上 下
41 / 66
第八章:なんだか生活も変わった

スタンフォード視点:事の顛末と衝撃の事実と

しおりを挟む
「やはり知られたか…」

 この家は…危険な国有地にあるというだけではなく、俺が結界を施していることから、例えドラゴンが来ても全く問題がない。アリの子一匹も通さない作りだ。だから、油断した。ここで、誰かに見られるとは思っていなかったから。だから、先程から聞いている来た時期なんかを考えれば、な。
 こいつを始末したほうがいいのではという考えがよぎるが…兄を守っているという事もあるし…こいつ相手に勝てるかどうかも…分からない。流石に広範囲の魔法を放てば殺せるだろうが…ユウも巻き添えを食らう可能性があるからな。
 そんな事を考えているとわかっているのだろう。にやりと、王族に見せるべきではない顔で笑う。

「なんなら、もう一体、創りますか?」
「!?」

 と、突拍子もない事を言ってくる。おい、そこは『殺しますか?』とか、『ルーヴェリア様がどうなってもいいんですか?』とか、そういう所だろう。…まさかワザとか?本当に考えが読めないな、こいつ。

「だって、ほら。あの子だけでは、足りないでしょうに。壊してしまう前に、多数囲っておいた方がよくありませんか?」
「余計なお世話だ」
「くす…確かに、そうですね。はい、どうぞ。こちらはあの子とご一緒に」

 差し出されたポットに、維持の魔術をかける。そうして、カップに注がれたお茶を飲めば、おいしい。

「この魔術、世に出さないので?一財産どころか、国家予算超えそうなほど稼げますでしょうに」
「…今はまだいい」
「そうですか…では、結果のご報告をいたしますね」

 書面でもらっていた報告の手紙をまだ見ていないと言うと、呆れられたが。
 一応書面と被るところもあるが、ついでにと話された。家名は書面にあるといい、犯行の理由としては俺の妃になりたかったから、邪魔なユウを妃にできないようにしたかったと。昔から変わり映えしない手ですねぇ。と笑うが…次兄の第5妃が同様の手口を使われてたからな。あれは噂を流しただけだが…それが却って結婚するまでになったのだから、本当にどうなるかわからないよな。
 また、あのスライムに関しては…どうやら一緒にいた男共が裏ギルドから購入したものらしい。まあ、そんな事だろうとは思ったが。男共は…あの女のお遊びに使われる男だったそうで。
 …一応は身体の関係はないらしい。金払いがいい為、そっちに関しては女を買っていたようだ。

「で、ですね。あの女性…苗床にいただいてもいいですかね?」
「…苗床って、お前、言葉選ばなくなったな…」
「どうせもう我が君にばれてますしねぇ。ほんと、時々発動するあの勘の鋭さ、なんなんですかあれ」

 いや、そんな事を俺に言われてもな…ぶつぶつと、普段アホのくせにって言うな。聞こえてるぞ。
 世間的に問題なくするのなら、別に好きでもなんでもない女一人、どうなろうが知った事ではないから、任せてしまう。他にも、男共はどうするか、ギルドは?など、細かい事を決めると、帰るという。

「そうそう、貴方様の妃に関しては、我が君に聞かれない限りはいいませんのでご安心を」
「なら、聞かれれば言うという事か」
「そうですねぇ。けれど…我が君は、おばかなので」
「…失礼だな」
「貴方様も分かってると思いますけれど」
「………」
「ですので、安心してくださって結構ですよ。王太子様がお気づきになられる可能性はありますけれど…王太子様に問われても答える義務はありませんしね」

 それなら、いいかな。完全には安心できないが。

「それから…あいつ、貴方様にならちゃんとおいしい料理、作りますよ」
「は?あいつって?」
「貴方様の乳母兄弟のあいつです」
「…作れるのか?」
「自分の主に毒物なんて食べさせるわけないでしょうに。あいつが言った、毒物になるっていうのは、毒を仕込む癖があるからなんですよ。給仕で、毒に当たったことありますか」
「給仕は、作る訳じゃ…」
「あいつ、ティーカップを移動させる所作一つで毒仕込みますよ」
「は?」
「給仕なんかしたらそりゃもう毒仕込み放題ですよ」
「はあ!?」
「ただ、面倒くさがりなので、教えるの嫌だったんじゃないですかね」
「………」
「それか、かわいい子なので…惚れそうなのかもしれませんね」
「なっ…」
「冗談ですよ。私からも言っておきますので、使ってやってください。おそらく、本当に何もできない子だったら、怪我させたくないとか、そういう理由ですよ。根はやさしい子なので」

 面倒だった可能性も半分はあるでしょうが。と、笑う。一緒に育ったとはいえ…俺は魔術や道具なんかに傾倒していて、本ばかり読んでいたから…気が付かなかった。あいつもおとなしくしている方だったから、二人で遊ぶとしても、互いに興味ある本を一人で読んでるだけだった。もう少し、関心を持てばよかったか。

「それにしても、本当にうまく創りましたねえ…」

 考え込んでいたら、そう言われて…顔をあげれば、ちゃんと、愛してあげてくださいね。と…声だけ残して、消えた。

「そんな事、言われなくても」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~

石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。 食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。 そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。 しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。 何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。 扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

国王陛下は悪役令嬢の子宮で溺れる

一ノ瀬 彩音
恋愛
「俺様」なイケメン国王陛下。彼は自分の婚約者である悪役令嬢・エリザベッタを愛していた。 そんな時、謎の男から『エリザベッタを妊娠させる薬』を受け取る。 それを使って彼女を孕ませる事に成功したのだが──まさかの展開!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

【R18】助けてもらった虎獣人にマーキングされちゃう話

象の居る
恋愛
異世界転移したとたん、魔獣に狙われたユキを助けてくれたムキムキ虎獣人のアラン。襲われた恐怖でアランに縋り、家においてもらったあともズルズル関係している。このまま一緒にいたいけどアランはどう思ってる? セフレなのか悩みつつも関係が壊れるのが怖くて聞けない。飽きられたときのために一人暮らしの住宅事情を調べてたらアランの様子がおかしくなって……。 ベッドの上ではちょっと意地悪なのに肝心なとこはヘタレな虎獣人と、普段はハッキリ言うのに怖がりな人間がお互いの気持ちを確かめ合って結ばれる話です。 ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。

【完結】【R18】男色疑惑のある公爵様の契約妻となりましたが、気がついたら愛されているんですけれど!?

夏琳トウ(明石唯加)
恋愛
「俺と結婚してくれたら、衣食住完全補償。なんだったら、キミの実家に支援させてもらうよ」 「え、じゃあ結婚します!」 メラーズ王国に住まう子爵令嬢マーガレットは悩んでいた。 というのも、元々借金まみれだった家の財政状況がさらに悪化し、ついには没落か夜逃げかという二択を迫られていたのだ。 そんな中、父に「頼むからいい男を捕まえてこい!」と送り出された舞踏会にて、マーガレットは王国の二大公爵家の一つオルブルヒ家の当主クローヴィスと出逢う。 彼はマーガレットの話を聞くと、何を思ったのか「俺と契約結婚しない?」と言ってくる。 しかし、マーガレットはためらう。何故ならば……彼には男色家だといううわさがあったのだ。つまり、形だけの結婚になるのは目に見えている。 そう思ったものの、彼が提示してきた条件にマーガレットは飛びついた。 そして、マーガレットはクローヴィスの(契約)妻となった。 男色家疑惑のある自由気ままな公爵様×貧乏性で現金な子爵令嬢。 二人がなんやかんやありながらも両想いになる勘違い話。 ◆hotランキング 10位ありがとうございます……! ―― ◆掲載先→アルファポリス、ムーンライトノベルズ、エブリスタ

異世界の学園で愛され姫として王子たちから(性的に)溺愛されました

空廻ロジカ
恋愛
「あぁ、イケメンたちに愛されて、蕩けるようなエッチがしたいよぉ……っ!」 ――櫟《いちい》亜莉紗《ありさ》・18歳。TL《ティーンズラブ》コミックを愛好する彼女が好むのは、逆ハーレムと言われるジャンル。 今夜もTLコミックを読んではひとりエッチに励んでいた亜莉紗がイッた、その瞬間。窓の外で流星群が降り注ぎ、視界が真っ白に染まって…… 気が付いたらイケメン王子と裸で同衾してるって、どういうこと? さらに三人のタイプの違うイケメンが現れて、亜莉紗を「姫」と呼び、愛を捧げてきて……!?

冷酷無比な国王陛下に愛されすぎっ! 絶倫すぎっ! ピンチかもしれませんっ!

仙崎ひとみ
恋愛
子爵家のひとり娘ソレイユは、三年前悪漢に襲われて以降、男性から劣情の目で見られないようにと、女らしいことを一切排除する生活を送ってきた。 18歳になったある日。デビュタントパーティに出るよう命じられる。 噂では、冷酷無悲な独裁王と称されるエルネスト国王が、結婚相手を探しているとか。 「はあ? 結婚相手? 冗談じゃない、お断り」 しかし両親に頼み込まれ、ソレイユはしぶしぶ出席する。 途中抜け出して城庭で休んでいると、酔った男に絡まれてしまった。 危機一髪のところを助けてくれたのが、何かと噂の国王エルネスト。 エルネストはソレイユを気に入り、なんとかベッドに引きずりこもうと企む。 そんなとき、三年前ソレイユを助けてくれた救世主に似た男性が現れる。 エルネストの弟、ジェレミーだ。 ジェレミーは思いやりがあり、とても優しくて、紳士の鏡みたいに高潔な男性。 心はジェレミーに引っ張られていくが、身体はエルネストが虎視眈々と狙っていて――――

未亡人メイド、ショタ公爵令息の筆下ろしに選ばれる。ただの性処理係かと思ったら、彼から結婚しようと告白されました。【完結】

高橋冬夏
恋愛
騎士だった夫を魔物討伐の傷が元で失ったエレン。そんな悲しみの中にある彼女に夫との思い出の詰まった家を火事で無くすという更なる悲劇が襲う。 全てを失ったエレンは娼婦になる覚悟で娼館を訪れようとしたときに夫の雇い主と出会い、だたのメイドとしてではなく、幼い子息の筆下ろしを頼まれてしまう。 断ることも出来たが覚悟を決め、子息の性処理を兼ねたメイドとして働き始めるのだった。

美貌の騎士団長は逃げ出した妻を甘い執愛で絡め取る

束原ミヤコ
恋愛
旧題:夫の邪魔になりたくないと家から逃げたら連れ戻されてひたすら愛されるようになりました ラティス・オルゲンシュタットは、王国の七番目の姫である。 幻獣種の血が流れている幻獣人である、王国騎士団団長シアン・ウェルゼリアに、王を守った褒章として十五で嫁ぎ、三年。 シアンは隣国との戦争に出かけてしまい、嫁いでから話すこともなければ初夜もまだだった。 そんなある日、シアンの恋人という女性があらわれる。 ラティスが邪魔で、シアンは家に戻らない。シアンはずっとその女性の家にいるらしい。 そう告げられて、ラティスは家を出ることにした。 邪魔なのなら、いなくなろうと思った。 そんなラティスを追いかけ捕まえて、シアンは家に連れ戻す。 そして、二度と逃げないようにと、監禁して調教をはじめた。 無知な姫を全力で可愛がる差別種半人外の騎士団長の話。

処理中です...