上 下
105 / 111

我が君の最後は決まっています

しおりを挟む
 我が君に背中を撫でられて、いい加減くすぐったいですしやめて欲しい。もう十分見たでしょう?

「いい加減やめてください」
「もうちょっと」
「…もういいでしょうに」
「ん、いや、だってお前これ、見せてくれないじゃないか」
「これ、あんたに向けられた害意ですよ。なんで見たがるんですか」
「お前が退けた数でもあるし、俺の罪でもある。だから見たい」

 罪、ね。確かにそうですね。私はルーヴェリア様の代わりにその害意を祓っているようなモノですから。

「…手間ですし」
「んー…髪色もあの時だけだしな。今はもう全部染まったか」

 髪色ね。守っただけ、ルーヴェリア様の目の色に染まる髪色は、私の誇りでもあるのですが。ただ、それを大っぴらに見せてしまうと誰を守っているか院に知られてしまうので染めていますが…もう院にはバレているので良い様な気もします。ああ、顔変えればまだ何とかいけますかね。

「当然といいますか…すべて染まって、髪切りましたからね」
「え、じゃあ…あの後すぐ…あ、あの襲撃か」
「そうそう、あの襲撃。あの後からヌルくてつまらなかったんですけれど、この間久しぶりに楽しめました」

 襲撃者の人数も、魔術が使える王都外という事もあって、楽しめましたね。天気も良かったので、ルーヴェリア様の色の空色を氷に移しこむと本当に美しくてイイですし、なにより久しぶりに結構な数、殺しましたし。

「それでコレとか…多かったとは言ってたが、そんなに?」
「100位じゃないですかね。もっと頻繁に王都出てみましょうかね」
「お前な…それでお前が死んだら俺、どうするんだよ」
「やだなぁ、貴方を残して、俺が死ぬわけないじゃないですか。あんたは寿命で死ぬのが決まってるんです」

 そう。俺が、私が、わたくしが。我が君を守ると誓った後に決めた事。自身に誓った、それ。

「断言されるとか。お前が先に寿命で死んだらどうすんだ」
「あんた殺してから逝くんじゃないですかね」
「うわぁ…」
「あんたが寿命で死ぬならいいですが…誰かの手で殺されるなんて、プライドが許せませんしね。当然じゃないですか」

 いくら、自分が死んだ後とはいえ…それで誰かに我が君の命を取られるのは、ね。

「それでお前に殺されるとか…」
「大丈夫、恐怖も痛みもない様にしてさしあげますから」
「その心配はしてないし、心配する所、そこじゃないからな」
「では何が心配なんですか」
「お、ま、え」

 私?どこに心配する要素があるのでしょう。

「その心がもつのか」
「どうせその後すぐ死ぬのに?」

 心、ね。まあ、確かに狂う可能性はありますが、私の心臓を捧げて死ぬのに、狂う訳がないじゃないですか。

「あ、そうだった」
「アホですね」
「うるさい。あ。お前、髪切ったやつ、取ってあるんだろ?あるよな?」
「ありますけれど、それが何か?」
「俺にくれ。少しでいいから」
「構いませんけれど…呪いの品にするとか言わないですよね」
「言わないが、似たような物か?」
「?」
「遺髪として持っておこうかと」
「あんたより先に死なないって言ってるでしょうに」
「分からんだろうが。どうせお前の遺体は見られないだろうし」

 やられるつもりはありませんが、まあ細切れか炭化させられますしね。王族には見せられない死体になるので、その通りではありますが…

「まあ綺麗に首飛んでるならまだましでしょうけれど。分かりました。あとでお持ちしますね。で、いいかげんいいですか」
「えー…もっと見ていたい」
「…さっきから何気に数数えてませんか」
「あ、ばれたか」
「ちなみに一人一つじゃないですよ」
「そうなの!?」
「危険度とかそう言いう物も関係しているようですね。この間の襲撃は、貴方を直接狙った訳ではないので、三分の一位じゃないですかね」
「本当に面白いな…もういいぞ。ん?あれ。ネルア嬢、意識あるか?」
「え?ネルア嬢、大丈夫ですか?」

 ルーヴェリア様の言葉にネルア嬢を見れば、遠い目をしてますが…一体どうしたというのでしょうか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

拾ったのは私なのに

りんご率
恋愛
※ヤンデレ注意 伯爵令嬢であるジュリーナは美しい瞳の奴隷を買った、身分しかない少女と実力がある少年が恋する話し 少し切なくて少し愛の怖い話し 美丈夫で腕っ節が強く腹黒いヤンデレ×達観したツン度90%の神経太い平凡令嬢 主人公は割と面の皮が厚いのでそこまで悲壮感はないかと ヤンデレが苦手な方はご注意下さい 全19話 完結済みで一日一話予約投稿済みです

完結 R18 媚薬を飲んだ好きな人に名前も告げずに性的に介抱して処女を捧げて逃げたら、権力使って見つけられ甘やかされて迫ってくる

シェルビビ
恋愛
 ランキング32位ありがとうございます!!!  遠くから王国騎士団を見ていた平民サラは、第3騎士団のユリウス・バルナムに伯爵令息に惚れていた。平民が騎士団に近づくことも近づく機会もないので話したことがない。  ある日帰り道で倒れているユリウスを助けたサラは、ユリウスを彼の屋敷に連れて行くと自室に連れて行かれてセックスをする。  ユリウスが目覚める前に使用人に事情を話して、屋敷の裏口から出て行ってなかったことに彼女はした。  この日で全てが終わるはずなのだが、ユリウスの様子が何故かおかしい。 「やっと見つけた、俺の女神」  隠れながら生活しているのに何故か見つかって迫られる。  サラはどうやらユリウスを幸福にしているらしい

伯爵令嬢のユリアは時間停止の魔法で凌辱される。【完結】

ちゃむにい
恋愛
その時ユリアは、ただ教室で座っていただけのはずだった。 「……っ!!?」 気がついた時には制服の着衣は乱れ、股から白い粘液がこぼれ落ち、体の奥に鈍く感じる違和感があった。 ※ムーンライトノベルズにも投稿しています。

王女の朝の身支度

sleepingangel02
恋愛
政略結婚で愛のない夫婦。夫の国王は,何人もの側室がいて,王女はないがしろ。それどころか,王女担当まで用意する始末。さて,その行方は?

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

騎士団長の欲望に今日も犯される

シェルビビ
恋愛
 ロレッタは小さい時から前世の記憶がある。元々伯爵令嬢だったが両親が投資話で大失敗し、没落してしまったため今は平民。前世の知識を使ってお金持ちになった結果、一家離散してしまったため前世の知識を使うことをしないと決意した。  就職先は騎士団内の治癒師でいい環境だったが、ルキウスが男に襲われそうになっている時に助けた結果纏わりつかれてうんざりする日々。  ある日、お地蔵様にお願いをした結果ルキウスが全裸に見えてしまった。  しかし、二日目にルキウスが分身して周囲から見えない分身にエッチな事をされる日々が始まった。  無視すればいつかは収まると思っていたが、分身は見えていないと分かると行動が大胆になっていく。  文章を付け足しています。すいません

あなたの剣になりたい

四季
恋愛
——思えば、それがすべての始まりだった。 親や使用人らと退屈ながら穏やかな日々を送っていた令嬢、エアリ・フィールド。 彼女はある夜、買い物を終え村へ帰る途中の森で、気を失っている見知らぬ少年リゴールと出会う。 だが、その時エアリはまだ知らない。 彼との邂逅が、己の人生に大きな変化をもたらすということを——。 美しかったホワイトスター。 憎しみに満ちるブラックスター。 そして、穏やかで平凡な地上界。 近くて遠い三つの世界。これは、そこに生きる人々の物語。 著作者:四季 無断転載は固く禁じます。 ※2019.2.10~2019.9.22 に執筆したものです。

【R18】私は婚約者のことが大嫌い

みっきー・るー
恋愛
侯爵令嬢エティカ=ロクスは、王太子オブリヴィオ=ハイデの婚約者である。 彼には意中の相手が別にいて、不貞を続ける傍ら、性欲を晴らすために婚約者であるエティカを抱き続ける。 次第に心が悲鳴を上げはじめ、エティカは執事アネシス=ベルに、私の汚れた身体を、手と口を使い清めてくれるよう頼む。 そんな日々を続けていたある日、オブリヴィオの不貞を目の当たりにしたエティカだったが、その後も彼はエティカを変わらず抱いた。 ※R18回は※マーク付けます。 ※二人の男と致している描写があります。 ※ほんのり血の描写があります。 ※思い付きで書いたので、設定がゆるいです。

処理中です...