笑顔で異世界救います!?

綺羅姫

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騎士団編

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ボンッと大きな音と共に爆風と煙が飛んできて、ジュリの体はくるくる回りながら吹っ飛んだ。

「きゃあぁぁぁぁっ!!!」

声が出せるとなると、思いっきり叫んでしまう。いくらガードされているとは言え超怖い。目が回るよ~。

壁が近づいてきていよいよぶつかる、と目を閉じて身構えたけどそんな衝撃はなかった。ただ軽く何かに包み込まれたような‥‥‥。
そ~っと右目を開けると、目の前にカエサル様の顔があった。

「大丈夫か?」

‥‥‥ちょっと待って。
状況を整理しよう。私は今カエサル様の手の内にいる。(物理的な意味で)吹っ飛んでた私をカエサル様が掴んだ?
うん、分かった。オーケー、大丈夫。

(‥‥‥ねぇ、ジュリ。私がジュリの身体を使ってること話した方がいいかな?)

返答はない。でも、答えられないわけじゃないらしい。拗ねてる?

(ごめんね、勝手にジュリの身体を危険にさらして。)

私の中で怒るジュリ。え、なんで怒るのか全く分からないけれど、今話すのは無理そうだと思った。

さて、カエサル様に話すか話さないか。‥‥‥まじでどうしよう?

「おい、何固まってんだよ。‥‥‥あのアホは無事なのか?」

アホ=私
口調からそう分かった。
うん、なんかそこだけエコーがかかって何言ってんのか分からない。これで怒るなんて小学生かと言われたってムカついたものはスルーできない。

とりあえず、話すのはやめる。絶対話してやらない!
カエサル様がアメリアの秘密を本人から聞くことがあり得なくなった瞬間だった。

「‥‥‥大丈夫、です。少し呆然としていただけ、なのです。」

なるべくジュリっぽい喋り方を心掛ける。

「アメリアは無事です。それでは私はアメリアのところへ‥‥‥。」

「いや、俺も今から外に出るんだが。それより、お前魔法なんて使えるのか?ナチュラルなんだろ?」

「‥‥‥先に行きますです。」

これ以上ここに居たらボロがでる。絶対でる。

手の中から這い出て、羽を広げ、思いっきりジャンプした。羽を動かす感覚がある。

「うわっ」

バランスがとれない。飛ぶのって難しいな。

‥‥‥サポートします。

まだ、拗ねてるようなジュリがそう声をかけてきた。私はあまりにふらふらと動いていたのですぐにお願いする。

羽の感覚がなくなり行きたいところに行けるようになった。

‥‥‥羽だけ私一人で動かせるように戻しましたの。

そうなんだ。
まぁ、カエサル様に追い付かれないように早く外に出よう。

浮いている感覚を楽しみながらアメリアの身体に戻ろうと木に近づいていく。

「まだだ。‥‥‥まだ終わってない。」

地を這うように低い声が聞こえた。
ばっと後ろを振り向くとそこには爪の大きさほどの蜘蛛が赤く光っていた。

「ジュリ、早く行け!!自爆する気だ。」

アメリア、魔物は死んでもまた森で甦るのです。だから、魔物の話を聞いて、肯定して。

カエサル様とジュリから必死の呼び声があった。

私はジュリの身体に入っていた意識を私の身体に戻してすぐに走った、蜘蛛へ。

粉々になっているドアだったところを走り抜けて、蜘蛛の前に立ち耳をすませる。

『ナゼコロス!!ワレワレハコロサレル!!コロサナクテハコロサレル。』

聞こえる。
深い深い、恨みの声だ。

『イヤダ、イヤダイヤダイヤダ!!!‥‥‥シニタクナイ。』

‥‥‥悲しみの声。

『‥‥‥タスケテクレ』

そして、救いを求める声。

だんだんと蜘蛛は赤く光が強くなっていく。

「おい、なにやってんだ!!」

カエサル様の驚愕した顔が見える。


悲しい、苦しい、辛い、憎い。そんな負の声が身体中に響いて涙が溢れて地面に吸い込まれていく。

でも、

【もう、大丈夫だよ。戦わなくていいの。貴方は一人じゃない。私が助けるから!】

『ヒトリジャナイ?』

【うん。一人じゃない!だから、ね。大丈夫なんだよ。】

微笑んだ。涙でぐしゃぐしゃの顔だ。とても見られるようなものじゃないと思う。

でも、最後に相手も笑ってくれたと思う。
赤くなっていた光は白くなりきらきらとよりいっそう輝いて空に上っていった。
綺麗だと思った。

私が前世のファンタジー小説で読んだように魔物は、人から生まれるんじゃないかな。
人の負の感情から。
でも、そんな言葉で表せるほど軽いものじゃなくて。

誰だって、産まれたままの純真無垢な心のままでいられるわけじゃない。
汚いもの、自分の中にある嫌なところ、そんなものに触れて行かなくてはいけない。
魔物はそれを受け入れられなかった憤りの心。

そんな気がした。
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