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1章:癒しを求めたはずが

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 さて、街には日が沈み始める頃についた。ものすごいスピードの馬の上から、正面に見える広く大きな石壁に囲まれた街が見え始めて、街を壁で囲むとかすごいなとか、どれだけの労力必要なんだろうとか、入り口あそこだけだと混雑必至なんじゃなかろうかとか、色々考えつつ到着です。
 近くに行けば列が見えたけど、どうやら別の入り口があるらしい。街道が途中で分かれていて、大きな門から逸れて行く。他の街に向かう人も使う道なのだそうだけど、外壁から少し離れた場所を走る馬。入口なんてあるの?と不安になりかけた辺りで、街道から外壁の方に向かっていく。
 いや、道ないけど!?草原…っぽいので、馬なら問題なく走れるのかもしれないけど、いいのか!?と。
 そんな事を考えたのも一瞬で、壁に小さな門があるのが見えた。

「こっちは、私達機関の者が使う入口なんだ。兵士なんかも使うね。身分証の確認はされるけど、商人やら旅行者とは違って、急ぐ場合もあるからな」

 目の前にある門は、金属製の門で、近くにベルが釣り下がっていた。馬に乗ったまま、そのベルを引けば、金属窓に小窓があるらしく、それが開かれた。
 そうして、機関名と名前を名乗り、身分証を出そうとしたキルギスさんだけど…

「すぐ開けます!」

 と、言って、ぎぎ…と音を立てつつ、門がスライドされた。引き戸なのか…

「キルギス=フェンデル様、お帰りなさいませ」
「今は機関の任務中だ」
「失礼しました!では、領主様へ先ぶれはしない方がよろしいでしょうか」
「そうしてくれ」

 と、そんなやりとりをして馬を進めていく。キルギスさん、そういえば領主の末っ子って言ってましたもんね。この兵士さん、街を守る兵士さんだろうし、領主が雇ってる事になるだろうし…大変そう。
 と、考えていたら兵士さんと目が合ったので、ぺこりと頭を下げておく。困ったように笑い返されたけど。

「やはり同郷の者と同じ事をするんだな」

 と、キルギスさんに言われる。ああ、会釈とかするよね…こっちではそうじゃないのかな。

「名は出せんが、10年ほど前に連れて来た者と同郷らしい。今は元の世界へ戻る事を希望しているので、覚える必要はない」
「は!」

 その兵士さん…周りにも何人かいるけど、私は元の世界に帰るのだとキルギスさんが伝えれば、すこし残念そうな顔をされた。なんだろう、その日本人が好かれていたのか、それとも…何か期待されていることがあるのか。
 この世界も住んだら住んだでいい所もあるんだろうけど、いきなりすぎるし、環境がね。環境がね…!流石にいきなりあの環境に置かれたら、ちょっと生きていけない気がする…
 でもお風呂あるのかぁ…いや、でもあれがないこれがないって後悔するのも嫌だし。

 馬は、ゆっくりと歩くスピードで街を通る。あの速さで街中は危険よね。うん。
 機関の施設は近くにあった。これまた立派な壁に囲まれた建物。門があるけど、そこには門を守る兵士が立っていた。
 さっきの兵と同じようなやりとりをすると、門に入った後でキルギスさんに馬から降りるように言われる。

「まずは承認を得よう」

 そう言われて歩いて行くと、立派な建物のドアに到着。こちらにも警備の兵が立ってるのね。意外と物々しいんだけど…そう考えてしまうのは平和な日本にいたからだろうか…

 建物に入れば、広々としたホール。でも、飾り付けとかはなくて、すっきりとした印象。受付があるけど、その人に落ち人を保護したので、人を寄こすようにというだけ言って、こっちへ。と促される。
 言われるがままにキルギスさんについて行き、目の前の階段がを昇り、二階の一室へ入る。

「ここは落ち人の手続きをする為の部屋だ。すぐに人が来るから、手続きが済み次第、食事と寝床を案内しよう。昨夜と同じように、女性をつけるから安心してほしい」
「わかりました」

 昨日…あそこでは、結構よそよそしいというか、あまり接しない様にされたんだけど、ここでも同じなのかなぁ。
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