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1章
パン屋と子供達
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3人が一番に向かったのは、先程話していたパン屋であった。
時間帯的にも、もうすぐお腹が空くだろうし、パン屋はシースグリースに一軒しかなく、いつも人が集まるのだそうだ。
道行く途中には、初日に比べたらやはり少ないがちらほらと精霊が飛んでいるのが見えた。
天気が良いので思ったよりも暖かい。
「シーナ様、目は隠さなくてもいいのですか……?」
「えぇ!……だって、これからこのハース領にはお世話になるのだから、ね?」
「……そうですね、」
リタは何処と無く心配そうにしているのを見ると、私も何だか不安になってしまいそうだ。
だが、そんな二人を見たフィオラさんが、にこにこと笑いながら、
「大丈夫です。シースグリースに住む人々は皆、気の良い方ですから。……それに、ここで長く暮らすもので精霊眼を異質視する人はいないと思います……。」
「そ、そうなんですか?!」
「はい、そのまま街を歩けば分かります。ほら……街ですよ!」
シーナ達3人は、人気の多い表通りを歩く。
フィオラさんは、多くの人に笑いながら挨拶をし、時には私達の紹介も混じえてくれた。
けれど、表通りだとやはり好奇の視線が全身にちくちくと刺さるようで幾ばくか居心地が悪い。
かといって、裏通りに入るわけにもいかないとので、私達はこのまま歩き続けた。
「ああー!!見てみて!アーシュ!お星様の目、お星様の目なのよーー!!」
「え?おほししゃま?」
突然少し甲高い大きな話し声が聞こえた。
まだ、小さな子供だ。
きゃーきゃーと騒ぎながら、シーナの足下に寄ってくる。
キラキラと瞳が輝いていてとても可愛らしい姉妹だ。
「お星様の目って……?」
リタが小首を傾げる。
「えっと……フィオラさん、後でリタにも話して頂いてもいいですか?」
「はい、もちろん構いませんよ」
「何の話ですか?」
「ハースカティナに伝わる伝承の話よ」
リタだけが仲間はずれのようで心苦しいので、後で説明してもらうことにした。
「しゅごいのー!!」
「ねぇー!」
フィオラさんは、優し気な笑みを浮かべて、子供達を見ているが、シーナは突然のことに少し慌てながら、周りを走り回る子供達の声を聞いていた。
伝承はシースグリースにも伝わっていることなのだろうか?
こんなに小さな子供達にまで……。
「この子達はメーラの子供なのですよ。上の子がカタルナ、妹の方がアーシュです。」
「カタルナです!!ルナって呼んで~なの!!」
「あーしゅ、れす!!」
「ふふふっ、可愛らしいですね、シーナ様!」
「えぇ……!!」
二人は、薄い茶色のくるん、とした髪に、少し濃い茶色の瞳だ。
お揃いのピンク色のワンピースには袖口などにフリルがついていてとても可愛い。
身長が私の腰くらいまでしかないので、お星様の目を見ようと背伸びをして、それでも足りないのかぴょこぴょこと跳び跳ねている。
子供、小さい子……シーナは王都では、小さな子供と触れ合う機会などなかったのでとても愛らしいその様子に大分驚いていた。
「何歳ですか~?」
「カタルナはね、七歳です!あ、アーシュは五歳なの!!」
「じゃあ、二人ともお母さんのお店まで、案内してくれるかな?」
「「うん!!」」
元気一杯なその姿に癒されつつ、私達はメーラさんが営むパン屋に向かう。
カランカラン。
「いらっしゃいませ~!」
店の扉を開くと、入店を知らせるベルがなる。
店の中は、焼いたパンのほんのり甘い香りが漂っていてて、お客さんも10数人いた。
視線が一斉にシーナの瞳へと向かったところで、シーナは話始める。
「……は、初めまして!暫くここに、この領で過ごすことになりました。シーナスティア・リード・ハースカティナです。以後よろしくお願いします!」
外から見たよりも店内は広く感じられる。
緊張はしたけれど、全部言えた。
一度、シーン、と音が消えたけれど、次第に、よろしくなーと声が大きくなっていき、ここでの挨拶は何事もなく終わった。
そして、次はパンだ。
パンは焼き上がったものから台に乗せられていく。
色々な形のパンが次々に並べられていき、店内にいる客がそれの周りに集まる。
「もうすぐ、木苺ソースのパンが焼けまーす!」
大きく、声が聞こえた。
「おかあしゃん!」
「木苺ソースのパンはとっても美味しいの!!」
ルナとアーシュがにこりと笑ってそう言うので、私とフィオラさんも並べられた商品を吟味しつつ、リタに木苺ソースのパンが来るのを待っていてもらった。
「ルナ達はお手伝いするんだよ!偉いー?」
「えへへー!!」
「とっても偉いですよ!」
「うん!じゃあ、またねっ!!」
二人は、人々の隙間を器用に縫って、店の奥へ入って行った。
そして、買うパンが全て手元に揃うと、私とリタはお会計をするための列に並んだ。フィオラさんには先に外で食べる場所を取っていてもらう。
手元にある紙に包まれたパンはほかほかと温かい。
「あ、この間のお婆さん!」
「買いに来てくれたのかい?」
お店の看板に着いて説明してくれた、あのお婆さんだ。
あの時よりも活気があって、楽しそうでお会計をするために奔走ううしている。
「はい、とても美味しそうですね」
「あぁ、メーラはパンを焼くのだけは上手いんだよ。それにしても、あなた星の瞳だったんだね。初めて見たけれど、とっても綺麗だね」
「あ、ありがとうございますっ……!」
……初めて?
シフは……?
……いや、きっとシースグリースではなく、村の方にすんでいるのだろう。
「また、ご贔屓にしてくれれば嬉しいね。」
「また、来ますよ!」
また、カランカランとなるベルを後ろに、2人は手を振りながらお店を出た。
「リタさん、シーナ様、今日は天気も良いので、広場で食べましょう。終わったら、次は町長の家に……」
「はい、分かりました!」
「はい!!」
「では、広場へ行きましょうか。」
そして、広場でも同じように挨拶をし、3人は美味しくパンを頂いた。
木苺ソースのパンは、あまり高級品の砂糖があまり使われていないため、木苺その物の甘酸っぱさがとても美味しかった。
また、食べたいな、このパンは。
時間帯的にも、もうすぐお腹が空くだろうし、パン屋はシースグリースに一軒しかなく、いつも人が集まるのだそうだ。
道行く途中には、初日に比べたらやはり少ないがちらほらと精霊が飛んでいるのが見えた。
天気が良いので思ったよりも暖かい。
「シーナ様、目は隠さなくてもいいのですか……?」
「えぇ!……だって、これからこのハース領にはお世話になるのだから、ね?」
「……そうですね、」
リタは何処と無く心配そうにしているのを見ると、私も何だか不安になってしまいそうだ。
だが、そんな二人を見たフィオラさんが、にこにこと笑いながら、
「大丈夫です。シースグリースに住む人々は皆、気の良い方ですから。……それに、ここで長く暮らすもので精霊眼を異質視する人はいないと思います……。」
「そ、そうなんですか?!」
「はい、そのまま街を歩けば分かります。ほら……街ですよ!」
シーナ達3人は、人気の多い表通りを歩く。
フィオラさんは、多くの人に笑いながら挨拶をし、時には私達の紹介も混じえてくれた。
けれど、表通りだとやはり好奇の視線が全身にちくちくと刺さるようで幾ばくか居心地が悪い。
かといって、裏通りに入るわけにもいかないとので、私達はこのまま歩き続けた。
「ああー!!見てみて!アーシュ!お星様の目、お星様の目なのよーー!!」
「え?おほししゃま?」
突然少し甲高い大きな話し声が聞こえた。
まだ、小さな子供だ。
きゃーきゃーと騒ぎながら、シーナの足下に寄ってくる。
キラキラと瞳が輝いていてとても可愛らしい姉妹だ。
「お星様の目って……?」
リタが小首を傾げる。
「えっと……フィオラさん、後でリタにも話して頂いてもいいですか?」
「はい、もちろん構いませんよ」
「何の話ですか?」
「ハースカティナに伝わる伝承の話よ」
リタだけが仲間はずれのようで心苦しいので、後で説明してもらうことにした。
「しゅごいのー!!」
「ねぇー!」
フィオラさんは、優し気な笑みを浮かべて、子供達を見ているが、シーナは突然のことに少し慌てながら、周りを走り回る子供達の声を聞いていた。
伝承はシースグリースにも伝わっていることなのだろうか?
こんなに小さな子供達にまで……。
「この子達はメーラの子供なのですよ。上の子がカタルナ、妹の方がアーシュです。」
「カタルナです!!ルナって呼んで~なの!!」
「あーしゅ、れす!!」
「ふふふっ、可愛らしいですね、シーナ様!」
「えぇ……!!」
二人は、薄い茶色のくるん、とした髪に、少し濃い茶色の瞳だ。
お揃いのピンク色のワンピースには袖口などにフリルがついていてとても可愛い。
身長が私の腰くらいまでしかないので、お星様の目を見ようと背伸びをして、それでも足りないのかぴょこぴょこと跳び跳ねている。
子供、小さい子……シーナは王都では、小さな子供と触れ合う機会などなかったのでとても愛らしいその様子に大分驚いていた。
「何歳ですか~?」
「カタルナはね、七歳です!あ、アーシュは五歳なの!!」
「じゃあ、二人ともお母さんのお店まで、案内してくれるかな?」
「「うん!!」」
元気一杯なその姿に癒されつつ、私達はメーラさんが営むパン屋に向かう。
カランカラン。
「いらっしゃいませ~!」
店の扉を開くと、入店を知らせるベルがなる。
店の中は、焼いたパンのほんのり甘い香りが漂っていてて、お客さんも10数人いた。
視線が一斉にシーナの瞳へと向かったところで、シーナは話始める。
「……は、初めまして!暫くここに、この領で過ごすことになりました。シーナスティア・リード・ハースカティナです。以後よろしくお願いします!」
外から見たよりも店内は広く感じられる。
緊張はしたけれど、全部言えた。
一度、シーン、と音が消えたけれど、次第に、よろしくなーと声が大きくなっていき、ここでの挨拶は何事もなく終わった。
そして、次はパンだ。
パンは焼き上がったものから台に乗せられていく。
色々な形のパンが次々に並べられていき、店内にいる客がそれの周りに集まる。
「もうすぐ、木苺ソースのパンが焼けまーす!」
大きく、声が聞こえた。
「おかあしゃん!」
「木苺ソースのパンはとっても美味しいの!!」
ルナとアーシュがにこりと笑ってそう言うので、私とフィオラさんも並べられた商品を吟味しつつ、リタに木苺ソースのパンが来るのを待っていてもらった。
「ルナ達はお手伝いするんだよ!偉いー?」
「えへへー!!」
「とっても偉いですよ!」
「うん!じゃあ、またねっ!!」
二人は、人々の隙間を器用に縫って、店の奥へ入って行った。
そして、買うパンが全て手元に揃うと、私とリタはお会計をするための列に並んだ。フィオラさんには先に外で食べる場所を取っていてもらう。
手元にある紙に包まれたパンはほかほかと温かい。
「あ、この間のお婆さん!」
「買いに来てくれたのかい?」
お店の看板に着いて説明してくれた、あのお婆さんだ。
あの時よりも活気があって、楽しそうでお会計をするために奔走ううしている。
「はい、とても美味しそうですね」
「あぁ、メーラはパンを焼くのだけは上手いんだよ。それにしても、あなた星の瞳だったんだね。初めて見たけれど、とっても綺麗だね」
「あ、ありがとうございますっ……!」
……初めて?
シフは……?
……いや、きっとシースグリースではなく、村の方にすんでいるのだろう。
「また、ご贔屓にしてくれれば嬉しいね。」
「また、来ますよ!」
また、カランカランとなるベルを後ろに、2人は手を振りながらお店を出た。
「リタさん、シーナ様、今日は天気も良いので、広場で食べましょう。終わったら、次は町長の家に……」
「はい、分かりました!」
「はい!!」
「では、広場へ行きましょうか。」
そして、広場でも同じように挨拶をし、3人は美味しくパンを頂いた。
木苺ソースのパンは、あまり高級品の砂糖があまり使われていないため、木苺その物の甘酸っぱさがとても美味しかった。
また、食べたいな、このパンは。
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