魔力が多すぎるやつの中で親がした封印が解けちまったやつか、最初から封印されなかったやつだよ。」

トレーシー様もケイン様も知らなかったらしい。
呆然としている。

「魔力測定は生まれてすぐに一度するだろ?その時に魔力を一度封印するのは知ってるはずだ。だが、魔力多すぎるとより強固な封印が必要になる。それには金がいるんだよ。だから金がねぇやつは普通の封印をするかもしくは子を教会へやる。」

「だが、協会に人を入れる場所など。」

「あるだろ?孤児院が。今の世の中、魔力は貴族だけしか持ってねぇが、男爵や子爵はどうだ?魔力量は遺伝するもんじゃねぇだろ?金がねえやつが教会で聖女になる。封印を強めなくて、途中で切れても運がよけりゃあ教会が保護する。お前も封印が切れたんだろうよ。俺が知っててよかったな!」

そんな、私は、

「大丈夫だ、アメリア。お前は騎士団が保護する。その稀有な魔物を倒す力が魔物なはずがない!!」

トレーシー様が何度も大丈夫だ、と言ってくれた。

【大丈夫!!】

私は、魔物じゃない。
今はそれを信じてくれる人がいるもの!!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~

saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。 前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。 国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。 自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。 幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。 自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。 前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。 ※小説家になろう様でも公開しています

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

デブの俺、転生

ゆぃ♫
ファンタジー
中華屋さんの親を持つデブの俺が、魔法ありの異世界転生。 太らない体を手に入れた美味いものが食いたい!と魔力無双 拙い文章ですが、よろしくお願いします。

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

処理中です...