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黒魔男爵アフラン・アフラム
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その光景ったら、いままで見たどんなものよりおぞましかった。だってそれはまるで何かの内臓のようだったから。ドクドクとどこもかしこも脈打ち、そしてうごめいていた。そしてその内臓のようなものの隙間に見える石でできた柱や壁に沿って縦横に血管のようなものが走り、そのなかを何かが流れていた。
「うげええええ、気持ち悪いー」
とりあえずラフレシアが当たり前の反応をした。
「なにこの匂い…胸が悪くなるわね」
「それ言わないでミローネ。何とか我慢してんだから」
「デリアさま、これが神殿ですか?こんなえげつないところ、見たことありません!」
まあ神もおったまげるよな。
「神殿とは名ばかりで、きっと古い遺跡に何かが寄生してるんだよ」
「寄生って、これなんかの生き物なの?」
ラフレシアが気味悪そうに言った。
「何らかの有機体だろうね。なにかはわからないけど…とにかくその暗黒柱っていうのを探そう」
ぼくらはその臓物のようなおかしなものをすり抜け、さらに奥に進んだ。血管のような太いチューブがその奥まで続いているのがわかった。
「ふうん…」
「なによ?なにかわかったの、デリア」
「まあね。ラフレシア、落ち着いて聞いて。おそらくここの臓物のような有機体は、あのゼリー人間たちから取り出された生命エネルギーを純粋エネルギーに変えるための大掛かりな装置なんだ」
「装置って、つまり機械ってこと?」
「そう、生命エネルギーはいわば雑多なエネルギーの化合体だとして、より純度の高いエネルギーを抽出するため漉し出す装置ってことさ」
「なんのためにそんなことすんのよ」
それは恐ろしい計画だ。実際そんなことが可能かはわからないが、魔力が普遍的に存在するこの世界では、それはきっと可能なんだろうな。
「世界を破壊し、魔族が住みやすい世界に変えるんだろうね」
「で、できっこないじゃないそんなこと!」
「ひとりの人間の生命エネルギー量はたかが知れているし、生体内のそのもとになる物質を純粋な形で取り出さないとエネルギー自体利用できないんだ」
「そのもとになるものって?そんなのどうやって人間から取り出すのよ?」
「なぜみんなをゼリー人間にしたか?それを取り出しやすくするためさ。そのとりだすもの、っていうのはアデノシン三リン酸、つまりATPってやつさ」
「なにそれ?」
「この世界のあらゆる生物にあるものさ」
「意味わかんない」
まあそうだ。ぼくのいた世界ほど科学が発達していないこの世界では知らないのも無理はない。だがやつらにはきっとこの生命エネルギーがなにかわかっているんだ。
「ねえなんかいるよ?ほらあそこ…」
ミローネがなにか見つけたみたいだ。ぼくらはそっとそれに近づくと、それらはそろってぼくらを見た。
「な、なんでこんなところに…」
それは円形の広間のようなところで、五人の女の子が等間隔で立っていた。床には五芒星の陣が描かれており、その床を這うようにあの血管が少女たちにつながっていた。
「あなたたちは誰?」
一番近くの少女がそう言った。薄い布を肩から掛けただけの、簡単な服を着た少女たちはみな同じ顔をしていたが、それでもみんなどことなく違って見えた。
「ぼくはデリア。それとこっちはラフレシア、ミローネ、シスチア、リヴァちゃん」
「名前を聞いてるんじゃなくて、あなたたちが何かって聞きたいの」
「えーと、ラフレシアは騎士でミローネは精霊、シスチアは人間でリヴァちゃんは終末竜の子供。それで、ぼくはニートだよ」
「一番最後のがよくわかんないわね」
「よく言われる」
少女たちは少し首をかしげて、それでもなぜか無表情でこっちを見ている。
「それで…何しに来たの?」
「じつは暗黒柱ってやつと、黒魔男爵っていうのを探しているんだ」
「へえ、それはどうして?」
「この都市でやっていることをやめてもらおうと思って。まあ話し合いですめばいいなと、そう思ってここに来たんだよ」
そう言ったとたん少女たちが笑った。
「ぼく変なこと言った?」
「ここに来た理由はわかったけど、その目的は果たされない。なぜなら、あなたたちはそれができないと後悔する前に死ぬから」
「ややこしい言い回しだね。ねえそれってぼくらがきみたちに殺されるってこと?それとも誰かほかにいるわけ?」
「そんなことを知ってどうする?死の前には無意味だ。なにで殺されようと死は死だから」
誰にじゃなくなにに、か…どうやらこいつらの正体が見えてきたな。
「じゃあ死ぬ前にきみたちの名前を教えてくれ」
「それも死の前には無意味だ」
「じゃあぼくはきみたちの名をポンポコ大魔人と魂に刻んで死ぬぞ」
「いやなにその嫌な名前!どういうネーミングセンスしてるのよ!」
ふうん、初めてこいつらが感情をあらわにしたね。いや、それほどひどいネーミングか、これ?
「恥ずかしくて怒りがわき出す」
「その怒りがもう爆発しそう」
「爆発はすべてを滅ぼす」
「滅ぼしたのち楽園を作る」
「楽園は魔王アラキスに捧げられる」
おいおいこいつら何言ってんだ?なんで五人がそろってそんなこと言ってる?って、ぼくのいかしたネーミングが終わりのトリガーになったってこと?マジか。
「その前にそいつだけは殺しておかないと」
「ナメクジに食わす」
「いえ、すりつぶして油で素揚げにする」
「そのあと塩で味付けする」
「酢をかけた香草サラダを添える」
途中から料理教室になった。
「あらねえさま、酢はちょっとまずいわよ」
「そうね、ごめんなさい」
「酢はダメね」
「なんでそんなレシピを?」
「だってさっきから酢の匂いが」
どうやら気がついたみたいだね。では遠慮なく。
「ぎゃあああああっ!」
「おねえさま!?」
「か、身体が燃えるうう!」
「いったい何を!」
「この小僧が何かおねえさまに」
ぼくは酢の壺を片手に、慌てふためく少女たちを見ていた。うーん、絵図らはどうもイケナイ感じだったが。
「魔物は酢が苦手だと聞いた。ねえ正直に答えてよ。きみたちが暗黒柱なんだろ?」
「誰が教えるか!」
「もちろんきみさ」
ぼくはその少女に酢を振りかけた。
「んギャアアアアああっ!熱い!助けて!」
「やめろ!きさま!」
「ぼくを殺そうとしたんだろ?おあいこさ」
「ふざけるな!おまえとわたしたちでは立場が違う!」
「そうさ。いまはぼくが立場、上なんだけど」
そう言ってぼくはまたそいつに酢を振りかけた。
「イギャアアアっ!やめろーっ!」
「なんてやつだ!悪魔より非道なやつだ!」
「じゃあついでにきみときみも」
「ぎゃああああああっ!」
「熱いっ!焼けてしまうーっ!」
五人の少女はもがき苦しみだした。いやあ、これ以上見てるのは辛い。っていうか、どう見ても悪者はぼくだ。
「ね、ねえデリア、もうちょっとなんとかやりようはなかったのかしら…」
「そ、そうよね…なんかこっちがいたたまれないわご主人さま」
「ちょっとかわいそすぎますよね、これ」
「パパ、このおねえちゃんたち、なにか悪いことしたの?」
ぼくを責めるんじゃありません!ぼくは正当なことをしたんです!でもこれって天国契約に反しちゃうんだろうか?
「うーん、しょうがないなあ…まあ、苦しんでるのを見てるのもつらいしなあ…」
ぼくは懐から例の蛇口を出した。蛇口から出る水で酢を洗い流してやればいいんだ。
「じゃあみんなで手分けして水で洗ってあげよう!」
「ハーイ」
一斉にみんな蛇口から水を汲み、それぞれ苦しんでいる少女のところに行った。
「ひいいいなにをする!」
「なにって、酢を洗い流してやろうと…」
「やめてくれえええええっ!」
「え?」
「なあご主人さま、いまこの水をぶっかけて気がついたんだけど、これって聖水じゃね?」
「あ」
そういやそうだった。この蛇口から出て来るのはあの大天使に祝福されちゃった水、いわば聖水だった。まあ普通の人間や精霊にはなんてことないんだけど、魔族とか悪魔じゃちょっとヤバい。酢どころじゃないような気がする。
「やめろ…これ以上わたしらを傷つけるととんでもないことが起きるぞ…」
「やはりきみらが暗黒柱だったんだな。まさか人の、それも少女の姿をしてるなんて思いもしなかったよ」
「ふん、それだけじゃないわ」
「どういう意味?」
「われら五人の名はひとつ。その名は黒魔男爵アフラン・アフラムだ!」
おどろいた!暗黒柱がじつは黒魔男爵だったなんて!
「どうだ、おどろいたか?まあ今さら驚いてもおまえたちの破滅は間違いないからな」
「でも、男爵って男だろ?ふつう」
「え、そこ驚く?いやそれは爵位の名であって、男女の差異をさすものではないぞ」
「でもイギリスじゃ男爵はバロンって言って、女の男爵位はバロネスだったはずだけど?」
「イギリスってどこ?」
「いや、いいです」
「とにかく破滅のときは来たれり!みな死に怯えろ!」
「じゃあみんな、もう一度聖水ぶっかけてあげて」
「ハーイ」
「やめろ!やめてくれ!おねがいやめて…」
「じゃみんなを元に戻してあげて」
「え?」
五人の少女たちはお互いの顔を見合わせていた。
「それは今さら無理。ゼリー化された人はもとには戻らない」
「なんで」
「それは魔法ではないからだ。魔法でそうなったら何とかなりようもあるが、あいにく魔法で人をゼリー化などできようもないからな」
「じゃあおまえらはどうやって?」
「ゼノアの法力だ」
「ゼノアの法力?またややこしいことを言いだしたな」
いったいなんなんだ、それって。もういい加減にしてほしい!
「うげええええ、気持ち悪いー」
とりあえずラフレシアが当たり前の反応をした。
「なにこの匂い…胸が悪くなるわね」
「それ言わないでミローネ。何とか我慢してんだから」
「デリアさま、これが神殿ですか?こんなえげつないところ、見たことありません!」
まあ神もおったまげるよな。
「神殿とは名ばかりで、きっと古い遺跡に何かが寄生してるんだよ」
「寄生って、これなんかの生き物なの?」
ラフレシアが気味悪そうに言った。
「何らかの有機体だろうね。なにかはわからないけど…とにかくその暗黒柱っていうのを探そう」
ぼくらはその臓物のようなおかしなものをすり抜け、さらに奥に進んだ。血管のような太いチューブがその奥まで続いているのがわかった。
「ふうん…」
「なによ?なにかわかったの、デリア」
「まあね。ラフレシア、落ち着いて聞いて。おそらくここの臓物のような有機体は、あのゼリー人間たちから取り出された生命エネルギーを純粋エネルギーに変えるための大掛かりな装置なんだ」
「装置って、つまり機械ってこと?」
「そう、生命エネルギーはいわば雑多なエネルギーの化合体だとして、より純度の高いエネルギーを抽出するため漉し出す装置ってことさ」
「なんのためにそんなことすんのよ」
それは恐ろしい計画だ。実際そんなことが可能かはわからないが、魔力が普遍的に存在するこの世界では、それはきっと可能なんだろうな。
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「で、できっこないじゃないそんなこと!」
「ひとりの人間の生命エネルギー量はたかが知れているし、生体内のそのもとになる物質を純粋な形で取り出さないとエネルギー自体利用できないんだ」
「そのもとになるものって?そんなのどうやって人間から取り出すのよ?」
「なぜみんなをゼリー人間にしたか?それを取り出しやすくするためさ。そのとりだすもの、っていうのはアデノシン三リン酸、つまりATPってやつさ」
「なにそれ?」
「この世界のあらゆる生物にあるものさ」
「意味わかんない」
まあそうだ。ぼくのいた世界ほど科学が発達していないこの世界では知らないのも無理はない。だがやつらにはきっとこの生命エネルギーがなにかわかっているんだ。
「ねえなんかいるよ?ほらあそこ…」
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「な、なんでこんなところに…」
それは円形の広間のようなところで、五人の女の子が等間隔で立っていた。床には五芒星の陣が描かれており、その床を這うようにあの血管が少女たちにつながっていた。
「あなたたちは誰?」
一番近くの少女がそう言った。薄い布を肩から掛けただけの、簡単な服を着た少女たちはみな同じ顔をしていたが、それでもみんなどことなく違って見えた。
「ぼくはデリア。それとこっちはラフレシア、ミローネ、シスチア、リヴァちゃん」
「名前を聞いてるんじゃなくて、あなたたちが何かって聞きたいの」
「えーと、ラフレシアは騎士でミローネは精霊、シスチアは人間でリヴァちゃんは終末竜の子供。それで、ぼくはニートだよ」
「一番最後のがよくわかんないわね」
「よく言われる」
少女たちは少し首をかしげて、それでもなぜか無表情でこっちを見ている。
「それで…何しに来たの?」
「じつは暗黒柱ってやつと、黒魔男爵っていうのを探しているんだ」
「へえ、それはどうして?」
「この都市でやっていることをやめてもらおうと思って。まあ話し合いですめばいいなと、そう思ってここに来たんだよ」
そう言ったとたん少女たちが笑った。
「ぼく変なこと言った?」
「ここに来た理由はわかったけど、その目的は果たされない。なぜなら、あなたたちはそれができないと後悔する前に死ぬから」
「ややこしい言い回しだね。ねえそれってぼくらがきみたちに殺されるってこと?それとも誰かほかにいるわけ?」
「そんなことを知ってどうする?死の前には無意味だ。なにで殺されようと死は死だから」
誰にじゃなくなにに、か…どうやらこいつらの正体が見えてきたな。
「じゃあ死ぬ前にきみたちの名前を教えてくれ」
「それも死の前には無意味だ」
「じゃあぼくはきみたちの名をポンポコ大魔人と魂に刻んで死ぬぞ」
「いやなにその嫌な名前!どういうネーミングセンスしてるのよ!」
ふうん、初めてこいつらが感情をあらわにしたね。いや、それほどひどいネーミングか、これ?
「恥ずかしくて怒りがわき出す」
「その怒りがもう爆発しそう」
「爆発はすべてを滅ぼす」
「滅ぼしたのち楽園を作る」
「楽園は魔王アラキスに捧げられる」
おいおいこいつら何言ってんだ?なんで五人がそろってそんなこと言ってる?って、ぼくのいかしたネーミングが終わりのトリガーになったってこと?マジか。
「その前にそいつだけは殺しておかないと」
「ナメクジに食わす」
「いえ、すりつぶして油で素揚げにする」
「そのあと塩で味付けする」
「酢をかけた香草サラダを添える」
途中から料理教室になった。
「あらねえさま、酢はちょっとまずいわよ」
「そうね、ごめんなさい」
「酢はダメね」
「なんでそんなレシピを?」
「だってさっきから酢の匂いが」
どうやら気がついたみたいだね。では遠慮なく。
「ぎゃあああああっ!」
「おねえさま!?」
「か、身体が燃えるうう!」
「いったい何を!」
「この小僧が何かおねえさまに」
ぼくは酢の壺を片手に、慌てふためく少女たちを見ていた。うーん、絵図らはどうもイケナイ感じだったが。
「魔物は酢が苦手だと聞いた。ねえ正直に答えてよ。きみたちが暗黒柱なんだろ?」
「誰が教えるか!」
「もちろんきみさ」
ぼくはその少女に酢を振りかけた。
「んギャアアアアああっ!熱い!助けて!」
「やめろ!きさま!」
「ぼくを殺そうとしたんだろ?おあいこさ」
「ふざけるな!おまえとわたしたちでは立場が違う!」
「そうさ。いまはぼくが立場、上なんだけど」
そう言ってぼくはまたそいつに酢を振りかけた。
「イギャアアアっ!やめろーっ!」
「なんてやつだ!悪魔より非道なやつだ!」
「じゃあついでにきみときみも」
「ぎゃああああああっ!」
「熱いっ!焼けてしまうーっ!」
五人の少女はもがき苦しみだした。いやあ、これ以上見てるのは辛い。っていうか、どう見ても悪者はぼくだ。
「ね、ねえデリア、もうちょっとなんとかやりようはなかったのかしら…」
「そ、そうよね…なんかこっちがいたたまれないわご主人さま」
「ちょっとかわいそすぎますよね、これ」
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ぼくを責めるんじゃありません!ぼくは正当なことをしたんです!でもこれって天国契約に反しちゃうんだろうか?
「うーん、しょうがないなあ…まあ、苦しんでるのを見てるのもつらいしなあ…」
ぼくは懐から例の蛇口を出した。蛇口から出る水で酢を洗い流してやればいいんだ。
「じゃあみんなで手分けして水で洗ってあげよう!」
「ハーイ」
一斉にみんな蛇口から水を汲み、それぞれ苦しんでいる少女のところに行った。
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「なにって、酢を洗い流してやろうと…」
「やめてくれえええええっ!」
「え?」
「なあご主人さま、いまこの水をぶっかけて気がついたんだけど、これって聖水じゃね?」
「あ」
そういやそうだった。この蛇口から出て来るのはあの大天使に祝福されちゃった水、いわば聖水だった。まあ普通の人間や精霊にはなんてことないんだけど、魔族とか悪魔じゃちょっとヤバい。酢どころじゃないような気がする。
「やめろ…これ以上わたしらを傷つけるととんでもないことが起きるぞ…」
「やはりきみらが暗黒柱だったんだな。まさか人の、それも少女の姿をしてるなんて思いもしなかったよ」
「ふん、それだけじゃないわ」
「どういう意味?」
「われら五人の名はひとつ。その名は黒魔男爵アフラン・アフラムだ!」
おどろいた!暗黒柱がじつは黒魔男爵だったなんて!
「どうだ、おどろいたか?まあ今さら驚いてもおまえたちの破滅は間違いないからな」
「でも、男爵って男だろ?ふつう」
「え、そこ驚く?いやそれは爵位の名であって、男女の差異をさすものではないぞ」
「でもイギリスじゃ男爵はバロンって言って、女の男爵位はバロネスだったはずだけど?」
「イギリスってどこ?」
「いや、いいです」
「とにかく破滅のときは来たれり!みな死に怯えろ!」
「じゃあみんな、もう一度聖水ぶっかけてあげて」
「ハーイ」
「やめろ!やめてくれ!おねがいやめて…」
「じゃみんなを元に戻してあげて」
「え?」
五人の少女たちはお互いの顔を見合わせていた。
「それは今さら無理。ゼリー化された人はもとには戻らない」
「なんで」
「それは魔法ではないからだ。魔法でそうなったら何とかなりようもあるが、あいにく魔法で人をゼリー化などできようもないからな」
「じゃあおまえらはどうやって?」
「ゼノアの法力だ」
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