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騎士団編
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「‥‥‥アメリア」
目の前にそっぽを向いたカエサル様から手が差し伸べられた。素直にその手をとって引かれるままに歩きだす。
泣いて赤くなった目を擦るとカエサル様に止められた。
「目は冷やせ、後で腫れるぞ!」
【はい‥‥‥。】
「アメリア、大丈夫ですの?」
いつの間にかアメリアの肩に座っていたジュリも心配そうに声をかけてくれる。
皆、優しいな。
こういう時の優しさはよりよい一層心に染み入るようで、また涙が滲む。
でも、今はまだここで止まっていい時じゃない。
手紙だと皆を‥‥‥、早く探して助けないと!
‥‥‥無事でいて!!
私は顔を上げると、皆がいるだろう執務室へ駆け出した。
「おい、何処へ行くんだ!?」
「アメリア!?」
しまった!!また、伝え忘れた~!!
【皆を助けに行くのです!】
少し後ろを見ながら、足は止めない。二人は私に付いて走ってくれてる。
‥‥‥いや、どう考えても気力、体力切れでふらふらな私よりも二人の方が足早いです、はい。亀の歩みな私に合わせてくれてありがとうございます!
「場所は?」
【たぶん執務室です!】
だいぶ荒くなった呼吸の間で一息に言う。ポコポコある瓦礫を避けてるので、なけなしの体力は倍で消費される。隣からふいにちっ、と舌打ちが聞こえた。
その方向をちらりと見るために一瞬だけ横を見ようとして、ただでさえ上がってなかった私の足は何かに引っ掛かった。
【あ‥‥‥】
倒れる!と思い、目を閉じると体が浮いた、マジでフワッと。いや、転んだから浮いたんじゃない。抱き上げられたから浮いた。
抱き上げられた?誰に?
‥‥‥カエサル様。
目を開けると見える景色はだいぶ高くなっていた。
「お前‥‥‥のろすぎだろ。」
何、その見下した視線!!転び回避してくれたから、言わないけどムカッとした!!
しかも!!しかもですよ!!この荷物抱えはやめて!!私は荷物じゃないので振動が伝わるお腹が痛いです。
そこまで、色々考えて気が付いた。カエサル様、いつもより辛そうだ。よく見れば小さな切り傷が至るところにあった。そりゃそうだよね。あんなにたくさんの蜘蛛と戦ってたのに体力が少しも減ってないとかあり得ないし。
「‥‥‥カエサル様、その抱え方はないです。」
ジュリ、ナイス!!
無言で動きを止めた私はツッコミを入れなかっただけでお腹は痛いので、ジュリに感謝を伝えるため一瞬見てグッドポーズをした。ジュリはこくんと頷くとさらに捲し立てた。
「カエサル様は女の子の扱いがなってません!!女の子の夢はお姫様だっこではありませんか!今すぐ変えてください。」
「うるせーな。変えればいんだろ!」
面倒くさそうな声が聞こえると、私はまた中に浮いた。‥‥‥なんで投げた!!?
カエサル様は一度私を上に投げてお姫様だっこでキャッチした。
【ひゃあ!?】
裏返った声が出る。投げるとか、投げるとか!!こ、怖かった。だって、私重いよ?なんでこんなに軽々しく‥‥‥。ジュリと言い合いをしているカエサル様の俗に言う細マッチョとやらの腕をじっと見る。手、肩、首‥‥‥顔。
「これでいいだろ!」
「‥‥‥扱いが乱暴です」
「‥‥‥ちっ、」
舌打ちをしながら下を向いたカエサル様と顔を凝視していた私の視線がぴったり合う。
外されない目に頬が熱くなるのが分かる。ち、近い!私とカエサル様の距離はほぼ密着プラス顔のは10センチほどしか離れていない。
性格が悪いので無駄に整っている容姿は普段あまり気にしないけど、これはさすがに‥‥‥うぅ、荷物担ぎのがましです。
しばらくたって、私がすごく頑張って目をそらした頃には執務室の前に着いていた。ていうか、前見ないで走れるの?すごくない?
「本当にここなのか?生き物の気配はしないが‥‥‥?」
その怖い話はやめて!!いるんだから!まだ、生きてる!そう信じたいの。
私は地面を覆う大小さまざまな瓦礫に手をかけた。
【カエサル様も瓦礫退けるの手伝ってください。】
真剣に頼むと、怪訝そうな顔をしながらも私では動かせなさそうな大きめの物から端に退けてくれた。
私が見たいのは部屋の中心、魔物達が避けていたところだ。
【‥‥‥やっぱり、あった。】
「なんだ、これ‥‥‥。」
そこには絨毯‥‥‥のように見えていた蜘蛛の糸で閉ざされた階段があった。
地下室だ。ここに、たぶん皆がいる。
目の前にそっぽを向いたカエサル様から手が差し伸べられた。素直にその手をとって引かれるままに歩きだす。
泣いて赤くなった目を擦るとカエサル様に止められた。
「目は冷やせ、後で腫れるぞ!」
【はい‥‥‥。】
「アメリア、大丈夫ですの?」
いつの間にかアメリアの肩に座っていたジュリも心配そうに声をかけてくれる。
皆、優しいな。
こういう時の優しさはよりよい一層心に染み入るようで、また涙が滲む。
でも、今はまだここで止まっていい時じゃない。
手紙だと皆を‥‥‥、早く探して助けないと!
‥‥‥無事でいて!!
私は顔を上げると、皆がいるだろう執務室へ駆け出した。
「おい、何処へ行くんだ!?」
「アメリア!?」
しまった!!また、伝え忘れた~!!
【皆を助けに行くのです!】
少し後ろを見ながら、足は止めない。二人は私に付いて走ってくれてる。
‥‥‥いや、どう考えても気力、体力切れでふらふらな私よりも二人の方が足早いです、はい。亀の歩みな私に合わせてくれてありがとうございます!
「場所は?」
【たぶん執務室です!】
だいぶ荒くなった呼吸の間で一息に言う。ポコポコある瓦礫を避けてるので、なけなしの体力は倍で消費される。隣からふいにちっ、と舌打ちが聞こえた。
その方向をちらりと見るために一瞬だけ横を見ようとして、ただでさえ上がってなかった私の足は何かに引っ掛かった。
【あ‥‥‥】
倒れる!と思い、目を閉じると体が浮いた、マジでフワッと。いや、転んだから浮いたんじゃない。抱き上げられたから浮いた。
抱き上げられた?誰に?
‥‥‥カエサル様。
目を開けると見える景色はだいぶ高くなっていた。
「お前‥‥‥のろすぎだろ。」
何、その見下した視線!!転び回避してくれたから、言わないけどムカッとした!!
しかも!!しかもですよ!!この荷物抱えはやめて!!私は荷物じゃないので振動が伝わるお腹が痛いです。
そこまで、色々考えて気が付いた。カエサル様、いつもより辛そうだ。よく見れば小さな切り傷が至るところにあった。そりゃそうだよね。あんなにたくさんの蜘蛛と戦ってたのに体力が少しも減ってないとかあり得ないし。
「‥‥‥カエサル様、その抱え方はないです。」
ジュリ、ナイス!!
無言で動きを止めた私はツッコミを入れなかっただけでお腹は痛いので、ジュリに感謝を伝えるため一瞬見てグッドポーズをした。ジュリはこくんと頷くとさらに捲し立てた。
「カエサル様は女の子の扱いがなってません!!女の子の夢はお姫様だっこではありませんか!今すぐ変えてください。」
「うるせーな。変えればいんだろ!」
面倒くさそうな声が聞こえると、私はまた中に浮いた。‥‥‥なんで投げた!!?
カエサル様は一度私を上に投げてお姫様だっこでキャッチした。
【ひゃあ!?】
裏返った声が出る。投げるとか、投げるとか!!こ、怖かった。だって、私重いよ?なんでこんなに軽々しく‥‥‥。ジュリと言い合いをしているカエサル様の俗に言う細マッチョとやらの腕をじっと見る。手、肩、首‥‥‥顔。
「これでいいだろ!」
「‥‥‥扱いが乱暴です」
「‥‥‥ちっ、」
舌打ちをしながら下を向いたカエサル様と顔を凝視していた私の視線がぴったり合う。
外されない目に頬が熱くなるのが分かる。ち、近い!私とカエサル様の距離はほぼ密着プラス顔のは10センチほどしか離れていない。
性格が悪いので無駄に整っている容姿は普段あまり気にしないけど、これはさすがに‥‥‥うぅ、荷物担ぎのがましです。
しばらくたって、私がすごく頑張って目をそらした頃には執務室の前に着いていた。ていうか、前見ないで走れるの?すごくない?
「本当にここなのか?生き物の気配はしないが‥‥‥?」
その怖い話はやめて!!いるんだから!まだ、生きてる!そう信じたいの。
私は地面を覆う大小さまざまな瓦礫に手をかけた。
【カエサル様も瓦礫退けるの手伝ってください。】
真剣に頼むと、怪訝そうな顔をしながらも私では動かせなさそうな大きめの物から端に退けてくれた。
私が見たいのは部屋の中心、魔物達が避けていたところだ。
【‥‥‥やっぱり、あった。】
「なんだ、これ‥‥‥。」
そこには絨毯‥‥‥のように見えていた蜘蛛の糸で閉ざされた階段があった。
地下室だ。ここに、たぶん皆がいる。
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