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エピローグ
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ここで本当にキスしてしまって良いのだろうか?
少し悩んでしまうが、結衣だって今の言葉を口にするのにかなり勇気を出してくれたみたいだ。
よく見るとその小さな方は小刻みに震えていた。
それでもキスの態勢から動かない。
さすがにこの状態で何もしない……、というのは考えられない。
俺もゆっくり結衣の口に自分のそれを近づけていく。
するとその瞬間に前の観覧車に乗っている相場たちと目が合ってしまう。
彼らは俺たちの様子をまるで監視するかのようにジッと眺めていた。
その瞬間に俺は思わず離れようとするが、ちょうどそのタイミングで観覧車が揺れ、そして、結衣の口と俺の口がそっと触れあっていた。
相場たちには観覧車が揺れたから抱きとめただけにしか見えないだろう。
ただ、はっきりと俺には結衣の柔らかい口の感触を感じてしまった。
一瞬で顔が赤くなる俺たち。
俺が観覧車の席に着くとその隣に結衣も小さくなって座り込む。
恥ずかしさで縮こまっているからか、いつにも増して小さく見える。
そんな俺たちを見て、相場は満足したようでこちらを覗き込むのはやめていた。
「そ、その……、いざしてみると……、恥ずかしいね……」
結衣は乾いた笑みを浮かべながら俺の方を向いてくる。
「そうだな。これは少し恥ずかしいな」
「で、でも、恋人はこれを毎日のようにするんだよね?」
「ま、毎日かどうかはわからないが、頻繁にしてるな」
ただ、それはテレビとかで見たものの話で実際にしてるかどうかは怪しいところだった。
「流石に毎日これをするのは信じられないよ……」
結衣は恥ずかしそうに頬に手を当てていた。
「まぁ、俺たちのペースで頑張っていけばいいよ」
「そ、そうだね。ただ、今度はさっきみたいにたまたま当たった状態じゃなくて、しっかりとキスをしたいね……」
恥ずかしそうになりながらも自分の意見をはっきり言えるようになった結衣。
それを聞いて俺は小さくうなずいた。
そして、二人で手を繋いで観覧者が地上に戻るのを待っていた。
◇
地上に戻ってくると佐倉が大きく手を振ってくる。
「あっ、結衣ちゃん。どうだった? 良い雰囲気だったみたいだけど」
「えっ、み、見てたの?」
結衣が恥ずかしそうに顔を赤くする。
「まぁ、俺は気づいていたんだけどな……」
「な、なんで言ってくれないの!?」
「だって、さすがにあの雰囲気で口にすることはできないぞ……」
「うぅ……、恥ずかしいよ……」
「あと少しだったね、結衣ちゃん。次はちゃんとできるから頑張って」
佐倉が結衣のことを応援する。
そこで結衣は不思議そうな顔をする。
「えっ、あれっ?」
ただ、このままだと結衣が余計なことを言いそうなので口を挟む。
「それよりも二人の方がどうだったんだ?」
「えっ、私たち? 何もあるはずがないでしょ」
佐倉は驚いたように答える。
ただ、すこし頬が染まったところを見ると良い方向に進んでいったようだ。
「そうか……、それじゃあそろそろ帰るか」
「そうだね」
「あっ、私は相場に送ってもらうから結衣ちゃん達も気をつけて帰ってね」
佐倉が手を振って反対の方向へ走っていった。
まだ二人きりになりたかったのか、それとも俺たちに気を遣ってくれたのか……。
「それじゃあ俺たちも帰るか」
「うんっ」
笑顔で頷く結衣。
そんな彼女を家に送って帰る。
そして、結衣の家の前。
彼女は頬を染めて俺のことを見てくる。
「そ、その……、今日はありがとう」
「あぁ、俺も楽しかったよ」
「う、うん、それに……、その――」
結衣がもぞもぞと動きながら唇に手を当てていた。
「そうだな。最初のことから比べるとだいぶ恋人らしくなってきたよな」
「うん、だから次は勢いに任せて……じゃなくて、自分からできるように頑張るね」
結衣が頬を染めながら笑みを見せてくる。
そんな彼女を見ていると俺自身ももっと頑張らないといけないなとグッと手を握りしめていた。
そして、結衣に近付くとさっきみたいにバランスを崩して触れるだけのキスではなく、俺自身の意思で彼女の口にそっと自分の口を当てる。
感覚的には観覧車の中と同じ。
でも、自分からしたと言うことで俺は直接結衣が見られないほどに恥ずかしくなる。
それは結衣も同じなようで完全に思考が停止しているようだった。
時間をすこし空けてからようやく考えが追いついたのか、結衣が真っ赤になりながら声をあげる。
「えっ? えっ?」
「その……、なんだ。せっかく初めてした日なんだからあんな事故みたいなものじゃなくてしっかりしておきたいなって――」
「う、うん、そ、そうだね。その……ありがとう……」
何を言って良いのかわからずに結衣はお礼を言ってくる。
そして、二人して恥ずかしがっている様子がおかしくなって、いつの間にか俺たちは照れながらも笑みを浮かべていた。
「その、卓人君、これからもよろしくね」
「あぁ、俺の方こそよろしくな」
少し悩んでしまうが、結衣だって今の言葉を口にするのにかなり勇気を出してくれたみたいだ。
よく見るとその小さな方は小刻みに震えていた。
それでもキスの態勢から動かない。
さすがにこの状態で何もしない……、というのは考えられない。
俺もゆっくり結衣の口に自分のそれを近づけていく。
するとその瞬間に前の観覧車に乗っている相場たちと目が合ってしまう。
彼らは俺たちの様子をまるで監視するかのようにジッと眺めていた。
その瞬間に俺は思わず離れようとするが、ちょうどそのタイミングで観覧車が揺れ、そして、結衣の口と俺の口がそっと触れあっていた。
相場たちには観覧車が揺れたから抱きとめただけにしか見えないだろう。
ただ、はっきりと俺には結衣の柔らかい口の感触を感じてしまった。
一瞬で顔が赤くなる俺たち。
俺が観覧車の席に着くとその隣に結衣も小さくなって座り込む。
恥ずかしさで縮こまっているからか、いつにも増して小さく見える。
そんな俺たちを見て、相場は満足したようでこちらを覗き込むのはやめていた。
「そ、その……、いざしてみると……、恥ずかしいね……」
結衣は乾いた笑みを浮かべながら俺の方を向いてくる。
「そうだな。これは少し恥ずかしいな」
「で、でも、恋人はこれを毎日のようにするんだよね?」
「ま、毎日かどうかはわからないが、頻繁にしてるな」
ただ、それはテレビとかで見たものの話で実際にしてるかどうかは怪しいところだった。
「流石に毎日これをするのは信じられないよ……」
結衣は恥ずかしそうに頬に手を当てていた。
「まぁ、俺たちのペースで頑張っていけばいいよ」
「そ、そうだね。ただ、今度はさっきみたいにたまたま当たった状態じゃなくて、しっかりとキスをしたいね……」
恥ずかしそうになりながらも自分の意見をはっきり言えるようになった結衣。
それを聞いて俺は小さくうなずいた。
そして、二人で手を繋いで観覧者が地上に戻るのを待っていた。
◇
地上に戻ってくると佐倉が大きく手を振ってくる。
「あっ、結衣ちゃん。どうだった? 良い雰囲気だったみたいだけど」
「えっ、み、見てたの?」
結衣が恥ずかしそうに顔を赤くする。
「まぁ、俺は気づいていたんだけどな……」
「な、なんで言ってくれないの!?」
「だって、さすがにあの雰囲気で口にすることはできないぞ……」
「うぅ……、恥ずかしいよ……」
「あと少しだったね、結衣ちゃん。次はちゃんとできるから頑張って」
佐倉が結衣のことを応援する。
そこで結衣は不思議そうな顔をする。
「えっ、あれっ?」
ただ、このままだと結衣が余計なことを言いそうなので口を挟む。
「それよりも二人の方がどうだったんだ?」
「えっ、私たち? 何もあるはずがないでしょ」
佐倉は驚いたように答える。
ただ、すこし頬が染まったところを見ると良い方向に進んでいったようだ。
「そうか……、それじゃあそろそろ帰るか」
「そうだね」
「あっ、私は相場に送ってもらうから結衣ちゃん達も気をつけて帰ってね」
佐倉が手を振って反対の方向へ走っていった。
まだ二人きりになりたかったのか、それとも俺たちに気を遣ってくれたのか……。
「それじゃあ俺たちも帰るか」
「うんっ」
笑顔で頷く結衣。
そんな彼女を家に送って帰る。
そして、結衣の家の前。
彼女は頬を染めて俺のことを見てくる。
「そ、その……、今日はありがとう」
「あぁ、俺も楽しかったよ」
「う、うん、それに……、その――」
結衣がもぞもぞと動きながら唇に手を当てていた。
「そうだな。最初のことから比べるとだいぶ恋人らしくなってきたよな」
「うん、だから次は勢いに任せて……じゃなくて、自分からできるように頑張るね」
結衣が頬を染めながら笑みを見せてくる。
そんな彼女を見ていると俺自身ももっと頑張らないといけないなとグッと手を握りしめていた。
そして、結衣に近付くとさっきみたいにバランスを崩して触れるだけのキスではなく、俺自身の意思で彼女の口にそっと自分の口を当てる。
感覚的には観覧車の中と同じ。
でも、自分からしたと言うことで俺は直接結衣が見られないほどに恥ずかしくなる。
それは結衣も同じなようで完全に思考が停止しているようだった。
時間をすこし空けてからようやく考えが追いついたのか、結衣が真っ赤になりながら声をあげる。
「えっ? えっ?」
「その……、なんだ。せっかく初めてした日なんだからあんな事故みたいなものじゃなくてしっかりしておきたいなって――」
「う、うん、そ、そうだね。その……ありがとう……」
何を言って良いのかわからずに結衣はお礼を言ってくる。
そして、二人して恥ずかしがっている様子がおかしくなって、いつの間にか俺たちは照れながらも笑みを浮かべていた。
「その、卓人君、これからもよろしくね」
「あぁ、俺の方こそよろしくな」
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