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3章:異世界と日本との二重生活の始まり

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 という事で、異世界での湖畔コテージキャンプです。仕事は少し残業が発生したものの、予定通りに終わったので問題なくキャンプです。
 私は何も持ち込めないという設定なので、本当に何も用意してません。朝、といっても9時だけど、朝食を食べてから機関のあの部屋へと転移すれば、キルギスさん、スーザンさん、松田さんご夫婦がそろってました。奥さんも来てお店もそうだけど、大丈夫なのか聞けば、この世界の道具に関してはお店で扱っている物以外でも説明できるから専門家枠で、という事らしい。
 私と仲良くなれるように取り計らった、という理由もあるようだけど…

「ユカ、仕事は大変だったのか?疲れてないか?」
「ええ、概ね予定通りに終わったので大丈夫ですよ」
「そうか。それならいいんだが…慣れない馬車で疲れたらすぐに言ってくれ」

 と、何故か正面から心配そうな顔をしたり、ほっとした顔をしたりするイケメンから話しかけられるという状況はどきどきして困る。いやほんとこの顔にくらっとしてしまう女性の心理わかる…
 ルシーさんに馬車内に積んでる道具について説明を聞いてる間も、じっと見られて恥ずかしいというかなんというか。


 そんな道中だけど、湖畔までは王都まで行ったあの馬…スカイホースという種らしいけどその馬に馬車を引かせて向かった。あの速度で馬車壊れないの!?と思ったけれど、馬車の重さがあるのでスピードが落ちるのと車輪や車体を強化しているから問題ないのだとか。ショック吸収はサスペンションやタイヤの技術がすでにありましたよ。ここまでできてるのになんで車はないんだ。
 実際乗ってみれば、座面にクッションが効いていて振動がやわらげられていたから乗り心地もよかったし、座面が向い合せになってるから小さな電車みたいで湖で釣れる魚は淡白で美味しいとかそういう会話も弾んだしね。
 あと、馬車の中にテントや薪なんかもあるのよね。一応機能の差はあるけど、みんなマジックバック持ちなので必要ないのだけど…マジックバックを持ってない人がどうしてるのか体験してもらおう、という事らしい。
 とはいえ、キルギスさんや松田さんのマジックバックにはいろいろ詰まってるらしいけども。いつも使う物がたくさん入っているから取り出しすと大変だからという理由でしたけど。
 ということで、到着です。馬車からは華麗にキルギスさんにエスコートされて降りました。いやでもこれ手を取って降りる時どうするのよ。手すり扱いでいいわけ!?いやでもなんか力入れるのも恥ずかしいし、後でスーザンに聞こう。

「わ、すごい…」

 と、考えていたけれど、視線を上げたら可愛らしい木組みのコテージと、木々に湖という情景に思わず声を漏らす。

「そうだろう?今はまだそこまでではないが、貴族の避暑地としても使われることがあるからな。こっちだ」

 エスコートで手を握られたまま、コテージへと連れられて行くとか恥ずかしいんだけど!?でも、スーザンさんが困った様に笑って、先にコテージのドアを開けて待ってるし!?

「さ、どうぞ」
「…ありがとうございます」

 なんて、スーザンさんに言われつつコテージに入れば…カントリーハウスの様な内装で、日本ではコンクリとか壁紙のシンプルなデザインばかりに囲まれて生活している私には感動ものだった。

「うわぁ…これ、本物の木ですよね…すごい綺麗。なんだろ、ニスとか塗装全くないけどすっごいつるつるしてる。えーどういうこと…」
「これは職人の手にもよるが、使い込まれてすり減ってこうなっているのも理由のひとつだな」

 よろこんでもらえてよかった。と言って笑うキルギスさんだけど、その後コテージ内を見て回る間もずっと傍にいて説明してくれるのは…ありがたいけど…ありがたいけどっ!いい加減手を放してくれないかな…
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