まるで裏稼業の騎士様にでろっでろに甘やかされる話

家へ引っ越してから

52

「この間は顔を変えましたので、ジョセフィーヌ嬢も私だと気が付かなかったようなのですが、私の前で作るとなると、パーティーの時と同じ方がいいでしょうね」

　あのパーティー会場にラクシュ様が、メイド姿で居たという事実に驚いている間にもそう話す。遠目に見てたけれど違和感なかったわよ…というか、

「ルーヴェリア様の婚約者を決めるパーティー、でしたわよね」
「そうですね」
「そこに、旦那様がいらっしゃって、わたくしを見染めた…？」
「ええ。壁と同化してましたので、ルーヴェリア様も気づいていないようでしたね」
「そ、それは…よろしいのですか？」

　同化していたつもりはなかったけれど、目立たない様にひっそりこっそりしていたのがそう見えた様ね。でも、ルーヴェリア様の婚約者を決めるパーティーで、ある意味ラクシュ様が…奪った、という事になるのではと言えば、きょとんとした顔をされました。

「ルーヴェリア様、ああ見えて時々謎な勘の良さを発揮しますので、それが働かなかったという事は、いいのではないですかね」
「勘、ですか？」
「害意もそうですが…単純な好意も察知しますよ」

　魔術を使ったり見えない場所に隠れている訳でなければ、気が付かないという事はない、らしい。

「あの人の勘の良さは、私でも意味が分かりませんからねぇ。バレない様にしていた事が何故かバレるんですよ」

　そうぼやくラクシュ様だけれど、それがなんだか拗ねているようで、思わず笑ってしまった。

「…何故笑うのですか」
「すみません、なんだか可愛らしくって」

　男性に可愛らしいなんて言うのもどうかとは思うけれど、他に言い様がない。

「それなら、もっとネルアに甘えてみせましょうか」
「え、きゃあっ」

　す、と…カップを取られて、あっという間に抱き上げられて、思わず悲鳴を上げてしまった。ラクシュ様は意に介さずに、わたくしはベッドへと運ばれてしまった。

「あ、あの」
「甘える、と言ったでしょう」

　エッチされるのかと身構えたけれど…いえ、これもある意味エッチな事、だけれど…横向きに向かい合わせでベッドへと寝たと思ったら、ぽふ…と、胸元に顔を埋められて、これはこれで恥ずかしい…！

「私、ネルアの胸、大好きなので」
「そこで、話さないでください。くすぐったいです」

　吐息がこう、ぞわぞわするのよ。だからそう言ったのだけれど…

「ひゃんっ」
「可愛らしい声、ですね。もっと聞かせて？」
「あ、や…」

　だからどうしていつの間に胸はだけられてるのよ！べろりと舐められて、変な声でたじゃない！楽しそうに笑って、ぱくりと口にされるなんて…

「これ、好きでしょう？たくさんしてあげますね」
「そ、そんなこと、っあ」

　唇だけで啄まれると、ぞくぞくするのが知られてしまっていただなんて…しつこく何度もされるから、エッチして欲しいとねだってしまったわよ…