無気力最低ニートが、スキル『一日一回何でも願いがかなう』を取得しても、世界を思いのままにするとか、考えないからニートなんです!

さかなで/夏之ペンギン

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突然ですが、誕生パーティです

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「あっ!」
「な、なに?どうしたの、ラフレシア?」

突然、ラフレシアが叫んだ。

「ん…なんでもない…わ」
「でもなんか変だけど」
「なんでもないですって言ってるでしょ!」

キレた。なんでやねん。

青い空にぽっかりと白い雲。天気はこんなに穏やかなのに、デリアのまわりは何やら不穏な空気…。

「十四かあ~」
「え?何が?」
「だから十四よ」
「だから何が十四なんですか?」
「もういいわよ」

なんなんだ!いったいラフレシアのやつは何が言いたいんだよ、まったく!十四って言っても…あれ?ぼくはいま十…あれ?確かぼくの誕生日って…そういや毒の沼の魔女と対決した日が確かぼくの誕生日だったなあ。こっちの世界じゃ誰も祝ってくれなかったんで気にならなかったけど…もしや…?

「ねえラフレシア」
「なによ」
「いい天気だね」
「そうね」
「なにかぼくに言いたいことがあるんじゃないか?」
「…別に…ないわよ」
「あっそう」
「で?」
「で、とは?」
「で、それだけ?」
「はあ、まあそうですね」
「バカ」

なんでやん!こいつ、自分の誕生日をぼくに伝えたいんじゃないのか?あ、でもこいつなりに何か考えてんのかな?いま自分の命が『魔素病』で脅かされて、ぼくらが必死にそれを何とかしようとしているときに、まさか自分の誕生日を祝ってくれだなんて、きっと言い出せずにいるんだろうな。強情っ張りのラフレシアのことだからね。

「つぎの町に近づいてきた。わたしはいったんここで姿を消す。鎧の魔物たちは森に隠して、おまえたちは町で食料などを仕入れておけ。明日の朝、ここでまた落ち合おう」

ニャンコがそう言った。森を抜けたら牧場や農場だ。その先に町があるんだろう。

「じゃあ鎧くんたちをお願いします」
「気を付けて行って来るがいい。あまり食べ過ぎるな。とくにそこの精霊と死霊使い」
「うるさいわね、でかニャンコ」
「にゃんこー」
「ニャンコじゃねえっつってんだろ」



町は意外に大きかった。けっこう店もいっぱいあって、大勢の人が行き来していた。宿を決めると早速街に出た。

「たくさん買い出しをしなくちゃね。ここは手分けしよう」

ぼくはみんなにそう提案した。

「そ、そうね。それがいいんじゃない?」
「じゃあぼくはこっちで毛布とか防火魔導具とかを探す」

こんどの火竜対策のため防火魔導具はどうしても必要なのだ。

「わかった。じゃああたしはあっちで食料とかを」
「ラフレシア、たのむ。ミローネもネクロも頼むね」
「まかせなさーい」
「まかせろ。活きのいい牛をつかまえてくる」
「ネクロ、買うのは保存食です」
「わかった」

ホントにわかってんのかな?

「パパはあたしと?」
「そういうこと。途中で何か食べ物を買おうね」

あまやかし、だとみんな思った。

それぞれ思い思いの方向にみんなが散って行った。さあぼくは、目的の店へ。町の人に聞きこんであったんだ。町一番の洋服屋。

「つまり、この店で一番のドレス、を?」

キザったらしい店主がぼくの姿をしげしげと眺めながら、そう言った。なんでこんな小僧が、という目だ。

「そういうこと」
「いいですが、お高いですよ?」
「いくら?」
「金貨十枚。ね、それがわかったらどうぞほかの店へ」

こいつ、ぼくが冷やかしできたと思っているのか?こんなガキがそんな大金持ってるわけないとたかをくくっているんだろうな。まあぼくだってそう思うもんな。

「金貨十枚ね。はいよ」

ぼくはあっさりと金貨を出した。店主のおどろきっぷりはそりゃもう面白かった。

「こここれはいったい」
「贋金じゃないよ。本物さ。さあ、早く包んでくれないかな」
「か、かしこまりました!」

それはそれは美しい真っ白なドレス。ラフレシアによく似合いそうだ。



宿に帰るとみんなもぼちぼち戻って来ている。なんか雰囲気はおかしいけどね。まあぼくも隠し事してるからな。

「は、早かったのね、意外に」
「デ、デリア、今夜は部屋で食事をしない?宿の食堂がなんか混んでて」
「い、いいね。ぼくもそう言おうと思っていたんだ、ラフレシア」
「き、奇遇ね。あたしもなんかそういう気分だったの」
「あたしは元からそう決めていたがな」

ん?ミローネやネクロまで?なんなんだ。

「あははははは…」
「うふふふふふ…」

なんかあやしい。いやぼくもだけどね。

部屋の真ん中に大きなテーブルを置いて料理を並べる。おお、けっこう豪勢だな。けちんぼのラフレシアがよくこんなに奮発したな。

「じゃあ食べようか」
「待ってデリア!その前に、いい?」
「なんだい?」
「これ、もらって欲しい」

そう言ってラフレシアは金属でできたペンダントをぼくに渡してきた。真ん中に綺麗な石がはめ込まれている。

「なにこれ?」
「お守りの魔石がはめ込められたペンダントよ」
「どうしてこんなものぼくに?」
「た、誕生日でしょ、あんたの」
「それって…」

ラフレシアはぼくの誕生日を知っていたんだ。それで…。

「ぼくもじつはあるんだ」
「え?」
「きみの誕生日のお祝いに…これ」

ぼくは大きな包みを渡した。ラフレシアが急いで開けると、真っ白なドレスが…。

「きれい…こんなきれいなドレス、見たことない!」
「十四歳、おめでとう」
「ありがとうデリア!」
「ぼくこそありがとう、ラフレシア」
「あのーあたしたちもあるんだけど」
「だけどー」

ミローネとネクロもぼくら二人にプレゼントをしてくれた。透明な石のようなものと真っ白な何かの牙のようだ。

「なにこれ?」
「透明な石は精霊の涙。砕くと治癒魔法が働くわ」
「白い牙は地上最強の赤竜の牙。ピンチの時役立つ。どう役立つかは知らない」

ネクロのはなにか怪しいが、まあ気持ちは伝わる。ありがとうな、みんな。

「あたしはふたりに花の絵を描いた。大事なパパとママ、誕生日おめでとう」
「ありがとう、リヴァ」

ぼくは一生この日を忘れないだろう。ぼくは転生してはじめて、幸せだと思った。


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