43 / 88
囚われの姫
しおりを挟む
ジークさんとポーリンさんは悲鳴のような声をあげていたが、ぼくらは気にせず探し歩いた。それは百階層目のときだ。
「ねえ、ここおかしな扉よ」
ラフレシアが何か見つけた。おかしな金属?いや、何か光沢のあるものでできたドアのようだ。
「こいつは封印だ。この中に恐らくステージボスがいる。だが解除方法がわからん」
ジークのオッサンはビクビクしながらそう言った。ステージボス?なんじゃそりゃ?
「どいてて」
「はあ?」
ぼくはステルスゴーレムくんにこのドアの封印をぶち破らせた。まあ、あっけないほど簡単にぶち破れたけどね。
「おい、こいつは千年魔法の結界で固められたやつだぞ?どうやったんだ」
「その千年目、だったんでしょう?賞味期限が切れたんですよ」
「賞味期限ってなんだよ!」
「そんなことはどうでもいいから。なかに何かいますよ?」
大きなドームだった。そこに巨大な悪魔像が動いていた。これは終末の絵そのものだった。巨大な真っ黒い悪魔像が剣と斧を持って待ち構えていた。恐い。
「神よ!」
ジークとポーリンはそう言って手を合わせていた。それほど終末臭が漂っている。
ガキン!
ぼくのステルスゴーレムくんがそのステージボスを一瞬にして粉砕した。まあ強い。土煙のなか、その悪魔像は崩れ去っていく…。
「え?」
「えじゃないです。さっきからか弱い声が聞こえます。奥の方からです」
「いやあいつは何だったんだ?」
「気にしないで」
「いやそういうわけには」
「ほらこっちよ!」
ミローネが叫んだ。ぼくがこの部屋に入ってからずっと聞こえていた声の方…、ミローネはオッサンたちを引っ張って行った。
「ほらここよ。これは内部からの防壁ね」
床の上に魔導方陣が見える。魔法が働いているのだ。
「床に仕掛け扉があります。なかに誰かいるようですね。開けましょう」
「開けましょうってどうやってだ?強力な結界魔法だぞ、これ」
そう言わないうちにぼくのステルスゴーレムくんはその結界魔法ごと扉をぶち破った。みんなには、…っていうか人間のラフレシアやオッサン、ポーリンさんには見えなかったろうけど。
「な、なに?」
「いいから。なかに誰かいる」
目を凝らすと、たしかに誰かいた。
「あんたたちは誰!魔物!?」
「失礼だぞ、いきなり。ぼくらは救助隊だ。一応聞くけど、あんたはガザン王国のメアリン姫ですか?」
「ちょっと!あんたたち遅すぎよ!いったいどんだけ人を待たせんのよっ!」
そのセリフでぼくは、この扉を塞いで帰りたくなった。
それはそれは美しいお姫さまだった。だがそれだけだった。わがままオーラが体じゅうから発散していた。ふつうかわいい婚約者が危機に瀕していればどこの王子だって必死になって探しに来る。そうしないで他人任せなのはなるほどそういうことか。
「何よ。何わかったような顔してんのよ!」
「はあ?あのね、すくなくともぼくはあなたの命の恩人なんですよ?」
「意味わかんない。だれが命の恩人ですって?あんたねえ、立場わきまえてしゃべんなさいよ?あんたがいったい誰とお話ししてるのか、その腐れた脳みそにちゃんと理解させてあげましょうか?」
酷いです。そんな言われ方ないです。ニートなんですよ、ぼくは。それなのに頑張ったのに…。まあぼくは何もしてませんけどね。
パチーン!
ラフレシアが王女さまをひっぱたいた。これはあかん!
「な、なにすんのよ!」
「はあ?助けてもらったお礼がこれ?」
「誰も助けてくれって…」
「ああ?さっき悲鳴のように、あたしたちの気配を感じて助けを呼んでたのは、確かあなたよね?」
「し、知らないわ…」
「ふざけんじゃないわよ!助かったと思ったら急にそれ?さすが甘やかされの大国の王女さまね」
「失礼ねっ!」
「失礼なのはどっちよっ!」
「まあまあ…」
しょうがないなあ。まあ、王女さまっていうのはみんなこんなもんだろ?化粧以上に権威が濃い。そうしたもんなんだ。
「偉そうにあんた誰よ!」
王女はぼくに敵意丸出しだった。
「誰ってあんた恩人に!」
ミローネはすっげえ怒っていた。
「まあまあ、ミローネ。いいよ」
「よくない。あたしあんたが軽く見られんの黙ってらんない!だってあんたは…」
「わかってる。ありがとう、ミローネ。でもいいんだ」
「デリア…」
大国のお嬢さまだ、仕方ない。でも今はこのダンジョンから救出するのが先だ。この姫の性格云々はそのあとの話で、しかもぼくらの関知するところではない。王子、がんばれー。
「なに勝手に盛り上がってんのよ。ところで何でここに来れたのよ?何千人犠牲にしたの?」
「犠牲?い、いえひとりも」
「はあ?犠牲もナシでこの最終ステージに?ラスボスの暗黒の魔王像に?」
「そういう名前だったんですか。まあ恐ろしげなモブでしたけど」
「恐ろしげなモブ?…言っている意味が分かんないわよ!ちゃんと説明しなさいよ!」
メチャうぜえ。
「つまり魔法です。魔法でお助けしましたです」
「なに?そうか…それはご苦労」
いいのか?この超常現象それですましていいのか!
「ねえ、ここおかしな扉よ」
ラフレシアが何か見つけた。おかしな金属?いや、何か光沢のあるものでできたドアのようだ。
「こいつは封印だ。この中に恐らくステージボスがいる。だが解除方法がわからん」
ジークのオッサンはビクビクしながらそう言った。ステージボス?なんじゃそりゃ?
「どいてて」
「はあ?」
ぼくはステルスゴーレムくんにこのドアの封印をぶち破らせた。まあ、あっけないほど簡単にぶち破れたけどね。
「おい、こいつは千年魔法の結界で固められたやつだぞ?どうやったんだ」
「その千年目、だったんでしょう?賞味期限が切れたんですよ」
「賞味期限ってなんだよ!」
「そんなことはどうでもいいから。なかに何かいますよ?」
大きなドームだった。そこに巨大な悪魔像が動いていた。これは終末の絵そのものだった。巨大な真っ黒い悪魔像が剣と斧を持って待ち構えていた。恐い。
「神よ!」
ジークとポーリンはそう言って手を合わせていた。それほど終末臭が漂っている。
ガキン!
ぼくのステルスゴーレムくんがそのステージボスを一瞬にして粉砕した。まあ強い。土煙のなか、その悪魔像は崩れ去っていく…。
「え?」
「えじゃないです。さっきからか弱い声が聞こえます。奥の方からです」
「いやあいつは何だったんだ?」
「気にしないで」
「いやそういうわけには」
「ほらこっちよ!」
ミローネが叫んだ。ぼくがこの部屋に入ってからずっと聞こえていた声の方…、ミローネはオッサンたちを引っ張って行った。
「ほらここよ。これは内部からの防壁ね」
床の上に魔導方陣が見える。魔法が働いているのだ。
「床に仕掛け扉があります。なかに誰かいるようですね。開けましょう」
「開けましょうってどうやってだ?強力な結界魔法だぞ、これ」
そう言わないうちにぼくのステルスゴーレムくんはその結界魔法ごと扉をぶち破った。みんなには、…っていうか人間のラフレシアやオッサン、ポーリンさんには見えなかったろうけど。
「な、なに?」
「いいから。なかに誰かいる」
目を凝らすと、たしかに誰かいた。
「あんたたちは誰!魔物!?」
「失礼だぞ、いきなり。ぼくらは救助隊だ。一応聞くけど、あんたはガザン王国のメアリン姫ですか?」
「ちょっと!あんたたち遅すぎよ!いったいどんだけ人を待たせんのよっ!」
そのセリフでぼくは、この扉を塞いで帰りたくなった。
それはそれは美しいお姫さまだった。だがそれだけだった。わがままオーラが体じゅうから発散していた。ふつうかわいい婚約者が危機に瀕していればどこの王子だって必死になって探しに来る。そうしないで他人任せなのはなるほどそういうことか。
「何よ。何わかったような顔してんのよ!」
「はあ?あのね、すくなくともぼくはあなたの命の恩人なんですよ?」
「意味わかんない。だれが命の恩人ですって?あんたねえ、立場わきまえてしゃべんなさいよ?あんたがいったい誰とお話ししてるのか、その腐れた脳みそにちゃんと理解させてあげましょうか?」
酷いです。そんな言われ方ないです。ニートなんですよ、ぼくは。それなのに頑張ったのに…。まあぼくは何もしてませんけどね。
パチーン!
ラフレシアが王女さまをひっぱたいた。これはあかん!
「な、なにすんのよ!」
「はあ?助けてもらったお礼がこれ?」
「誰も助けてくれって…」
「ああ?さっき悲鳴のように、あたしたちの気配を感じて助けを呼んでたのは、確かあなたよね?」
「し、知らないわ…」
「ふざけんじゃないわよ!助かったと思ったら急にそれ?さすが甘やかされの大国の王女さまね」
「失礼ねっ!」
「失礼なのはどっちよっ!」
「まあまあ…」
しょうがないなあ。まあ、王女さまっていうのはみんなこんなもんだろ?化粧以上に権威が濃い。そうしたもんなんだ。
「偉そうにあんた誰よ!」
王女はぼくに敵意丸出しだった。
「誰ってあんた恩人に!」
ミローネはすっげえ怒っていた。
「まあまあ、ミローネ。いいよ」
「よくない。あたしあんたが軽く見られんの黙ってらんない!だってあんたは…」
「わかってる。ありがとう、ミローネ。でもいいんだ」
「デリア…」
大国のお嬢さまだ、仕方ない。でも今はこのダンジョンから救出するのが先だ。この姫の性格云々はそのあとの話で、しかもぼくらの関知するところではない。王子、がんばれー。
「なに勝手に盛り上がってんのよ。ところで何でここに来れたのよ?何千人犠牲にしたの?」
「犠牲?い、いえひとりも」
「はあ?犠牲もナシでこの最終ステージに?ラスボスの暗黒の魔王像に?」
「そういう名前だったんですか。まあ恐ろしげなモブでしたけど」
「恐ろしげなモブ?…言っている意味が分かんないわよ!ちゃんと説明しなさいよ!」
メチャうぜえ。
「つまり魔法です。魔法でお助けしましたです」
「なに?そうか…それはご苦労」
いいのか?この超常現象それですましていいのか!
0
お気に入りに追加
125
あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。

【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる