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3章:異世界と日本との二重生活の始まり

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 キルギスさんと松田さんの戦いはキルギスさんが勝った。ゲーム自体は単純で、ある意味将棋やチェスなんかと似てる。ただ、役や進ませ方が決まってる訳ではなく一つの駒を先行後攻で順番に一つしか動かせず、相手の駒がいる所に動かせばその駒を取れる。そうやって取っていって、なくなったら終了という物らしい。
 盤面はどのように使ってもいいらしく、二人だと動かせる範囲が広くて勝負に時間が掛かるからと制限をかけたりもするそうだ。他の色の駒でここからここの範囲でやる、とかね。

「ある意味将棋の歩兵で、縦横無尽に動ける駒って感じかな~」
「確かにそんな感じですね。本気でやったらすっごい時間かかりそう」
「だから制限を好きに付けられるんだけどね~」

 松田さんはそう言って、やっぱり貴族は強いという。

「貴族、ですか?」
「その、まあ…戦争とかで戦略を考えると、な」

 学校の授業でも戦略の一環としてこの遊戯をするらしい。言われてみれば、この丸い盤面がフィールドと捉えればなるほど確かに。6人でやるときも結託も可らしい…それを聞いちゃうと生々しいというか。

「とはいえ、実際は人の能力がものを言うからな。松田が居れば魔法でなんとかしそうだし」
「あはは。魔物なら大歓迎だけどね~人はヤダ」
「分かっている」

 ああ、松田さんはそこは線引きというか、決めてるのね。まあ、そりゃそうか…いくら異世界、法が違うと言っても出来ないものはできないよね。

「ユカ、やってみるか?最初は少ない駒で試してみるのもいい」
「そうね、やってみるわ」
「ではお相手は私が」

 スーザンさんが名乗り出てくれて、最初は駒を10個だけにして極小の範囲でスタートです。駒の進め方なんかもキルギスさんに教わりながらやってみると、奥深いというか、難しい…

 その後全員でやってみたけど、スタートエリアはあらかじめ結託した状態にしたり、くじで決めたりと様々な条件でやってみた。とはいえみんなからここがいいとか、そこはとられちゃうからとかアドバイスが飛んできて、敵ってなんだろうと遠い目になったりしたけども。

「どうしようか。キャンプファイヤー的なのやる?まあ焚火ながめながら明日の事決めるだけなんだけど」
「そうですね…せっかくなのでしたいです」

 という事で、焚火を囲んでお茶します。焚火といっても、着火は魔法でしたので火起こしの苦労がなくていい。

「朝ごはんはどうしようか。一応こっちのオーソドックスな物だと干し肉入れたスープだけとか、米を入れて雑炊っぽくした物とか、簡単に練った小麦を入れる場合もあるけど…一応マジックバックにパンもあるよ」
「ここまで来たらこちらの世界基準に合わせます」
「基準という訳ではないのだがな」

 松田さんの説明に、結構ちゃんとした物なのだなと思う。だって飲み物だけで出発とかもあるかなって思ってたから。だから合わせると言えば、キルギスさんが困った様に笑いながらそう言う。
 マジックバックを持ってる人も、まぁまぁいるみたいだしね。時間停止がなくても、パンなら2~3日は大丈夫だろうし、乾麺ならそれこそ日持ちするだろうから。

「じゃあ雑炊にしようか。お米がまだ残ってるし。ルシーちゃん、一緒に作るの手伝ってくれる?」
「分かったわ。じゃあ干し肉をお鍋に入れて火にかけておいてね」

 明日の朝食があっという間に決まってしまった。そうして次は明日の日程を決める事になったけど…

「ユカにはゆっくり休んで欲しいんだ。また日を改めてもいいだろう?」
「ここまで来たなら少しだけ足を延ばせばいける距離じゃない。いい景色を見てもらった方がいいでしょう?」

 と、キルギスさんとスーザンさんで意見が食い違う事になるとは。
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