上 下
52 / 66
番外編

一般的な漁にはしばらくならなさそうです

しおりを挟む
 お家へと戻って来たけれど…それからも大変だった。私とスタンフォードは、まあそこまでではないけれど。ああ、でもスタンフォードも王宮の貯蔵庫に転移の魔法陣を描きに行ってたから、私だけゆっくりして…なかったね。うん。なんか地球での漁の仕方を書き出せと言われましたよ。便利機能で足りない知識は補完できるから、書き出しましたけど。
 シルヴさんは、中途半端に解体した一匹をちゃんと綺麗に解体するのだと言って、キッチンに籠ってるけど。いくらみんなで背中部分を食べたからと言って、流石にそのまま家に運ぶには大きくて…いらない部分の内臓とか、ヒレとかを切って、海へと魔術を使って投げ飛ばしてましたよ…内臓が飛んだ時はグロっ!って目を背けました。ええ、流石にね。そうそう、骨も外して、飛ばそうとしてたから、

「あ。ナカオチ」

 と、こぼしたら、何故かぐりん、とすんごい勢いでこっちを向かれて、思わず悲鳴を零しました。

「ナカオチってなんですか」
「あ、あの…ほら、その、ね…そこについてる身…が、ね…」

 スプーンで取れるんじゃないかなって。と、かろうじて言った。前、テレビで見たのよね。だからそう言えば、ごりごりとスプーンで削り取ってましたよ。随分と気に入ってくれたようでなによりです。
 まあ…後で料理の方法というか、食べ方を聞かれたけどね。

 一応、郊外の屋敷は使わない部屋があるから、広い部屋にツノが取られ、維持の魔法で時を止めたグローヌが…どどん!とあります。カーテンあるからいいけど、これ、外から知らない人が見たら怖いよね…
 ツノは、現場にいた人がギルドへと鑑定に出したらしいけど、槍の素材としてかなりハイグレードな物だったようだ。後はほら、レアだし。獲れない獲物だもんねぇ。見た目がいい訳ではないから、実用品として使われるだろう、という話だった。
 あとは、王宮にも3匹と言ったらいいのか、3体と言ったらいいのか…納品しました。調理方法は、そのうちルーヴェリア様の乳兄弟がこの家に来るらしい。なので、調理する時はあらかじめ言って欲しいと言われましたよ。

 で…ワサビに似た野菜、というのか薬味というのか…それをシルヴさんが手に入れて来てくれて、夜。

「あーこれこれ…おいしい」
「つーんとするのがいいっすね。あ、つけすぎた」
「っ…」

 スタンフォードは目を押さえてるけど…あんたもつけすぎたのか…
 ネギトロ丼とか、中落丼とかも作った。海苔はないんだけどね…うーん、プランクトンの問題があるから、海藻も難しそうだし。

「一応、この切り身をこれに漬けて、ヅケ丼とかもあるんだけど…明日の朝食にする?」
『する』

 二人ともに言われたので、切り身を漬けにする。もうね、大盤振る舞いで、大トロから赤身まで全部で作ったわよ。全種類で楽しめるとか幸せすぎる。

 食後にお茶しながら、ある程度書き出した漁の仕方を見せながら、話をする。やっぱり問題はプランクトンよね。

「ふむ…網で、捕まえる、か」
「潜ったりは基本だめだから、それしかないかなとは思うんだけど…魔術とかで何とかなりそうなの?」
「単純な魔術だと無理だな。魔道具…」
「遠くに飛ばす事も考えないとだめっすよね~船も危険っすから」

 まあ、皮膚が腫れあがるだけだけど…水しぶきだけでもその被害があるかと思うと、ねぇ。この世界、ビニールとか、プラスチックなんかの製品ないから。布だけでも防げるけど、目の部分は開けないといけないからどうしてもね。
 結界という物もあるけど、ここだけ、という細かな物になると、コントロールが難しいものだから、一般的ではないという事だった。かといって、その魔術道具が作れるか、というと難しいらしい。

「釣り竿…川でも使うが、海だとな」
「釣りあげながら水で流す、とか…」
「あー…それは可能かもしれんが…砂浜まで釣り上げた魚が暴れないか、だな」
「氷で固めるのが一番いいのかな?」

 一匹位なら普通の人でも固められそう?と聞くと、出来るだろう、という返答だったけど…

「ただ、あの巨体を釣り上げる竿や糸があるかどうかだな。シルヴ、あの当主に聞いてみてくれ」
「はーい」

 なんで釣具店とかに聞かないんだろう。

「後はもう少し研究してみる。まあ、まずはぷらんくとんの処理の方法だな。あれだと大量に獲れた時に効率が悪い」
「凍らせた範囲が広すぎっすよ~」
「狭い範囲でやって、何も獲れなかったらそれはそれで面倒だろう」

 まあ、確かにそうよね。日本でもソナーとか使ってた位だし。あれ?そういえば…

「もしかしたら、私、ソナー出来るかも」
「ん?」
「ほら、名前が見えるから…獲りたい物だけ考えれば…」

 そう言うと、スタンフォードはなるほど。と納得して、シルヴさんは、おお~と、感動している。

「なら、今度からそれで行くか。ただ、位置は…口頭だと難しいから、魔力線繋ぐがいいか?」
「うん。でも、他の人に見えるとかいってなかったですか?」
「手でも繋げばそこから通す」

 なるほど。そういうものなのね…

 そうして…なんだかんだで時々海に行って、魚や貝類、甲殻類を獲っては海産物を楽しんだ。お腹が大きくなってからはしなかったけど、維持の魔術があったからね…なんか、外に食糧庫、作られたわよ。海産物の為だけに。買いに行けるものではないし、それらの処理も自分たち、と言ってもメイドさんとか、まあ主にシルヴさんがしないといけないから大変だからね。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

【完結】ペンギンの着ぐるみ姿で召喚されたら、可愛いもの好きな氷の王子様に溺愛されてます。

櫻野くるみ
恋愛
笠原由美は、総務部で働くごく普通の会社員だった。 ある日、会社のゆるキャラ、ペンギンのペンタンの着ぐるみが納品され、たまたま小柄な由美が試着したタイミングで棚が倒れ、下敷きになってしまう。 気付けば豪華な広間。 着飾る人々の中、ペンタンの着ぐるみ姿の由美。 どうやら、ペンギンの着ぐるみを着たまま、異世界に召喚されてしまったらしい。 え?この状況って、シュール過ぎない? 戸惑う由美だが、更に自分が王子の結婚相手として召喚されたことを知る。 現れた王子はイケメンだったが、冷たい雰囲気で、氷の王子様と呼ばれているらしい。 そんな怖そうな人の相手なんて無理!と思う由美だったが、王子はペンタンを着ている由美を見るなりメロメロになり!? 実は可愛いものに目がない王子様に溺愛されてしまうお話です。 完結しました。

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

大神官様に溺愛されて、幸せいっぱいです!~××がきっかけですが~

如月あこ
恋愛
アリアドネが朝起きると、床に男性のアレが落ちていた。 しかしすぐに、アレではなく、アレによく似た魔獣が部屋に迷い込んだのだろうと結論づける。 瀕死の魔獣を救おうとするが、それは魔獣ではく妖精のいたずらで分離された男性のアレだった。 「これほどまでに、純粋に私の局部を愛してくださる女性が現れるとは。……私の地位や見目ではなく、純粋に局部を……」 「あの、言葉だけ聞くと私とんでもない変態みたいなんですが……」 ちょっと癖のある大神官(28)×平民女(20)の、溺愛物語

遊女の私が水揚げ直前に、お狐様に貰われた話

新条 カイ
キャラ文芸
子供の頃に売られた私は、今晩、遊女として通過儀礼の水揚げをされる。男の人が苦手で、嫌で仕方なかった。子供の頃から神社へお参りしている私は、今日もいつもの様にお参りをした。そして、心の中で逃げたいとも言った。そうしたら…何故かお狐様へ嫁入りしていたようで!?

処理中です...