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ダンジョンの秘宝?
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「じゃあ早いとこ帰りましょう」
至極当然な提案をぼくはしたつもりだった。それに対し、反対意見など出るわけないと思っていた。
「なに考えてんのっ!せっかくここまで来て百階層の暗黒の魔王像に勝ったっていうのに、このまま帰る?あんたバカじゃないの!」
「あの、お姫さま?ぼくらはあなたを救出して無事帰還するのが役目なんですよ?ダンジョン探査なんて請け負ってませんから」
「はあ?かさねがさねバカね、あんた。いい?ここにはもの凄いお宝があんのよ?それ見つけないで帰ってどうすんのよ!」
バカバカ言いすぎです。ニートにはその言葉は免疫あるけれど、そう連続して言われると傷つきますよ。
「おいデリア、その姫さんの言うことも一理あるぜ。な?せっかくここまで必死で来たんだぜ?お宝を拝んだって罰は当たらねえぜ?」
オッサン、ぼくと一緒で何もしてないでしょ?何が必死にだ。
「ジークの言う通りよ。せっかく来たんだし…」
ポーリンさんあなたもですか?
「ねえデリア?」
振り向くとラフレシアまでなんか訴える目をしている。まったく欲深き人間どもだ!精霊たちを見ろ。まったくの無欲だ。人間として恥ずかしいし。
「デリア、おなか減った」
「腹減ったぞマイマスター」
「パパ飯。くれなきゃ誰か食う」
まったくこのアンチヒューマンども!食欲しかないのか!
「ほらお嬢ちゃんたち、干し肉あるわよ。これでデリアちゃん説得して頂戴ね」
おばさん、やめろ!食い物でぼくの子分買収するな!
「おい、デミル、探索じゃ。いいな?」
「ミローネ、おまえ…」
「むぐむぐむぐ」
「ネクロ、ちゃんと喋れ」
「ガリガリガリ」
「リヴァちゃん、それ干し肉ちゃうよ。悪魔像だよ」
もう勝手にしなさい。まあぼくも何もしてないんで偉そうなこと言えませんけどね。
「じゃあ探索だ。秘宝を見つけよう!なあ姫さんよ、この百階層でこのダンジョンは終わりなのか?」
オッサンはキョロキョロ見まわしながらメリアン姫に聞いた。
「知らないわよ。あたしはその穴に放り込まれて、護衛の中にいた魔法使いが結界魔法で穴を塞いだのよ。みんな死んじゃったみたいだけど、だからそれ以上のことは知らないわ」
「魔法使い?あんた、国の外に出したのか?」
「いいじゃない。うちは何でも許されるってパパがいつも言ってるわ」
うわああああ、大国の論理丸出しなのね。早く滅びてしまえ、ガザン王国!
「ねえ、こっちに扉があるわよ?」
ミローネが何か見つけた。扉?まあなにそれ都合よく。
「どうやって開けんだろう?」
オッサンが首をひねった。扉に取っ手がないからだ。
「押すんじゃね?」
ぼくが扉を押すと簡単に開いた。
「おおー」
今回、唯一ぼくが働いた場面だ。
「階段があるわね。下の階かしら?」
「ラフレシアあのさ、さっきの悪魔像がこの扉を守ってたんだろ?ということはこの下に何かあるのはわかる。だけどそれがさ、もっと恐ろしいものに守られてたらどうすんの?」
「そんなのさっきみたいにやっつければいいじゃん。ね、デリア」
ひとの見えないゴーレムあてにすんなよ。よくなんだかわかんないものにすがれるな。
「まあどっちみち降りてくんだろ?」
「そういうことね」
「精霊ミローネ、この先に何があるか見て来てくんない?」
「いやよ」
拒否ですか?マスターのぼくに拒否ですか?あ、そういや契約は解消したんだっけ?
「そうじゃないわよ、マイマスター。あたしはいつまでもあんたのしもべよ」
頭んなか読むなつーの!
「じゃなんで?」
「いつまでもあんたと一緒にいたいからよ」
「わけわかんない」
「いい?この下にいるのは悪魔よ。それも飛び切り恐ろしいやつよ?そういう気配が強烈にあるわ。あたしがノコノコ行ったらボリボリ頭から食われちゃうわ」
「だそうですみなさん帰りましょう」
そんなもんと戦えるか。ニートは引き際が肝心なんだ、覚えとけ!
「待てデミル、ここはみんなで戦おう」
「いやですごめんなさい」
「せっかくここまで来たんだぞ?」
「せっかくも失格もありません。帰らせてもらいます!」
「ならあんたのわけわかんない謎スキルでやっつければいい」
ネクロがおかしなことを言いだした。こいつぼくのぶっ壊れスキルのことを言っているのか?まあうすうす感づかれてはいたんだろうが、正確にはわかってない。頭の中を読まれても、具体的なものはないからね。
「そんなものを持ってやがんのか、おまえ。いったい何のスキルだ?」
オッサンになんか知られてたまるか。いや、人に知られたらえらいことになる。
「まあ魔法、みたいなものさ」
「だったらおまえ、国家管理になっちまうぞ?」
「そうじゃないよ。じゅ、呪法さ」
「呪法?聞いたことねえな」
「そりゃそうだ。代々ぼくんちに伝わる禁断の呪術なんだからね」
「禁断って…ちゃっかり出してんじゃないのかよ」
「まあそういうことね」
「じゃあサクッとやってくれよ」
「はあ…」
しょうがないなあ。まあいいか。
みんなでびくびくしながら下に降りていく。なんかすごい瘴気が漂っています。もろ悪魔の棲みかって感じです。
「なんかいる」
オッサンが目ざとく見つけた。大きく広い部屋の中央の玉座に何か腰かけている。いや、もろ悪魔じゃないか、あれ!
「小僧、やっちまえ」
「誰が小僧か」
「いまそれやってるばあいじゃねえ!」
まあそうだね。じゃ、諸事情もあることだし早めに終わらせよう。はい、スキル発動、悪魔を滅ぼせ!
「なあ、デミル?まだか?」
「えーと」
なぜかスキルは発動しませんでした。そしてゆっくりと悪魔は玉座から立ち上がりました。真っ赤な目です。きっと怒ってます。ああ、なんで?
至極当然な提案をぼくはしたつもりだった。それに対し、反対意見など出るわけないと思っていた。
「なに考えてんのっ!せっかくここまで来て百階層の暗黒の魔王像に勝ったっていうのに、このまま帰る?あんたバカじゃないの!」
「あの、お姫さま?ぼくらはあなたを救出して無事帰還するのが役目なんですよ?ダンジョン探査なんて請け負ってませんから」
「はあ?かさねがさねバカね、あんた。いい?ここにはもの凄いお宝があんのよ?それ見つけないで帰ってどうすんのよ!」
バカバカ言いすぎです。ニートにはその言葉は免疫あるけれど、そう連続して言われると傷つきますよ。
「おいデリア、その姫さんの言うことも一理あるぜ。な?せっかくここまで必死で来たんだぜ?お宝を拝んだって罰は当たらねえぜ?」
オッサン、ぼくと一緒で何もしてないでしょ?何が必死にだ。
「ジークの言う通りよ。せっかく来たんだし…」
ポーリンさんあなたもですか?
「ねえデリア?」
振り向くとラフレシアまでなんか訴える目をしている。まったく欲深き人間どもだ!精霊たちを見ろ。まったくの無欲だ。人間として恥ずかしいし。
「デリア、おなか減った」
「腹減ったぞマイマスター」
「パパ飯。くれなきゃ誰か食う」
まったくこのアンチヒューマンども!食欲しかないのか!
「ほらお嬢ちゃんたち、干し肉あるわよ。これでデリアちゃん説得して頂戴ね」
おばさん、やめろ!食い物でぼくの子分買収するな!
「おい、デミル、探索じゃ。いいな?」
「ミローネ、おまえ…」
「むぐむぐむぐ」
「ネクロ、ちゃんと喋れ」
「ガリガリガリ」
「リヴァちゃん、それ干し肉ちゃうよ。悪魔像だよ」
もう勝手にしなさい。まあぼくも何もしてないんで偉そうなこと言えませんけどね。
「じゃあ探索だ。秘宝を見つけよう!なあ姫さんよ、この百階層でこのダンジョンは終わりなのか?」
オッサンはキョロキョロ見まわしながらメリアン姫に聞いた。
「知らないわよ。あたしはその穴に放り込まれて、護衛の中にいた魔法使いが結界魔法で穴を塞いだのよ。みんな死んじゃったみたいだけど、だからそれ以上のことは知らないわ」
「魔法使い?あんた、国の外に出したのか?」
「いいじゃない。うちは何でも許されるってパパがいつも言ってるわ」
うわああああ、大国の論理丸出しなのね。早く滅びてしまえ、ガザン王国!
「ねえ、こっちに扉があるわよ?」
ミローネが何か見つけた。扉?まあなにそれ都合よく。
「どうやって開けんだろう?」
オッサンが首をひねった。扉に取っ手がないからだ。
「押すんじゃね?」
ぼくが扉を押すと簡単に開いた。
「おおー」
今回、唯一ぼくが働いた場面だ。
「階段があるわね。下の階かしら?」
「ラフレシアあのさ、さっきの悪魔像がこの扉を守ってたんだろ?ということはこの下に何かあるのはわかる。だけどそれがさ、もっと恐ろしいものに守られてたらどうすんの?」
「そんなのさっきみたいにやっつければいいじゃん。ね、デリア」
ひとの見えないゴーレムあてにすんなよ。よくなんだかわかんないものにすがれるな。
「まあどっちみち降りてくんだろ?」
「そういうことね」
「精霊ミローネ、この先に何があるか見て来てくんない?」
「いやよ」
拒否ですか?マスターのぼくに拒否ですか?あ、そういや契約は解消したんだっけ?
「そうじゃないわよ、マイマスター。あたしはいつまでもあんたのしもべよ」
頭んなか読むなつーの!
「じゃなんで?」
「いつまでもあんたと一緒にいたいからよ」
「わけわかんない」
「いい?この下にいるのは悪魔よ。それも飛び切り恐ろしいやつよ?そういう気配が強烈にあるわ。あたしがノコノコ行ったらボリボリ頭から食われちゃうわ」
「だそうですみなさん帰りましょう」
そんなもんと戦えるか。ニートは引き際が肝心なんだ、覚えとけ!
「待てデミル、ここはみんなで戦おう」
「いやですごめんなさい」
「せっかくここまで来たんだぞ?」
「せっかくも失格もありません。帰らせてもらいます!」
「ならあんたのわけわかんない謎スキルでやっつければいい」
ネクロがおかしなことを言いだした。こいつぼくのぶっ壊れスキルのことを言っているのか?まあうすうす感づかれてはいたんだろうが、正確にはわかってない。頭の中を読まれても、具体的なものはないからね。
「そんなものを持ってやがんのか、おまえ。いったい何のスキルだ?」
オッサンになんか知られてたまるか。いや、人に知られたらえらいことになる。
「まあ魔法、みたいなものさ」
「だったらおまえ、国家管理になっちまうぞ?」
「そうじゃないよ。じゅ、呪法さ」
「呪法?聞いたことねえな」
「そりゃそうだ。代々ぼくんちに伝わる禁断の呪術なんだからね」
「禁断って…ちゃっかり出してんじゃないのかよ」
「まあそういうことね」
「じゃあサクッとやってくれよ」
「はあ…」
しょうがないなあ。まあいいか。
みんなでびくびくしながら下に降りていく。なんかすごい瘴気が漂っています。もろ悪魔の棲みかって感じです。
「なんかいる」
オッサンが目ざとく見つけた。大きく広い部屋の中央の玉座に何か腰かけている。いや、もろ悪魔じゃないか、あれ!
「小僧、やっちまえ」
「誰が小僧か」
「いまそれやってるばあいじゃねえ!」
まあそうだね。じゃ、諸事情もあることだし早めに終わらせよう。はい、スキル発動、悪魔を滅ぼせ!
「なあ、デミル?まだか?」
「えーと」
なぜかスキルは発動しませんでした。そしてゆっくりと悪魔は玉座から立ち上がりました。真っ赤な目です。きっと怒ってます。ああ、なんで?
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