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新たな使命かよ!
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王は目覚めたとき、何も覚えていないと言った。きっと洗脳されて記憶がないのだ。
「わたしは恥ずかしい。王として、ただ操られていたという。いまだに信じられん。が、息子であるアルフロッドが言うのだ。それは正しいのだろう…」
「父上!」
「わたしは、自失、とはいえ国民の多くに迷惑をかけ、そして他国のものまでも…。その責任は重い。もし許されるなら、わたしは王位をアルフロッドに譲りたい。どうだろう?ガイリアスどの」
そう言って王はガイリアスの手を取った。
「覚えていてくれたのですか、ラインガルドさま」
「忘れるものか。むかしはハインリッヒとともによく遊んだものだ」
「わが王もご心配されております」
「ハインリッヒにはすまないと思っている」
「あなたのせいではございません」
「だがけじめは、つけなければならん。もしリスタリアがこの国を占領するならそれで構わんがな」
ガイリアスは王の手をしっかり握り直し、言葉に力を込めるように王に言った。
「占領は望みません。また元の、麗しい関係になることを望むと、ハインリッヒ王は申しております」
「ありがとう…友よ…」
「もったいないお言葉…」
あーあ、よかったね。これで平和だ。もう戦争はしなくていいんだね。さあ、ぼくもニートに戻るとしよう。約束通りならミントンのアレジ村とセレン村をぼくの領地にしてもらって、そこで死ぬまでニートしてやるぞ。
「ところでそこの少年は?」
王さまがぼくに気がついたようだ。なんか嫌な予感。
「これはわが国のほこる最年少騎士にして男爵のデリアズナル・ローゲン・オルデリスでございます。こたびの教皇の陰謀を打ち破り、その先兵たる女豹ミランダを捕らえた功労者、でございます」
「なんとその若さでか!いやあっぱれ」
そんなにたいしたことしてないし。もっぱら力使ったのは大魔導師のじいさんだし、うまくいったのはミローネやネクロがいたからだし、はっきり言ってぼくなんにもしてないし。
「えー、っていうかぼくんちは準男爵家で、ぼくに爵位はありませんよ?」
「今回の手柄でジョアン・クレッグ・オルデリス、そしてきみ。つまりきみたち兄弟に爵位を与えるのだ」
「兄さんもですか!それはうれしいです」
それでミントンをもらえたら最高だね。さあ帰ろう帰ろう。
「それならわたしの国に来ないか?男爵どころか子爵の待遇を保証するが」
「お断りします。ぼくはリスタリアを愛しているんです」
まあ、それほどでもないけどね。
「おお、それは残念だ。だがこれからもアルフロッドのよき友だちでいてほしい。わたしとこのガイリアスのように」
王子と?そいつは遠慮したい。あいつらがイチャイチャするところなんて見たくもないしね。とっとと帰ろう。
「わかりました。まあありがたくお気持ちはいただきます」
ではさようならー。ぼくはゆっくりと立ち上がると、出口に向かって歩いて行った。
「ちょっと待ってくれないかな、デリアくん」
ガイリアスさんがなんか言ってる。嫌な予感しかしない。
「な、なんですか?もうやることやったし、ぼくの任務はおしまいですよ?」
「そうつれないことを言うな。ちょっとだけ話を聞いてくれないかね?」
ほら来た。聞いちゃだめだ。絶対聞いちゃだめなやつだ!
「お断りします。義務は果たしました。こんどはそっちの番です」
「まあそうだがね、せっかく爵位を与えたんだ。話くらい聞きなさい」
「いやです」
「なんだ、爵位が不満か?せっかく兄さんにまで爵位を与えたのに…」
あーまたその手かよ。卑怯だぞ、こいつめ。
「話聞くだけですよ?」
「ああ、手間はとらせん。よく聞いてくれ。きみはガザン王国を知っているね?」
誰でも知ってるわ。ラフレシアに身分詐称させた大国やろ。それがどうしたんだっちゅーの!
「いやに目つき悪くなったな。まあいい。じつはわが国王のご子息であるハロルド王子とガザン王国の第四王女が近く婚約をすることになっている」
「ああそうですか。そいつはおめでとさん」
まったくどいつもこいつも幸せになろうとしやがって。まあ、幸せに一番縁遠いのがニートですけどね。
「なんか投げやりだな。しかしここに来て問題が起こってな」
「問題?うちの王子がじつはBL専門だったとかですか?」
「なんだね、BLって?」
「いやいいです」
「その王女、メアリン姫というんだが、ちょっと男勝りでね、冒険者まがいのことが趣味と来ていて…」
へえ、なんかカッコいいな。王宮でおしとやかに暮らしているんじゃなくて、魔獣とか悪魔とかと戦ったりするのかな?
「つい先日、あるダンジョンに出かけてい行って…」
「出かけて行って?」
「帰って来ないというんだ」
「はあ、そうですか」
知らんがな。勝手に捜索隊でも出せばいいだろう!大国なんだし。それくらいの人間はいるだろう!
「当然捜索隊を送ったそうだが、これもすべて帰って来なかったという。つまりみなダンジョンから帰れないというらしい。これでは闇雲に人を送り込めない。どうしたらいいかうちの王に相談があった、というわけだ」
「ああそうですか。いやーそれはお気の毒ですね。まあ、王子のお嫁さんならほかにもいっぱいいるでしょうし、今回は縁がなかったということで。じゃ」
「おいおい、勝手に話を打ち切らんでくれ。そこで今回のきみのお手柄が光るのだ」
光らなくてもいいんです。お手柄なんか立ててませんし!
「ダンジョンはここから西方に約十日。頑張ってくれたまえ」
「行くって言ってません!」
「お兄さんは領地どこにしようかなー?そういえば毎年火山が噴火するところに村があったな。あれ?もうなくなっちゃったかな?溶岩で」
「行きゃいいんでしょうこんちきしょう」
「いやあ、そんなに喜んでもらえるとはな」
どこ見てそんなこと言ってるんだ。あーあ、ついてないな。
「だけどもうその王女さまは死んじゃってるかもしれないですよ?」
「いや、ガザン王国の魔導師が、王女のかすかな生命反応をとらえている。どうにかまだ生きておられる。だがいつまで持つかわからないんだ。急いでくれ」
「だったらその魔導師に探させたらいいじゃないですか!」
「知っての通り、魔法使いは国から出られん。出たら近隣の国々が騒ぎ立ててしまう」
おかしな話だ。ガザン王国は超がつくくらいの大国だ。まわりの国がやいやい言ったって、力でねじ伏せるくらいわけないはずだ。しかもうちみたいな弱小王国に姫さま嫁に寄こすとか変だろ。もしかして姫さまダシにして因縁つけてきたとか…まさかね。ヤクザじゃあるまいし。
「ということできみに与えられた、というよりわが国に与えられた猶予は二十日間だ。それ以上は待てないとガザンから申し入れがあった」
なんだよ、またタイムリミットあんのか。めんどくさいなあ。
「ことわれないんですか、それ?」
「ことわった時点でわが国は消滅する。もちろん国交の回復したダルメシアも巻き込んでな」
ヤクザじゃん。大国の姿したヤクザじゃないのか?理不尽、横暴…ニートが最も嫌う言葉がそこに見える。しかたないなあ。兄さんも、ラフレシアにも不幸になってほしくないし。ふたりの王子はどうでもいいけどね。
「じゃあ明日の朝、出発します」
「たのむ。この通りだ」
そういってガイリアスさんは深々と頭を下げた。じつは切羽詰まっていたんだろうな。もうどうしていいかわからなかったに違いない。そう考えると気の毒だった。これも小国の運命なんだな。まったく大国って言うのはいつもどこでも一緒だな。
ぼくは決心した。ぼくの、安全安心なる完全なニートになるため、ぼくはこの使命を果たす!そう、それもたったひとりで、だ!
「わたしは恥ずかしい。王として、ただ操られていたという。いまだに信じられん。が、息子であるアルフロッドが言うのだ。それは正しいのだろう…」
「父上!」
「わたしは、自失、とはいえ国民の多くに迷惑をかけ、そして他国のものまでも…。その責任は重い。もし許されるなら、わたしは王位をアルフロッドに譲りたい。どうだろう?ガイリアスどの」
そう言って王はガイリアスの手を取った。
「覚えていてくれたのですか、ラインガルドさま」
「忘れるものか。むかしはハインリッヒとともによく遊んだものだ」
「わが王もご心配されております」
「ハインリッヒにはすまないと思っている」
「あなたのせいではございません」
「だがけじめは、つけなければならん。もしリスタリアがこの国を占領するならそれで構わんがな」
ガイリアスは王の手をしっかり握り直し、言葉に力を込めるように王に言った。
「占領は望みません。また元の、麗しい関係になることを望むと、ハインリッヒ王は申しております」
「ありがとう…友よ…」
「もったいないお言葉…」
あーあ、よかったね。これで平和だ。もう戦争はしなくていいんだね。さあ、ぼくもニートに戻るとしよう。約束通りならミントンのアレジ村とセレン村をぼくの領地にしてもらって、そこで死ぬまでニートしてやるぞ。
「ところでそこの少年は?」
王さまがぼくに気がついたようだ。なんか嫌な予感。
「これはわが国のほこる最年少騎士にして男爵のデリアズナル・ローゲン・オルデリスでございます。こたびの教皇の陰謀を打ち破り、その先兵たる女豹ミランダを捕らえた功労者、でございます」
「なんとその若さでか!いやあっぱれ」
そんなにたいしたことしてないし。もっぱら力使ったのは大魔導師のじいさんだし、うまくいったのはミローネやネクロがいたからだし、はっきり言ってぼくなんにもしてないし。
「えー、っていうかぼくんちは準男爵家で、ぼくに爵位はありませんよ?」
「今回の手柄でジョアン・クレッグ・オルデリス、そしてきみ。つまりきみたち兄弟に爵位を与えるのだ」
「兄さんもですか!それはうれしいです」
それでミントンをもらえたら最高だね。さあ帰ろう帰ろう。
「それならわたしの国に来ないか?男爵どころか子爵の待遇を保証するが」
「お断りします。ぼくはリスタリアを愛しているんです」
まあ、それほどでもないけどね。
「おお、それは残念だ。だがこれからもアルフロッドのよき友だちでいてほしい。わたしとこのガイリアスのように」
王子と?そいつは遠慮したい。あいつらがイチャイチャするところなんて見たくもないしね。とっとと帰ろう。
「わかりました。まあありがたくお気持ちはいただきます」
ではさようならー。ぼくはゆっくりと立ち上がると、出口に向かって歩いて行った。
「ちょっと待ってくれないかな、デリアくん」
ガイリアスさんがなんか言ってる。嫌な予感しかしない。
「な、なんですか?もうやることやったし、ぼくの任務はおしまいですよ?」
「そうつれないことを言うな。ちょっとだけ話を聞いてくれないかね?」
ほら来た。聞いちゃだめだ。絶対聞いちゃだめなやつだ!
「お断りします。義務は果たしました。こんどはそっちの番です」
「まあそうだがね、せっかく爵位を与えたんだ。話くらい聞きなさい」
「いやです」
「なんだ、爵位が不満か?せっかく兄さんにまで爵位を与えたのに…」
あーまたその手かよ。卑怯だぞ、こいつめ。
「話聞くだけですよ?」
「ああ、手間はとらせん。よく聞いてくれ。きみはガザン王国を知っているね?」
誰でも知ってるわ。ラフレシアに身分詐称させた大国やろ。それがどうしたんだっちゅーの!
「いやに目つき悪くなったな。まあいい。じつはわが国王のご子息であるハロルド王子とガザン王国の第四王女が近く婚約をすることになっている」
「ああそうですか。そいつはおめでとさん」
まったくどいつもこいつも幸せになろうとしやがって。まあ、幸せに一番縁遠いのがニートですけどね。
「なんか投げやりだな。しかしここに来て問題が起こってな」
「問題?うちの王子がじつはBL専門だったとかですか?」
「なんだね、BLって?」
「いやいいです」
「その王女、メアリン姫というんだが、ちょっと男勝りでね、冒険者まがいのことが趣味と来ていて…」
へえ、なんかカッコいいな。王宮でおしとやかに暮らしているんじゃなくて、魔獣とか悪魔とかと戦ったりするのかな?
「つい先日、あるダンジョンに出かけてい行って…」
「出かけて行って?」
「帰って来ないというんだ」
「はあ、そうですか」
知らんがな。勝手に捜索隊でも出せばいいだろう!大国なんだし。それくらいの人間はいるだろう!
「当然捜索隊を送ったそうだが、これもすべて帰って来なかったという。つまりみなダンジョンから帰れないというらしい。これでは闇雲に人を送り込めない。どうしたらいいかうちの王に相談があった、というわけだ」
「ああそうですか。いやーそれはお気の毒ですね。まあ、王子のお嫁さんならほかにもいっぱいいるでしょうし、今回は縁がなかったということで。じゃ」
「おいおい、勝手に話を打ち切らんでくれ。そこで今回のきみのお手柄が光るのだ」
光らなくてもいいんです。お手柄なんか立ててませんし!
「ダンジョンはここから西方に約十日。頑張ってくれたまえ」
「行くって言ってません!」
「お兄さんは領地どこにしようかなー?そういえば毎年火山が噴火するところに村があったな。あれ?もうなくなっちゃったかな?溶岩で」
「行きゃいいんでしょうこんちきしょう」
「いやあ、そんなに喜んでもらえるとはな」
どこ見てそんなこと言ってるんだ。あーあ、ついてないな。
「だけどもうその王女さまは死んじゃってるかもしれないですよ?」
「いや、ガザン王国の魔導師が、王女のかすかな生命反応をとらえている。どうにかまだ生きておられる。だがいつまで持つかわからないんだ。急いでくれ」
「だったらその魔導師に探させたらいいじゃないですか!」
「知っての通り、魔法使いは国から出られん。出たら近隣の国々が騒ぎ立ててしまう」
おかしな話だ。ガザン王国は超がつくくらいの大国だ。まわりの国がやいやい言ったって、力でねじ伏せるくらいわけないはずだ。しかもうちみたいな弱小王国に姫さま嫁に寄こすとか変だろ。もしかして姫さまダシにして因縁つけてきたとか…まさかね。ヤクザじゃあるまいし。
「ということできみに与えられた、というよりわが国に与えられた猶予は二十日間だ。それ以上は待てないとガザンから申し入れがあった」
なんだよ、またタイムリミットあんのか。めんどくさいなあ。
「ことわれないんですか、それ?」
「ことわった時点でわが国は消滅する。もちろん国交の回復したダルメシアも巻き込んでな」
ヤクザじゃん。大国の姿したヤクザじゃないのか?理不尽、横暴…ニートが最も嫌う言葉がそこに見える。しかたないなあ。兄さんも、ラフレシアにも不幸になってほしくないし。ふたりの王子はどうでもいいけどね。
「じゃあ明日の朝、出発します」
「たのむ。この通りだ」
そういってガイリアスさんは深々と頭を下げた。じつは切羽詰まっていたんだろうな。もうどうしていいかわからなかったに違いない。そう考えると気の毒だった。これも小国の運命なんだな。まったく大国って言うのはいつもどこでも一緒だな。
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