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第七章:やっぱりそういうのあるよねぇ

スタンフォード視点:さっさと結婚しよ

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 あいつに…ユウに、異変があったと気が付いたのは、服が消されていったから。普通に活動していれば、消えるなんてことはないはずだ。あの服は、俺の魔術で変性したものだから、その魔力が消されたが故に感知できた。だが…正確な場所までは、感知できない…!
 ホムンクルスのつながりがあれば、すぐに場所を特定できるのに。なんとなく、ここら辺。というおぼろげな感覚を頼りに近くへと飛べば、貴族の館が立ち並ぶ区画だった。そこからは、神経を集中して場所を特定していくが…どうして少しずつ消えていくんだ。魔術で編んだとはいえ、元はただの布。その形状を魔術で変えただけの物。燃えているならもっと早いだろうし…そもそもとして、どういう状況なんだ?
 いや、今はそんな事より場所を特定する方が先か。まさかホムンクルスとばれた、とかか。最悪、殺されていたとしても、魂の保護と所有者は、俺だ。だから、殺されたとしても俺の元へ戻ってくる。それがないという事は…まだ生きてはいる、はずだ。
 だが、なぜ服?疑問は尽きないが…場所が、分かった。この屋敷の地下か。

 転移で飛べば…鎖で縛られ、スライムをけしかけられているユウの姿が目に入る。その姿は、もう一糸まとわぬ姿と変わらない程に。
 原因は分かった。一瞬でそのスライムを高濃度の炎で蒸発させ、その場にいたユウ以外は…いばらの蔓で縛り上げる。何か言っているが、空気の壁で、それを聞こえなくしてしまう。

「…すたん、ふぉーどさま?」
「悪い、遅くなったな」

 聞こえた声は、たよりなく揺れている。そっと近寄って、服を魔術で用意する。そうしながらも、ユウを拘束している枷を変異させて開放し…泣きそうになっているその頬を、そっと撫でる。

「あ…」
「今は、泣くな。頼むから」

 泣かれると、どうしたらいいのか分からなくなるからな。こいつらをどう処分するのかも、やらなければいけないのだから。
 片手で抱き上げてやれば、首元に縋り付いてきた…かわいいな…こんな事、初めてしてきたかも。と、感動している場合じゃなかった。泣いてるな…声は出してないが。あーもう…

 とりあえず…いばらの蔓だと長時間拘束することでダメージが酷く、命にかかわる可能性があるから、氷獄にするとして…取り調べは、乳母兄弟に任せよう…あいつが駄目なら上の兄の乳母兄弟…最強の守り人に頼み込む、しかないか。兄が言ってくれれば聞いてくれるはずだし。

 それらを決め、ユウの為に作った風呂へと連れていく。本当は、もっと早くに使わせたかったんだが…なんか、こう、タイミングを逃したというか…した後に連れて行こうとしたんだが、なんていうか、逆にこう…またしたくなるから…し終わった後の、弛緩した身体とか、溶けた顔とか、なんかもう…なんか…!

 …あーもー父が倒れてようがしらん。すぐ結婚しよ。寝込んでようが気を失ってようがしらん。たたき起こして許可とってやる。それで蜜月中はめちゃくちゃする。ああ…子供、子供なあ…蜜月中に仕込むのが一番良いとされてるから…それもやるとして…忙しいな…
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