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ニート、反省する
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「どうしたのデリア、顔が青いわよ」
「な、何でもないよ」
「変なもん食べるからよ」
どうしよう…ぼくが原因だ。ぼくのせいなんだ…。ああえらいことしちゃった。国を丸ごと滅亡させてしまった。これは気をつけないと。よし、反省した。そうだ、気持ちをきりかえなくっちゃね。もう忘れよう。記憶からすっぱりと消去しよう!
「うえーーーーん」
ポンコツ姫…泣くなよー。うわー、もの凄い罪悪感。ぼくがやったって証拠はないけど、やっぱり責任はぼくなんだろうな。それにこの姫や捕虜になった王族たち、それに家臣や領民たちの人生も運命も…台無しにしちゃったんだもんな。
「どうすんのよデリア」
「はい?なんでぼく?」
ラフレシアに感づかれた?い、いやまさかね。
「かわいそうでしょ?何とかしてあげなさいよ」
「何とかしろって言ったって、ぼくに何ができるわけじゃないし」
スキルはおでんで使っちゃったし。明日まで待てばまた使えるけど、そうなると今度はぼくが怪しまれる。魔法使いたちだって色々調べてくるだろうし、その帝国っていうとことももめるんじゃないか?戦争にでもなったらもっと悲惨だ。
「何とかならないかな…」
ラフレシアが珍しく悲しそうな顔をした。はあ、まあしょうがないな…。
「なんとかならないこともないですが」
みんなは一斉にぼくを見た。
「な、なにいい加減なこと言ってるんだ、デリアくん!きみなんかにどうにかなるもんでもないだろ!相手は帝国だ。それこそガザン王国とダルメシア王国とわがリスタリア王国を足してもどうにも届かない超大国家なのだぞ?いったいどうやって…」
まだガザンより上があんのか。めんどくさ。
「簡単です。買うんですよ」
「はあ?なにを」
「国を、です」
「ななななにいってんだねきみは」
「ぼくらはそれを買うお金を持っています」
「あのねデリアくん?そんなお金どこにあるの?それってきっともの凄い量の金貨とかだよ?い、いや、売ってくれるかどうかもわからないんだよ?」
まあお金はあるけどね。あとはみんな次第。
「大国を買うくらいの金銀財宝はダンジョンにありました。みんなで山分けにしましたが、それをまとめれば。王や王族の身代金ということにして、あとは交渉です。でもみんなの気持ちが…」
ぼくはみんなを見た。ミローネたち人外はお金には興味ない。メリアン姫だって異存はないはずだ。問題はラフレシアとオッサンとポーリンだ。
「あ、あたしは別にうちは金持ちだから、そ、そんなお金なんか困ってないし…」
声が震えてるぞ、ラフレシアちゃん。
「お、俺もとくに何が欲しいってことはないけどその、老後の貯えとか、な…」
「あたしはいいよ。もともとなんにもしてないし。庭とキッチンはあきらめるから、その、店の修繕費はくれやしないかね?」
「何も全部寄こせとは言いませんよ。王族の身代金に見合った額ですから、まあかなり残ると思うんです」
「そ、そうか!なら俺はいいぜ」
「出窓が作れるわね」
「服買えるのね?」
「はいはい」
これで決まり。あとは交渉を優秀なガイリアスさんに頼めば万事オッケーだ。いやあ、苦労した。労働はしてないけどね。
「じゃあ、お願いできるかな、デリアくん」
「はい?」
「この大任はきみをおいてほかにいない。いやあ、せっかくダンジョンから帰って来たばかりで申し訳ないが、ひとつ、頼まれてくれないかな?」
「嫌です、と言ったら?」
「ハイお兄さん、ちょっとこっち来てー」
「おい、やめてくれ。わかった」
兄さんが変な顔してこっち見てる。いい加減いつまでも人質になってんなよ、お兄さん!
そういう展開ですか。まったくニートをなんだと思っているんですか。だいたいこんな歳のぼくが大国の交渉なんかできるわけないでしょ。常識ってもんがないんですかこの世界の人間には。
「デリアくん、わたしも一緒に行こう」
颯爽と現れたのはなんとうちの国の王子だった。
「あなたは…」
「初めまして。ハロルドです」
王子ハロルド?なにこのイケメン。イケメンは敵!ニートの本能がそう叫んだ。
「あ?なんで?どうしてここに?婚約は破棄されたんじゃ?」
「まあ、そういうことになるけれど、ぼくはさっきからきみたちを見ていて、これはって思ったんだ」
はあ?なに言ってんの?
「メリアン姫を気遣うきみたちの思い、熱い友情、そして献身を。きっと素晴らしい人なんだね、メリアン姫は」
いえ、それ勘違いですから。ぼくらが人がいいだけで、このポンコツ姫の性格の悪さにはみんな頭来てますから。
「わたしも姫のお役に立ちたい。そしてもと婚約者として、あなたへの愛を全うしたいのです!」
なに言ってんだこのポンコツ王子。お前みたいなのがこいつと結婚したら、一生尻に敷かれまくりだぞ。あー、でもまあいいか。一緒に行って責任はみんなこいつになすりつければ。面倒なことはみんなこいつにやらせよう。
「さすがはわが王国第一の王子です。賞賛します。ではさっそく」
「ではわが王宮騎士団数人を連れて行こう。もちろんきみの兄さんもね」
「はい?」
ガイリアスさんニヤニヤ笑ってる?くっそー、妙な入れ知恵したのか?いや、案外この王子、食えないやつかも知れない。まるでポンコツに見えるが、腹の底の読めないえらいやつなのかも?
「待ってよ!服が先!」
んもう、ラフレシアちゃん。
「あたしは食事と昼寝がしたいわね。ねえハロルド、いいでしょ?」
「しょうがないなあ二人とも。じゃあ出発は明日ということで。いやあ、ねえなに食べます?ガレットのおいしい店知ってるんですよ」
「勝手に決めないで。まず着替えてからでしょ!ほら、荷物持ちなさいよハロルド」
「はいはい」
ポンコツだーっ!
「な、何でもないよ」
「変なもん食べるからよ」
どうしよう…ぼくが原因だ。ぼくのせいなんだ…。ああえらいことしちゃった。国を丸ごと滅亡させてしまった。これは気をつけないと。よし、反省した。そうだ、気持ちをきりかえなくっちゃね。もう忘れよう。記憶からすっぱりと消去しよう!
「うえーーーーん」
ポンコツ姫…泣くなよー。うわー、もの凄い罪悪感。ぼくがやったって証拠はないけど、やっぱり責任はぼくなんだろうな。それにこの姫や捕虜になった王族たち、それに家臣や領民たちの人生も運命も…台無しにしちゃったんだもんな。
「どうすんのよデリア」
「はい?なんでぼく?」
ラフレシアに感づかれた?い、いやまさかね。
「かわいそうでしょ?何とかしてあげなさいよ」
「何とかしろって言ったって、ぼくに何ができるわけじゃないし」
スキルはおでんで使っちゃったし。明日まで待てばまた使えるけど、そうなると今度はぼくが怪しまれる。魔法使いたちだって色々調べてくるだろうし、その帝国っていうとことももめるんじゃないか?戦争にでもなったらもっと悲惨だ。
「何とかならないかな…」
ラフレシアが珍しく悲しそうな顔をした。はあ、まあしょうがないな…。
「なんとかならないこともないですが」
みんなは一斉にぼくを見た。
「な、なにいい加減なこと言ってるんだ、デリアくん!きみなんかにどうにかなるもんでもないだろ!相手は帝国だ。それこそガザン王国とダルメシア王国とわがリスタリア王国を足してもどうにも届かない超大国家なのだぞ?いったいどうやって…」
まだガザンより上があんのか。めんどくさ。
「簡単です。買うんですよ」
「はあ?なにを」
「国を、です」
「ななななにいってんだねきみは」
「ぼくらはそれを買うお金を持っています」
「あのねデリアくん?そんなお金どこにあるの?それってきっともの凄い量の金貨とかだよ?い、いや、売ってくれるかどうかもわからないんだよ?」
まあお金はあるけどね。あとはみんな次第。
「大国を買うくらいの金銀財宝はダンジョンにありました。みんなで山分けにしましたが、それをまとめれば。王や王族の身代金ということにして、あとは交渉です。でもみんなの気持ちが…」
ぼくはみんなを見た。ミローネたち人外はお金には興味ない。メリアン姫だって異存はないはずだ。問題はラフレシアとオッサンとポーリンだ。
「あ、あたしは別にうちは金持ちだから、そ、そんなお金なんか困ってないし…」
声が震えてるぞ、ラフレシアちゃん。
「お、俺もとくに何が欲しいってことはないけどその、老後の貯えとか、な…」
「あたしはいいよ。もともとなんにもしてないし。庭とキッチンはあきらめるから、その、店の修繕費はくれやしないかね?」
「何も全部寄こせとは言いませんよ。王族の身代金に見合った額ですから、まあかなり残ると思うんです」
「そ、そうか!なら俺はいいぜ」
「出窓が作れるわね」
「服買えるのね?」
「はいはい」
これで決まり。あとは交渉を優秀なガイリアスさんに頼めば万事オッケーだ。いやあ、苦労した。労働はしてないけどね。
「じゃあ、お願いできるかな、デリアくん」
「はい?」
「この大任はきみをおいてほかにいない。いやあ、せっかくダンジョンから帰って来たばかりで申し訳ないが、ひとつ、頼まれてくれないかな?」
「嫌です、と言ったら?」
「ハイお兄さん、ちょっとこっち来てー」
「おい、やめてくれ。わかった」
兄さんが変な顔してこっち見てる。いい加減いつまでも人質になってんなよ、お兄さん!
そういう展開ですか。まったくニートをなんだと思っているんですか。だいたいこんな歳のぼくが大国の交渉なんかできるわけないでしょ。常識ってもんがないんですかこの世界の人間には。
「デリアくん、わたしも一緒に行こう」
颯爽と現れたのはなんとうちの国の王子だった。
「あなたは…」
「初めまして。ハロルドです」
王子ハロルド?なにこのイケメン。イケメンは敵!ニートの本能がそう叫んだ。
「あ?なんで?どうしてここに?婚約は破棄されたんじゃ?」
「まあ、そういうことになるけれど、ぼくはさっきからきみたちを見ていて、これはって思ったんだ」
はあ?なに言ってんの?
「メリアン姫を気遣うきみたちの思い、熱い友情、そして献身を。きっと素晴らしい人なんだね、メリアン姫は」
いえ、それ勘違いですから。ぼくらが人がいいだけで、このポンコツ姫の性格の悪さにはみんな頭来てますから。
「わたしも姫のお役に立ちたい。そしてもと婚約者として、あなたへの愛を全うしたいのです!」
なに言ってんだこのポンコツ王子。お前みたいなのがこいつと結婚したら、一生尻に敷かれまくりだぞ。あー、でもまあいいか。一緒に行って責任はみんなこいつになすりつければ。面倒なことはみんなこいつにやらせよう。
「さすがはわが王国第一の王子です。賞賛します。ではさっそく」
「ではわが王宮騎士団数人を連れて行こう。もちろんきみの兄さんもね」
「はい?」
ガイリアスさんニヤニヤ笑ってる?くっそー、妙な入れ知恵したのか?いや、案外この王子、食えないやつかも知れない。まるでポンコツに見えるが、腹の底の読めないえらいやつなのかも?
「待ってよ!服が先!」
んもう、ラフレシアちゃん。
「あたしは食事と昼寝がしたいわね。ねえハロルド、いいでしょ?」
「しょうがないなあ二人とも。じゃあ出発は明日ということで。いやあ、ねえなに食べます?ガレットのおいしい店知ってるんですよ」
「勝手に決めないで。まず着替えてからでしょ!ほら、荷物持ちなさいよハロルド」
「はいはい」
ポンコツだーっ!
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