まるで裏稼業の騎士様にでろっでろに甘やかされる話

家へ引っ越してから

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「では、全てフォークで食べさせられる物にしましょう」

　ということで…レイと宮殿のキッチンへと来ました。ジョセフィーヌ様に伝えるか悩んだのだけど、元々今日はお約束をしていなかったから急な話だし、なによりわたくしだけ外に出かけられるというのも、と思ったのだけれど…でも、何も言わないのも、と思ってメイドに伝えて貰ったら、それならお菓子を届けて欲しいと言われたわ。なので、ジョセフィーヌ様は焼き窯の近くで作業してます。

「フォークで…」
「当主から、食べさせてくれと言われていたでしょう」

　う…そういえばそうね。あーん。てしないといけないのよね。

「ですので、食材はこのような物を使います」

　と、目の前にあるのはウインナーに、鶏肉、卵に…野菜では人参、ブロッコリー、ジャガイモ。炊きあがったご飯に…豚肉かしら。角煮があるわ。

「まずネルア様は、こちらのご飯をこの棒で潰してひとまとめにしてください。その生地で、この角煮を包んで団子にしますので」

　と、ご飯をボウルに入れて、すりこぎ棒を渡されたので、言われたようにつぶしていく。水分が多いのか、結構簡単につぶれていくわね。
　その隣で、レイともう一人のメイドがすっごい速さで鶏肉と野菜を切っているのだけれど…気にしたらダメね、うん。角煮を包んで団子にする、ってことは、結構滑らかにしないとだめなのかしら？

「ネルア様。それ位で構いません」
「まだ粒が残ってますわよ？」
「それ位の方が食感があって、ああ、人により好みもありますので、また後で色々作りましょう」

　食感ね。なるほど。今はそれでいいという事だし、手を止める。そうして、手をもう一度魔道具で消毒して、角煮を包んでいく。できれば一口大がいいという事だけれど…

「大きくなっても、こぶし大位なら丸のみできますので、気になさらずに」

　いやいや、気にするわよ。というかこぶし大位を丸のみって喉に詰まりそうだけど。いや、無理に一口で食べなくてもいいのではなくて？
　そんな事をぐるぐると考えながらも手を動かす。レイが作るのよりはちょっと大きくなってしまったけれど、一口で食べられる…と、思う。
　仕上げにタレを塗って、焼くのだという。焼く作業はできないけれど、タレは刷毛で塗ったわよ。

「では、次にこの鶏肉に、こちらの粉を絡めてくださいますか」

　うん、これは唐揚げね。それは前世でもやったことあるから分かるわよ。トングを使ってやるらしく、渡されたトングで切られた鶏肉を粉が入ったバットに移しては絡めて、別のお皿へ…と、繰り返す。
　粉を絡めた鶏肉は、レイが油で揚げていく。ああ、いい音だわ。それに、さっきからこう、焼きおにぎりというか…醤油の焼ける香りがするというか。

「作ってる香りだけでも幸せですわ」
「ネルア様も一緒に召し上がっていただくはずですので、後程感想を聞かせてください」
「…わたくしも食べるのですか？」
「…おそらく」

　あら。それは…考えていなかったわ。食べさせてと言われただけだもの。でも、そうね。お昼ご飯だものね。なにも別々に食べる事もないわよね。