無気力最低ニートが、スキル『一日一回何でも願いがかなう』を取得しても、世界を思いのままにするとか、考えないからニートなんです!

さかなで/夏之ペンギン

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恐怖のデーモン!

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ついに詰みました。人生終りました。ニートのチェックメイトです。天国直行便。いえ、悪魔に殺されたら魂とられて天国には戻れません。ああ、これはマジ終わってる。

「どどどどうするの、ジーク!」
「ポーリン、すまねえ。俺が欲かいちまったばかりに」
「いやそりゃあたしもだよ」
「ポーリン!」

うるさいなあ。最後の瞬間くらい静かにできないのかな。ああまあ、ここまでの人生も、悪くなかったなあ…。

「こらデリア!なにあきらめムード醸し出してんのよ!あたしこんなとこで死にたくないわよ!まだ長生きして贅沢したいのよ!なんとかしなさいよ!」
「そうよ、あんた。あたしを助けた責任果たしなさいよ!王女さまの絶対命令よ!」

メチャクチャ言うてはる。なんやねんおまえらのその理屈。

「そうよ!あんたあたしたちのマスターでしょ!責任取ってよ!」
「そうだ、責任者」
「パパ大好き。やっつけろ」

おまえらまでか。どこまでぼくを頼るつもりだ。ニートは頼っちゃいけないんだぞ!

「先ほどからガチャガチャうるさいですおめえらさま方」

きゃー悪魔しゃべった!

「あんたらはなんですか?泥棒ですか?」

あー理屈上はそうだよね。他人の住居無断侵入して物色してんだもんね。いいわけできないよね。

「やかましい悪魔め!勝手なことぬかすな!」

いや、勝手なこと言ってんのはオッサンの方です。悪魔悪くない。

「ほほう、盗人猛々しいとはこのことを言うんですねえ」

悪魔さん、その通りです。ごめんなさい。

「わが名はオーゾ・ミュリハイム。悪魔王にしてデーモン族の頂点なり!…ですがなにか?」
「いえ、どうやら家を間違えたみたいでして、おかしいなあ、住所がちがったんだなあ。すいません、おさわがせしました。オーゾさん、でしたっけ?小学校の裏手って聞いたもんで、まったく当てになんないなあこの地図」
「そうですか、お気をつけて…って、おまえは道に迷った宅配業者か!なにごまかしてんだ、ボケっ」

デーモン閣下、怒ってる。こりゃまずい。

「ねえデリア、よけい怒らせてない?」
「ここで冷静な指摘やめて。それよりぼくがおとりになるからみんなと逃げて」
「デリア…そんな…」
「ラフレシア…きみには…」
「じゃあそうさせてもらうわね。頑張ってね、デリア」
「バイバーイ」
「わりいな、小僧」
「坊や、ありがとう」
「マスター、お先に」
「命を粗末にするな、マイマスター」
「おい!」

みんな逃げた。ぼくをおいて。薄情者どもめ。いいよいいよ。ぼくが犠牲になればいいんだから。

「さあ、あなたは逃げないんですか?いい度胸だと褒めて差し上げましょうね。まああいつらはあとでゆっくりとなぶり殺してやるんで、心配しなくてもいいですよ」
「あ、それ聞いてよかった。なんかスカッとしました」
「あんたどんだけひん曲がってんだ」
「ほっといてください」
「ではどこから行きましょう?まず手足をもいでから…それともいきなり頭から…夢膨らみますねえ」

膨らますなそんなもん。あーあ、今度こそマジで死んじゃう。これはお約束の回想シーンからやらねばならないのかな。めんどくさいな。

「あれはぼくが中学を出たころだった…一流高校に進学したぼくは毎日勉強に明け暮れ…」
「ちょっとなにかもの思いの最中、悪いんですけどこの子やめさせてもらえませんか?」

はあ?デーモン閣下がぼくに何か懇願してる?なんだ?みるとリヴァちゃんがデーモン閣下の腕をかじっている。

「何してんの!リヴァちゃん!」
「ガリョガリョガリョ」
「いででっでっででで!やめなさいこのガキっ!いでえつってんだろっ!」

ああ、聞いてない。あー悪魔食われていく。おなか壊さなきゃいいけどね。生肉だろうし。

「放してっ!お願い!な、何でもいうこと聞くから!この子放してえっ!」
「だそうだ。やめてあげて、リヴァちゃん」
「ぺっ、しかたない。パパのお言いつけは守るいい子なのだ」
「このガキ、わたしの肉をペッ、しやがった!」
「うっさい!それがどうした!もう一度食わさせるぞ」
「ごめんなさい、パパさん」
「おまえがパパ言うな」
「はい」

悪魔がシュンとなった。食われた腕はどうやら再生するみたいだ。便利だね。

「あのー、ひとつ聞いてもいいですか?」

悪魔がぼくに質問?なんだ?

「なによ」
「その子、なんですか?悪魔より強いって、ふつうあり得ないんですけど」
「この子?さあね。まあ生物界じゃ一番強いってみんな言ってるけど」
「生物界で?あり得ません。トラとかサイとかのレベルじゃないですよ」
「へえ、だってドラゴンって言ってるよ、みんな。それって生物界の頂点ってことだろ?」

悪魔は一瞬たじろいだようだった。わなわな震えている。なんだ?

「あ、あああんたそれちがうよ?」
「ちがうんですか?」
「あ、当り前じゃないですか。生物界じゃないですよ、それ」
「じゃあ何界なの?」
「すべてです。すべての頂点です」
「わあ、すごいんだね、ドラゴンって」
「で、でもドラゴンっていっても色々います。弱いのから強いのまで…。その子は?よく見ればベビードラゴンのようですが…でも変身できる?あり得ない…」

首をかしげている。そんなに不思議なのかな、この子。

「あたしはリヴァ。ふつうの女の子」
「こいつだまらせてくれませんか?声だけ聞いてるとなんかムカつく」
「自分で頼め」
「いや、いいです…えー、え?リヴァ?」
「ああ、ぼくがつけてやった。可愛いだろ?」
「い、いやなんでそんな名を?」
「だってリヴァイアサンていうからさ」

失神したようだ。悪魔が失神するのを見たのは初めてだ。いや、悪魔見たのも初めてだけどね。

「ねえ、終わったー?」

ラフレシアの声だ。戻ってきてくれたんだ。

「ほら言ったでしょ、何とかしてくれるって」
「まあ正直期待はしていなかったけどな」
「きっとまぐれね」
「まあまあ、まぐれでもいいじゃん」
「さすがマイマスター。まぐれも半端じゃない」
「ふん、当然よ。あたしを助けた義務よ」

どっかいけおまえら!


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