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1章:癒しを求めたはずが

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「では行くか」
「は、はい…」

 朝。日がさんさんと差し込む窓のおかげで早々と目が覚め、朝食を頂いて、キルギスさんに迎えに来られて現在…馬に乗ってます。キルギスさんと二人で。私が前に乗って、キルギスさんが後ろからこう、手綱を握ってるので…なんというか、はずかしいというか、いやこんなのしたことないし、男性とこんなに近づいたのっていつ…!!!

 と、どきどきしてたのなんか、あっという間になくなりました。
 いえ、ね…スピードはっや。地球の馬より絶対早い。景色があっという間に後方へと行ってしまう。それに、顔に当たる風がね。目が開けてられないくらいよね。バイクか!?

 休憩と称して河原で止まったけど、足がくがくでしたよ。上下に揺さぶられる感じはしなかったから、お尻が痛いとかそういう事はなかったけど、こう、恐怖感ていうの?

「すまない。その、貴女の同郷の者は問題なかったから」

 お姫様抱っこされて、運ばれましたよ…なんかもういろんな初体験しまくりですよ。いくつか休憩ポイントがあるらしく、木の丸太だけど椅子みたいになってる所に座らせてもらいました。

「ここで昼にしよう。茶を淹れるから待っててくれ」

 そう言って、あのマジックバックというやつから薪を取り出して、組んでいく。焚火か~火が安定するまではちょっと時間掛かるよねぇ。と思ったけど…なにやらぶつぶつ言ったかと思ったら、あっという間に火が点いていた。

「…え?」
「ん?どうかしたか」
「あ、いえ…その…」

 普通は小枝とか、木の皮なんかを剥いで種火にして、太い薪を徐々に燃やしていくんだけど…そんなの省略していきなり太い薪にも火が点いたよ!?その疑問をなんとか説明すると、困ったように笑う。

「火の魔法で、上手くコントロールさえすればこういう事も簡単に出来るんだ。生活魔法でも可能だけど、それだと貴女が言った手順が必要で、時間が掛かるな」
「生活魔法とかもあるんですか」
「飲み水を出したり、清潔を保つのも可能だな。この仕事に就くことを決めて、一番に極めたよ」

 山の中、海上とか、設備が整ってない場所でも生きていくには必須で、快適に過ごしたいと思ったら尚の事、らしい。
 飲み水出せるのはいいなぁ…山の中で水がなくなっても問題ないよね。

「私でも覚えられるんですか?」
「魔力があれば…後は向き不向きもあるからなんともいえないけど」

 日本人だから魔力がないとかそういうテンプレありますか。と、思わず聞いてみれば。

「貴女みたいに来た人だと、問題なく使えるらしいな。魔力の大小は人によるが、世界を渡る時に必ず付与されている…らしい」

 今まで保護した人は必ず魔力があったので。おそらくは。と言う。

「あと、スキルもあるらしい」
「スキル?」
「中くらいのマジックバックは必ず持っているし、何か前の世界で得意だった物が強化されたスキルを持っていたりするらしいね。ただ、人によるとしかいえないんだが」

 得意な物かぁ。うーん。なんだろう。一応どの町でも見る事は可能だから、これから行く街で見てみるかと聞かれる。それに頷けば困ったように笑う。

「なんで笑うんですか」
「いや、あいつもそうだが、すごく目を輝かせるから…ただ、」

 そう言って物凄く言い難そうに申し訳ないんだが、と言われる。

「日本に戻った場合も問題なく使えるんだが…その、奇異にみられる可能性が大きいと聞いた」
「…そう、ですね」

 確かに。日本では元々使えなかったのに、こっちに来ることで魔力が付与されるからなのかな。

「それでも、自分の得意な物が分かるのは良いと喜んでいたがね」

 まあ、今の仕事に文句はないけど…というか、あの子とは縁が切れた…から、今は別にねぇ。
 と、色々考えているとお茶が差し出された。いつの間に…あ。薪の陰で見えなかったのか。受け取って飲めば、香りも味も紅茶だ。

「美味しいです。ありがとうございます」
「口に合ったようでよかった。所で、こんな事を聞くのもなんだが…ああ、嫌なら答えなくてもいい」

 嫌に真剣なまなざしでそう切り出されてどきどきする。なんだろう、何を聞かれるんだろう。

「こちらの世界へ来る原因の一つとして、その人が持っている能力を世界が求めているからとか、魂の片割れがこちらの世界に生まれてしまったが故に引き寄せられるのだとか…まあ、様々な事を言われているんだが…」

 と、そう言って、じっと見つめられていた目が伏せられる。

「何か、嫌な事から逃げ出したい、という場合もあるらしいんだが、何か思い当たることは?」
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