上 下
129 / 150
終話:結婚式をして、それから

129

しおりを挟む
 ガーデンパーティーは、楽器を弾く一族の方達や、曲芸を披露する方もいて、本当に楽しい。料理もいろんな料理があって、わたくしもだけれど、お客様も楽しめているようでよかったわ。
 お客様として、ケニアを見かけたけれど…スウェン様に相手されているけれど、ぼんやりしていて大丈夫かしらと思う。

「あの、ラクシュ様。妹と話をしたいのですが…」
「ん。ああ…構いませんが、どういった話を?」

 どういった、って…元気にしているかとか、生活はどうなのか、とか…そういう事しかないけれど。それを伝えると、困ったように笑う。

「申し訳ないんですが、おそらく薬で操作されてますので」
「え?」
「薬でトんでます」
「え?」
「まあ、見たほうが早いですね」

 く、薬?トんで?麻薬の様な物でも使われているの?確かにラクシュ様に…以前睡眠薬なども使うとは聞いているけれど。

「スウェン様」
「ああ、今日はいい日でよかったな。おめでとう」
「ありがとうございます、というのはどうでもよくてですね。ネルアがケニア嬢とオハナシしたいようなんですが」

 ラクシュ様がそう言うと、スウェン様がわたくしを見て、にこり、と笑う。

「オハナシとは、なんでしょうか」
「えっと…元気でやっているのかですが、その、ぼーっとしているようなので」
「………」

 そう聞けば、スウェン様がケニアの耳元でなにかぼそぼそと言っている?

「げんき、ですわ、おねえさま」
「そう…」

 違和感がすっごくあるのだけれど。だから、ラクシュ様を見れば、くすくすと笑う。

「先ほどの教会では、上手い事意識を浮上させてましたが…あまり持ちませんか」
「そうですね。はは、ずいぶんとまあ悔しがってましたね。後程それをネタに、楽しみますが」
「まあ、ほどほどにしなさい。子は仕込まないので?」
「それだと楽しめないじゃないですか。意外と可愛いので、もっと楽しみたいんです」
「あーあ。ほんと、どうしようもない人ですねぇ」

 え、ちょっと…どういうことなの。

「少し認識をゆるくさせる薬を使ってまして。もともとの性格もあるでしょうが…」
「地位があればいい、という様な深層意識、でしたっけ。まあ、このようにスウェン様は地位のある所の子なので、やりやすいでしょう」
「快楽にも弱いので、薬がなくても従順になったんだけどなぁ…ネルア様につっかかっていかれても、困るので」

 なんてことを…!そう思うのに、声に出来ない。ラクシュ様の…その眼が笑うから。

「大丈夫。こいつも言っていたでしょう、可愛い、と。愛し方は人それぞれですよ」

 それは、そうかもしれないけれど…でも、薬を使ってまで。と、咎めたいのに。

「で、も」
「ネルア。今すぐ、ベッドに連れ込まれたいですか?これでも我慢してるのですが」

 なんとか声を出しても、そんな事を言われてしまう。そんな言葉で煙に撒こうとしないで欲しいのに、少しずつ、ラクシュ様の顔が変わる。慌てて、目を地面へと向けて逃げる事しかできない。…まだパーティーを楽しみたいと言えば、くすくすと笑うラクシュ様。

「被害が大きいので、止めてください」
「ふふ…分かっていますよ。ただ、ネルア。我慢しているというのは本当ですからね」

 慌てて目を逸らしたのだけれど、スウェン様の言葉に嘘だったの!?と、思わずラクシュ様を見れば、しっかりと釘を刺されました。
 我慢って…うう…このまま永遠とこのパーティーを楽しみたいわよ。

「まだまだドレスを替えますし、話をしていないお客様もいますので、安心してください」

 すべてのドレスで着飾ったわたくしを楽しみたいと言うラクシュ様だけれど…なんだか、楽しむ、という単語の方向性が…こう、おかしい気がするのは気のせいかしらね。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

二人の甘い夜は終わらない

藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい* 年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。

元彼にハメ婚させられちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
元彼にハメ婚させられちゃいました

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした!

如月 そら
恋愛
「それなら、いっそ契約婚でもするか?」  そう言った目の前の男は椿美冬の顔を見てふっと余裕のある笑みを浮かべた。 ──契約結婚なのだから。 そんな風に思っていたのだけれど。 なんか妙に甘くないですか!? アパレルメーカー社長の椿美冬とベンチャーキャピタルの副社長、槙野祐輔。 二人の結婚は果たして契約結婚か、溺愛婚か!? ※イラストは玉子様(@tamagokikaku)イラストの無断転載複写は禁止させて頂きます

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...