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天の怒り、地に満ちる
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「つまり人間界に魔物の通行権はない、と?」
「そういうことだ。わかったらおとなしくその魔物たちを解散させろ」
「いやー、せめてこの先の帝国っていうところまで目をつぶっていただけませんか?」
「アホか。大天使のわたしがそんなことできるか!」
「ですよねー」
これは困った。まさか自分のスキルで呼び出したやつに邪魔されるなんて。やっぱりぼくのアレはぶっ壊れスキルなんだ。
「神が怒りださんうちにホレホレ、解散解散」
その神さまにもらったスキルであんたが出てきたんでしょうが。まったく使えないなあ。
「きさまたちは何者だ!」
きゃー、またなんか来た。
「デリア、大変だ!あれもしかして帝国軍だよ!囲まれちゃってるわ。いつの間に?」
いやさんざんここで時間食ってましたから。
「ああ?誰に向かってそんな口叩いてるの?」
振り向いた大天使さまがお怒りになっていらっしゃる。
「なっ?えらそうに!このおかしなやつはなんだ?バケモノか?」
立派な身なりの騎士だ。恐らく大将軍って感じだけど、天使って見たことないのかな?まあ、実際見たことあるやつっていないけどね。生きてるときはね。
「バケモノ?わたしがか?」
大天使さま怒ってるよ。いいのか?
「どう見ても尋常ならざるものじゃないか、きさまは!」
あーあ、知らないよ。それにしても大した軍勢だ。こんなに多くの兵隊をよく短時間でまとめてここに来れたもんだ。さすが帝国だけあるな。
「いい度胸だ。この大天使を怒らせるということは神を怒らせるということだ。存分に神の怒りを見せてやろう」
「何をわけのわからんことを!誰かやつの首をはねよ!」
「おう!」
数人のごっつい騎士が馬に乗って出てきた。いやあ、強そうだわ。ぼくなら秒で殺される自信がある。
「ふん」
ペチ、っていう音がして騎士たちはハエみたいに潰された。秒どころじゃなかったわ。
「な、なんだ!何が起きた!なんだかわからんが殺せ!こいつを殺せ!全軍、攻撃だ!」
「バカが」
大天使は真っ白な翼を広げた。天がやにわに暗く、そして漆黒に染まった雲が渦を巻きだす。地表には恐ろしい風が吹き荒れ、地鳴りが響き、やがて地面が裂けた。
「こ、これはあああああああっ」
「神の怒りだ。見よ、地に天に満ち満ちている!」
「たあすけてえええええ」
「もう遅いわ!」
荒れ狂う嵐の中、兵隊たちはもがき苦しんでいる。ちょっとかわいそうになった。
「ねえ大天使さま、もうそのくらいにしてあげないかな?」
「なんだきさま、この大天使カラーラさまに異議をとなえるのか?わたしに異議をとなえるは神に異議を…」
「はいはいわかります。でも彼らも十分反省してるみたいですし、ここは穏便に」
「ならん」
「ですよねー」
またまた困ったことになった。これじゃ交渉相手がいなくなってしまう。下手したら帝国そのものがなくなってしまうかもしれない。まあそれならそれでいいけどね。
「ねえ大天使さま。ここでこんな下っ端相手にしててもしょうがないんじゃないの?もっと上の責任者に言った方がよくない?」
ラフレシアが至極まともなことを言った。
「ふむ、それもそうね…」
「それにこんな人数いきなり天国や地獄に送り込んじゃったら迷惑でしょうし」
「そりゃまあ手続きとか大変になるな…最近天使どもは過労だ休みくれとかうるさいしな…」
「じゃあとりあえずこの場はおさめて、その責任者、つまり皇帝に直接苦情入れに行くのはどうかしら」
「ま、まあそれがいいか、な?」
すごい、ラフレシア、大天使を言いくるめちゃった。おバカでわがままな、ただのやんちゃな伯爵令嬢だと思ってたけど、見直した。
「じゃああたしたちも一緒に行ってこいつらの悪行を証言しましょうか?」
「そ、それは助かるな。いちいちわたしが説明するのも面倒だし」
「じゃあみんな連れて行っていいですか?こんなところで魔物たちを放置したら、ここら近所の人たちに迷惑かかっちゃうかもですし」
「好きにせよ」
やったー、うまい具合に帝都に行けるね。ラフレシアちゃんすごーい。
「どうよデリア、あたしを見直した?」
「はい!もちろんです、ラフレシアさま!」
「ふん、まあいいわ。それにしても大天使って言ってもなんかちょとチョロすぎるわね?なんでかしら」
それってぼくのスキルが出したから?ぼくがチョロいから?あー、それは十分あり得る。まあこの場はうまく収まったんだ。よしとしよう。
「じゃあ帝都まで、出発よ!」
ラフレシアがドヤ顔でみんなに号令をかけた。町で買ったドレスがヒラヒラと風になびく。正直ウザい。
「おい、こら」
「なによ大天使さま」
「おまえわたしに対してぞんざいなのか敬ってるのかわからんやつだな」
「気のせいですわよ」
「とにかくわたしが先頭で、号令かけるのもわたしだ。いいな」
かなり自己顕示欲が強いみたいだこの大天使。ラフレシアといい勝負だな。
「おい、そこのウジ虫」
大天使がうずくまっている大将軍に声をかけた。
「わ、わたしでございますか?」
「そうだそこの虫けら」
「わたしの名はミシエ…」
「名など聞いておらん!虫の名に興味はない。お前は道案内だ。いいな!」
「は、はい。かしこまりました」
うなだれて大将軍がそれに従う。無事だった兵士たちもとぼとぼとついてくるようだ。それはまるでいくさに敗れた傷病兵のようだった。
やがて帝都に近づくにつれ、帝国の人々はみな一様に驚き、そして畏怖した。そりゃそうだ。天使のようなやつがボロボロになった大将軍に案内され、他国の騎士団がおかしな馬車に乗ったおかしな連中と死霊や魔物を連れて、しかもさらにその後ろをボロボロになった帝国軍がうなだれてついてくるのだから。
「ここが皇帝の居城でございま…」
大将軍が言い終わらないうちに大天使が居城を半分ほど吹き飛ばした。いきなり何すんだ!
「ひいいいい、な、なにをなさいます!」
「はあ?決まってるだろ、お仕置きだ」
問答無用か…まあしょうがない。大天使なんだから。それにぼくのぶっ壊れスキルから呼び出したんだ。このくらいはするよね。
「そういうことだ。わかったらおとなしくその魔物たちを解散させろ」
「いやー、せめてこの先の帝国っていうところまで目をつぶっていただけませんか?」
「アホか。大天使のわたしがそんなことできるか!」
「ですよねー」
これは困った。まさか自分のスキルで呼び出したやつに邪魔されるなんて。やっぱりぼくのアレはぶっ壊れスキルなんだ。
「神が怒りださんうちにホレホレ、解散解散」
その神さまにもらったスキルであんたが出てきたんでしょうが。まったく使えないなあ。
「きさまたちは何者だ!」
きゃー、またなんか来た。
「デリア、大変だ!あれもしかして帝国軍だよ!囲まれちゃってるわ。いつの間に?」
いやさんざんここで時間食ってましたから。
「ああ?誰に向かってそんな口叩いてるの?」
振り向いた大天使さまがお怒りになっていらっしゃる。
「なっ?えらそうに!このおかしなやつはなんだ?バケモノか?」
立派な身なりの騎士だ。恐らく大将軍って感じだけど、天使って見たことないのかな?まあ、実際見たことあるやつっていないけどね。生きてるときはね。
「バケモノ?わたしがか?」
大天使さま怒ってるよ。いいのか?
「どう見ても尋常ならざるものじゃないか、きさまは!」
あーあ、知らないよ。それにしても大した軍勢だ。こんなに多くの兵隊をよく短時間でまとめてここに来れたもんだ。さすが帝国だけあるな。
「いい度胸だ。この大天使を怒らせるということは神を怒らせるということだ。存分に神の怒りを見せてやろう」
「何をわけのわからんことを!誰かやつの首をはねよ!」
「おう!」
数人のごっつい騎士が馬に乗って出てきた。いやあ、強そうだわ。ぼくなら秒で殺される自信がある。
「ふん」
ペチ、っていう音がして騎士たちはハエみたいに潰された。秒どころじゃなかったわ。
「な、なんだ!何が起きた!なんだかわからんが殺せ!こいつを殺せ!全軍、攻撃だ!」
「バカが」
大天使は真っ白な翼を広げた。天がやにわに暗く、そして漆黒に染まった雲が渦を巻きだす。地表には恐ろしい風が吹き荒れ、地鳴りが響き、やがて地面が裂けた。
「こ、これはあああああああっ」
「神の怒りだ。見よ、地に天に満ち満ちている!」
「たあすけてえええええ」
「もう遅いわ!」
荒れ狂う嵐の中、兵隊たちはもがき苦しんでいる。ちょっとかわいそうになった。
「ねえ大天使さま、もうそのくらいにしてあげないかな?」
「なんだきさま、この大天使カラーラさまに異議をとなえるのか?わたしに異議をとなえるは神に異議を…」
「はいはいわかります。でも彼らも十分反省してるみたいですし、ここは穏便に」
「ならん」
「ですよねー」
またまた困ったことになった。これじゃ交渉相手がいなくなってしまう。下手したら帝国そのものがなくなってしまうかもしれない。まあそれならそれでいいけどね。
「ねえ大天使さま。ここでこんな下っ端相手にしててもしょうがないんじゃないの?もっと上の責任者に言った方がよくない?」
ラフレシアが至極まともなことを言った。
「ふむ、それもそうね…」
「それにこんな人数いきなり天国や地獄に送り込んじゃったら迷惑でしょうし」
「そりゃまあ手続きとか大変になるな…最近天使どもは過労だ休みくれとかうるさいしな…」
「じゃあとりあえずこの場はおさめて、その責任者、つまり皇帝に直接苦情入れに行くのはどうかしら」
「ま、まあそれがいいか、な?」
すごい、ラフレシア、大天使を言いくるめちゃった。おバカでわがままな、ただのやんちゃな伯爵令嬢だと思ってたけど、見直した。
「じゃああたしたちも一緒に行ってこいつらの悪行を証言しましょうか?」
「そ、それは助かるな。いちいちわたしが説明するのも面倒だし」
「じゃあみんな連れて行っていいですか?こんなところで魔物たちを放置したら、ここら近所の人たちに迷惑かかっちゃうかもですし」
「好きにせよ」
やったー、うまい具合に帝都に行けるね。ラフレシアちゃんすごーい。
「どうよデリア、あたしを見直した?」
「はい!もちろんです、ラフレシアさま!」
「ふん、まあいいわ。それにしても大天使って言ってもなんかちょとチョロすぎるわね?なんでかしら」
それってぼくのスキルが出したから?ぼくがチョロいから?あー、それは十分あり得る。まあこの場はうまく収まったんだ。よしとしよう。
「じゃあ帝都まで、出発よ!」
ラフレシアがドヤ顔でみんなに号令をかけた。町で買ったドレスがヒラヒラと風になびく。正直ウザい。
「おい、こら」
「なによ大天使さま」
「おまえわたしに対してぞんざいなのか敬ってるのかわからんやつだな」
「気のせいですわよ」
「とにかくわたしが先頭で、号令かけるのもわたしだ。いいな」
かなり自己顕示欲が強いみたいだこの大天使。ラフレシアといい勝負だな。
「おい、そこのウジ虫」
大天使がうずくまっている大将軍に声をかけた。
「わ、わたしでございますか?」
「そうだそこの虫けら」
「わたしの名はミシエ…」
「名など聞いておらん!虫の名に興味はない。お前は道案内だ。いいな!」
「は、はい。かしこまりました」
うなだれて大将軍がそれに従う。無事だった兵士たちもとぼとぼとついてくるようだ。それはまるでいくさに敗れた傷病兵のようだった。
やがて帝都に近づくにつれ、帝国の人々はみな一様に驚き、そして畏怖した。そりゃそうだ。天使のようなやつがボロボロになった大将軍に案内され、他国の騎士団がおかしな馬車に乗ったおかしな連中と死霊や魔物を連れて、しかもさらにその後ろをボロボロになった帝国軍がうなだれてついてくるのだから。
「ここが皇帝の居城でございま…」
大将軍が言い終わらないうちに大天使が居城を半分ほど吹き飛ばした。いきなり何すんだ!
「ひいいいい、な、なにをなさいます!」
「はあ?決まってるだろ、お仕置きだ」
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